Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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次の旅行は絶対に旧ユーゴスラビア諸国を周遊すべきいくつかの理由

 

 

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Dobar dan! 三週間に渡るヨーロッパ周遊旅行から先日帰ってきたばかりのユカートマンです。ヨーロッパは4回目ですが、今回は人生で初めて東欧に行きました。それもチェコやポーランドなど可愛らしい旧市街で有名な場所ではなく、ヨーロッパで一番マッチョなバルカン半島です。なぜマッチョなのかって?そりゃ、日本のネチズンの間で愛されてる「お前は何を言っているんだ」ミームでおなじみの格闘家ミルコクロコップ氏がクロアチア人だったり、90年代にユーゴスラビア紛争があったり、そもそも第一次世界大戦もこの地から始まったり…歴史の時間にこのバルカン半島を「ヨーロッパの火薬庫」と習ったことを覚えてる方はこの「マッチョ」という表現に同意していただけるのではないでしょうか?ちなみにバルカン半島は一般的にギリシャ、アルバニア、ブルガリア、ルーマニアと旧ユーゴスラビア諸国(セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、スロベニア、マケドニア、コソボ、モンテネグロ)を指します。

 

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クロアチアの首都ザグレブ

今回訪れたのは、セルビアの首都であり旧ユーゴスラビア連邦の首都でもあったベオグラード、1984年冬季オリンピックの開催地や第一次世界大戦の原因となったサラエボ事件で知られるボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ、90年代の内戦で破壊され、2004年に再建された平和の象徴である橋スターリモスト(世界遺産)のある同国モスタル、ジブリの名作『紅の豚』や『魔女の宅急便』の舞台であり「アドリア海の真珠」という異名を持つクロアチアのドゥブロブニク、そしてクロアチアの首都ザグレブの計三カ国・五都市です。バルカン半島というより旧ユーゴスラビアの国々ですね。

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ベオグラードにある世界最大級の正教会の大聖堂

観光地としてメジャーではないこの地域になぜわたしが訪れることになったのか。きっかけはこんな感じです。大学二年生の時にある哲学の講義で聞いたスラボイジジェクの故郷、ユーゴスラビアを形容する「七つの国境(イタリア・オーストリア・ハンガリー・ルーマニア・ギリシャ・アルバニア )、六つの共和国(スロベニア、セルビア、モンテネグロ、マケドニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ )、五つの民族(スロベニア人・クロアチア人・セルビア人・モンテネグロ人・マケドニア人)、四つの言語(スロベニア語・クロアチア語・セルビア語・マケドニア語)、三つの宗教(イスラム・カトリック・正教)、二つの文字(ローマ字・キリル文字)、一つの国家(ユーゴスラビア)」というクリシェが自分の中に強烈な印象を残しました。カオスじゃん!社会主義国でありながらソ連と袂を分かち、西側にも東側にもつくことがなく、第三世界と協力した非同盟運動について、またこのバラバラすぎる6つの国を一つにまとめたカリスマとして亡き今でも人気の高いティトー大統領について、調べれば調べるほど好奇心は増すばかり。それからというものの本や映画を観漁り、この地にハマっていきました。そんな中、オンライン英会話を始めるとフィリピン人講師だけではなく東欧出身の講師もたくさんいるではありませんか!人生で初めてセルビア人やボスニア人と実際に接し、わたしのバルカンへの憧れが募りに募りまくって爆発したところで今回の旅行を決断した次第でございます。

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ドゥブロブニクの市場

 さて、前置きが長くなってしまいましたが本記事では「次の旅行先は絶対にバルカン半島にすべきいくつかの理由」を書きたいと思います。サクッといきましょう。

 

1.ちょっと移動しただけで街の雰囲気が大変化する

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コソボ紛争の際にNATOがベオグラードを空爆して破壊された建物

 これは冒頭にも述べた通り宗教の違いからくる影響です。ユーゴスラビアは南スラブ人の土地という意味で、民族は一緒なのですが各国で信仰している宗教が全く違います。セルビアはロシアと同じ正教(オーソドックス)でキリル文字を使用しています。高校も大学もミッションスクールに通っている私はプロテスタントやカトリックの教会はもちろん、モスクも日本で訪れたことがあるのですが東方正教の教会は訪れたことがなかったのでロシアのような雰囲気のセルビアが一番新鮮でした。クロアチアはポーランドやチェコといった中欧の多くの国と同じカトリックの国です。『天使にラブソングを』でしか見たことがなかったシスターを街中でたくさん見ました。ボスニアヘルツェゴビナはセルビア人もクロアチア人もたくさん暮らしているのですが、なんとイスラム教徒が多い国です。街中にモスクがあり、夕方になるとお祈りの呼びかけのアザーンが街中に流れていて、それはそれはエキゾチックでした。東京と名古屋と大阪ぐらいの距離感で信仰している宗教が違うと考えていただいていいでしょう。

 

2.知られざる猫天国 

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 魔女の宅急便の舞台となったクロアチアの港町ドゥブロブニクは、黒猫ジジの存在からわかるように猫がたくさんいます。動物カメラマン岩合光昭さんが世界中のネコを撮るNHKの番組『世界ネコ歩き』で登場したこともあるのでドゥブロブニクと猫を結びつける のは容易だと思います。ちなみに紅の豚の舞台でもあると述べましたが豚はいませんでした。しかし、ドゥブロブニクに限らずザグレブでもサラエボでもたくさんの猫を見ました。特にベオグラードはネコグラードと名前を変えたほうがいいのではと思うほどの野良猫がたくさんいて、猫派でありながら猫アレルギーで猫を飼えないわたしには天国のような街でした。

 

3.今のところテロが起きてない

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「(戦争を)忘れるな」モスタルにて

去年訪れたパリではデパートに入るのに持ち物をチェックをされ、有名な教会に入るためには空港並みのセキュリティチェックをされました。惨たらしいテロが起きてしまい、いつテロが起きるかわからない今日のヨーロッパでは当然の対策です。さてバルカンはどうでしょう。2017年のヨーロッパであるにもかかわらず、博物館に入る時に一切持ち物検査がありませんでした。ただし油断は禁物です。外務省の渡航情報を確認してからいきましょう。ちなみにサラエボには野良犬(!)がたくさんいて、西欧と同じようにスリや物乞いをしてくるロマ(ジプシー)が少しいるので注意が必要です。

 

4.物価が安い

 

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モスタルで一泊22ユーロだったヴィラ(庭付き)

ヨーロッパ屈指のリゾート地、ドゥブロブニクを除くと東京より物価が安いと感じました。中でもダントツで安かったのはボスニアヘルツェゴビナです。また、他の中東欧の国と同じように可愛い雑貨がたくさんあり、しかもムスリムが多く暮らすの国なのでかなりエキゾチックなものが安く手に入ります。思わず爆買いしてしまいました。食費だけではなく宿代や移動のバス代、タクシー代も日本では信じられないほど安いです。調子に乗ってタクシーに乗りまくっていたらサラエボでぼったくられました。ベオグラードでは一度もぼったくられなかったのに、隣国同士でのこの違いはなんなんだ一体・・・旧ユーゴはとっても面白いです(泣)サラエボに来る際はお気をつけください。

 

5.涙が出そうなくらい人が優しい

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なぜか男性しかいない朝のサラエボ

初めてパリに行ったときに、あまりにもフランス人が傲慢で不快な接客しかできないものだから幻滅しました(笑)これがいわゆるパリ症候群と呼ばれるものです。パリから空路で訪れたベルリンでは比較的まともな接客を受け、パリとのギャップに驚嘆し、それ以降わたしはもっぱらベルリン贔屓であります。あまりに観光客への嫌悪が露骨なパリとまで言わなくても、西欧のメジャーな観光地では溢れかえった観光客に対して冷たかったり人種差別とも取れる’’おもてなし''を受けるところがあるでしょう。アジア人が白人と違った対応をされたり、高級レストランで酷い席を通されたりすることです。人種差別という言葉は大げさかもしれませんが、舐められてることには変わりありません。せっかくの旅行でそんな悲しい思いをしたくないですよね。

 

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夕方のサラエボ

さて、東欧に位置する旧ユーゴはどうでしょうか。西欧列強と違い、東欧の国々は植民地を持たなかったで人種の多様性が皆無です。ほぼ9割白人。ロマがほんの少しいるぐらい。そんな場所にアジア人がいったら中国人とからかわれたり卵投げられるんじゃないかな…と思ってましたが実際行ってみると予想を裏切られます。ベオグラード一と噂のパン屋で惣菜パンを買うと店員のおばちゃんがおまけだよっと言わんばかりのウィンクで菓子パンをご好意で入れてくれたり、サラエボでキョロキョロしながら道を歩いてると大丈夫?と英語で聞かれたり、険しい山道で山頂にある展望台までの行き方を聞いた人が通りかかった友達の車に一緒に乗せてっていってくれたり、泊まる予定のヴィラの前についたら閉まっていて呆然と立ち尽くしていたら通りかかりのお姉さんが宿のオーナーに電話してくれたり、セルビア語でしかアナウンスのない長距離バスの中でトイレ休憩の時間を聞いてもないのに乗客のおばさんが英語で教えてくれたり、パスポートコントロールの時には近くにいる子どもが英語でわたしにパスポート出して!と教えてくれたり・・・

 

ホステルでは体調を崩し、脱水症状になってしまったのですがジュースを購入しようとお金を出すとフロントのセルビア美人がそんなもん要らないわよ!と3本も無料でジュースを出してくれて一晩中つきっきりで看病してくれました。重曹を使った非科学的な胃薬まで作ってくれました。

 

ベオグラードでは道を聞くとほぼ全員がその場所まで連れて行ってくれました。それでみなさん必ず最後にこう聞いてきます「Do you like it here?(ベオグラードは気に入った?)」とにかく今回の旅行で受けた親切な行為をあげると本当にキリがありません。不快な経験もタクシーのぼったくり以外何もしませんでした。(これは自分にも非があります)後日バルカンの人は西欧人より親切だったとセルビア人に話したら「オフコース」と言われました。どうやら自分たちの暖かさを自覚しているようです。一言で言うと人情が熱盛ィ!なんです。信仰している宗教は違えど、バルカン人の優しさはどこへ行っても全く変わりませんでした。

 

6.料理がバラエティに富んでいて美味しい

冒頭でバルカン半島を「マッチョ」と表現したのには、この地域の伝統料理が肉だらけだからという理由もあります。セルビアやボスニアは海に面さない内陸国なので本当に肉ばっかりです。どれもとっても美味しいです。

 

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チェバピ

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ボスニア郷土料理のパイ。窯で焼いた餃子のような味がして最高でした

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感動するほど美味しかったピーマンの肉詰め。お酒も飲んで853円という安さ・・・

また、ドゥブロブニクは名前にニクと付いているにもかかわらずマリンリゾート地なのでアドリア海で獲れたシーフードで有名です。日本人シェフが作る寿司レストランまであります。マグロが口の中で溶けるほど美味しかったです。

 

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イカスミリゾット

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ドゥブロブニクで食べれる本格的な寿司

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イカフライ

イタリアの対岸に位置していることもあってかボスニアやクロアチアでは美味しいジェラートがそこらじゅうで売られています。日本にないフレーバーばかりで、食べるのが楽しすぎて七日間で15回ぐらい食べたと思います。ダントツで美味しかったのはサラエボのマカロンをふんだんに使ったアイス、次点でドゥブロブニクのウィスキーを使用したアイスです。

 

 

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ウィスキーが隠し味のアイス

 

以上が私が次回の旅行を旧ユーゴを周遊すべきだと思う理由でした。訪れる際は、この地の歴史や90年代の戦争のことをちゃんと学んでからくることを強くオススメします。『ある愛へと続く旅』『サラエボの花』『ノーマンズランド』といった映画を旅行の予習で観るのもいいでしょう。来年の旅行にバルカン、いかがでしょうか。それでは、チャオ!(バルカンでもチャオは一般的な挨拶です。出会いでも別れでも使えます。たくさん使いまくってくださいね!)