Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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joji、新譜「BALLADS 1」とboiler roomでのライブに思う事

最近、jojiの新譜「BALLADS 1」のヘビロテが止まらない。

 Jojiは、NY在住のオーストラリア系日本人で、88risingっていう音楽レーベル・プラットフォームに所属してるSSW。この88risingというのはNYを活動拠点としていて、jojiの他、Keith ApeHigher BrothersやRich Brian、KOHHらが所属しており、アジアのミュージシャンを取り上げバックアップするチーム。そんな88は時としてHYOGOHとかyaejiの活動もピックアップしていて、かなりジャンル横断的なスタンスぽいです。そんなチームと共に活動するjojiの作品は、前作のEP「In Tongues」からずっと聴いていたんだけども、今年の5月発表の「YEAH RIGHT」を皮切りに先行リリースが続き、楽しみにしていたらとうとう10月末にアルバム決定のお知らせが。。

ほんで満を持して蓋を開けたら、ガッツリ惹き込まれる名盤でした。

その高評価の具合は、僕たちファンの中だけでなくビルボードの3位という結果として表れ、いよいよ気鋭のR&Bシンガーの本格バラッドとして世界から注目される存在になった訳ですね。

 

 ぶっちゃけ、jojiについて何か書きたくて、でも何から書けばいいの?と思ったんだけど、(まぁ新譜とかライブとか活動経歴について思った事を書くつもりなんだけど、っていうか全く簡潔に纏めようという気概がなくて申し訳ないんだけど。)とりあえず、さっき述べた「世界から注目される存在になった」ってとこについて触れながら、jojiのキャリアから新譜まで紹介したいと思います。 

 

 

 

 ・Filthy Frank期

 ビルボード3位、、世界的シンガーっすね。でも、jojiが「世界から注目された」のは今回が初めてではないんですよね。元々「Filthy Frank」名義でyoutuberとして活動していた際に、色々と賑わせていたらしいのです。ジャンルでいえば、おふざけyoutuber。

 例えば、ザリガニで賭けレースしたり、そこに鼠を投下したり、(ちょっと視聴注意)

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路肩から拾ってきた鼠を使った料理で友人にドッキリを仕掛けたり(jojiは路肩から鼠を見つけるのが上手い、あと、ちょっと視聴注意)、

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海外の日本オタク「weebo」をおちょくったり、

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ETの続編を作ったり、(ちょっと視聴注意)

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色々やっているんですよね。

話は激逸れですが、生活系YoutuberであるHow To BasicやMaxmoefoeとは同郷で、度々コラボしてます。

HAIR CAKE (ft. HowToBasic, MaxMoeFoe, and iDubbbz) - YouTube

(マジで汚くて最悪なので視聴注意)

 

 そして、そのあらゆる活動の中で最も大きなミームに発展したのが、2013年の「Harlem Shake」。

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これはBaauerの「Harlem Shake」という曲に合わせて、読んで字のごとくマジの馬鹿騒ぎをするというミーム。元動画は、ピンクの全身タイツをまとったフィルシーフランクと共に、同じく仮装した友人達が馬鹿騒ぎするっていうもので、

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(やっぱオリジナルが一番いいわ・・・・)

これが火種になって皆んな真似して動画撮るようになっちゃったのです。挙句、ハーレムシェイクする人数の競い合いが起こる羽目に。

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つまり、jojiとしてビルボードに入る前に、もしかしたらビルボード入るのと同じくらいどデカイ花火を数年前に打ち上げてたんですよね。

 そんなフィルシーフランクなんだけど、じゃあ何でそんなおふざけyoutuberが音楽的な分野に活動をシフトしたんだよっていう、そこのきっかけがかなり気になってくる。これに関しては、最近上がったビルボードのインタビュー記事にフィルシーフランクがjojiになる経緯が綴られてます。

www.billboard.com

 インタビューで本人がなんて言ってたかというと、まずユーモラスなおふざけyoutuberとして大暴れするのに疲れ、(まるで味覚が変化するように)単純に飽きてしまったという。冷静に活動を振り返るタイミングがあったんだろうか、自分の活動に満たされなくなり、自暴自棄となってやけ酒が止まらなくなり心身共に不健康に。そこから、ユーモアに・露悪的に振る舞わなければならないフィルシーフランクとしてのプレッシャーや仮面を捨てて、自分自身を表現したい、というマインドに変わっていったという。

自己嫌悪や苦悩が歌われてる曲が印象的だけど、そういう経緯があっての歌詞なのね、と納得する。

 

・PINK GUY期

 という事で、フィルシーフランクからjojiに変貌を遂げたきっかけはインタビュー記事でハッキリと分かるんだけども、ここの間にもう一つキャリアがありまして。経歴となれば、そこも紹介しとこ!と思って記します。

「Harlem Shake」にて、フィルシーフランクはピンクの全身タイツを着用して、と先述してますけども、この「ピンクの全身タイツ」 重要なんです。フランクはこの全身タイツを着て、PINK GUYと名乗って歌手活動をしてました。jojiの前身となる活動は「フィルシーフランク」ではなく、実質このPINK GUYなんですね。ちなみに、全身黒タイツを着用する事で、「オチンチン」というキャラクターを演じたりもします。

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 とは言えPINKGUY以前のフィルシーフランク時代から、本人がウクレレを弾いていたり、自作と思われる打ち込み主体・生音混じり・声ネタ多用のMADチックな音源をBGMとして取り入れてたり音楽活動みたいなのはしてたんですけど、しっかりラップしている曲を発表しだしたのはPINK GUYから。

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結構ラップスキル高!!と思わせるクオリティの曲ばかり。ここではまだ、フィルシーフランク像に縛られたヒールキャラっぽさを感じるテーマの曲が多いんだけど、力の抜けた歌唱やハモり方、トラックにおける弦楽器の扱い方、音の質感みたいなのに注目すると、かなり今のjojiと繋がるものがあります。

例えばBitter Fuckって曲。

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 また、PINKGUY名義でlil pumpと絡んでたりもする。ここら辺の交遊関係が成立するのも、インターネット発ラップシーンにおけるフランクのプロップスの高さがずっと保たれているからなんかね

 (なんで高いかと言ったら、youtuberとしてインターネット界でシンプルに強くて各方面から既に認められていたから、そもそもネットラップシーンに音源以外の活動が面白いか否かという評価基準がデカかったから、あんなふざけておきながら発表するラップ曲のクオリティは意外と正統派でウケたからってとこが要因になりますかね。。)

 

・Jojiとして。Live at Boiler Room

 そんなこんなでPINK GUY名義でHigher Brothersともコラボしたりしながら、

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本格的にjojiとしてのキャリアを進めたんですね。そんなこんなで、Soundcloudを曲発表したり、公式リリースしてないながらも未発表曲がリークされSNSでバズったりが続き、そろそろEPとか出るよなあ!ってムードが高まっていくのですが、その当時の空気感が味わえる動画がありまして。

 

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 当時の空気感ってどんなんだったかと言うと、jojiの貴重なライブに対する期待感と、困惑でいっぱいだったんですよね。いや、本当にみんな困惑してたんですよね(このライブ動画のコメント欄にも困惑してる人がチラホラ)。結局この人は、フィルシーフランクなの?PINKGUYなの?それとも真面目なjojiなの???っていう困惑。どのキャラで見ればいいのっていう。多分、正解に近い答えをいうなら、どのキャラも混在してるし、過去の面影を見ながらjojiとして楽しんでくれという話なんだろうけど。

てか、何かのキャラに対象を当てはめなきゃ楽しめないなんてしょうもな!って言われたらアレだけど。

 この動画の私的ポイントをまとめると、日本語で「低いやろ」発言、「風邪引いてるから煙草吸うのやめてくれ」発言、頻繁に挟んでくるスラング、脈絡のないトラップ音楽を流して客にダンスを強要、どの曲もちゃんとやらない(これはヒップホップのライブではよくあるんだろうけど) 等等。

 上記の私的ポイント、何が言いたい?って話なんですが、つまり、これらのポイントから照れ隠しを感じる!ってのを言いたいのです。これまでユーモア全面だったキャラがいきなり真面目ぶって、シリアスでレディオヘッドみたいな自作曲を歌いだす。音源自体はクソ良い曲とはいえ、黒歴史を振り返ったらまともにシリアスな曲なんか歌えるわけないすよ。その気持ち誰でも分からんでもなくないすか。

 ただこのライブに関して興味深いと思う点は、照れ隠し諸々の旨みポイントはさておいて、、

まず曲回し(セットリストの組み方)・MC回しがスムーズで手慣れてる点がYoutuber的だなと思ったところ。ライブ中のスラングの入れ方、客の茶化し方、曲間・MC中での間の入れ方、振る舞いっていうのは、黙々と演奏するシンガーとか口達者でMC長くなっちゃうシンガーの様な定番の型には当てはまらない独自のパフォーマンスというか。

 要するに、youtuberとして長年皆んなを楽しませるコンテンツを作ってきた人の経験則、youtuber的な  エディット能力みたいなのをライブパフォーマンスから感じるんですよね。えらい抽象的でごめんなんだけど。その点でこのライブはかなり好きだし、単純な規模のデカさに訴えかけない様な飄々としたパフォーマンスは、スタジアムバンドみたいな対極に位置するパフォーマンス違ったエンタメとしてめちゃ面白いんじゃないかと思うわけです。

 物質的なインパクトだけでなく、インターネットのミームや分脈を持ち寄り、振りかざして楽しもうぜ、みたいなのを前面から肯定していく感じ。

 とは言え、「In Tongue」が発売され、88risingの主要メンバーとして作品を発表しまくる中で、そんなおぼろげとしたキャラクター受容の時期も終わり、完全にR&Bシンガーとして受け入れられていくんですね。なので、今ではスタジアムで歌う一歩手前です。まぁどこで歌おうがどうでもいいんだけど。

 

・「BALLADS 1」とまとめ

 というわけで「BALLADS 1」が発表されて、また世界を賑わせてしまったフランクミラー。本名ミラーっていうらしいです。

 本作については沢山は言わないけど、すごい印象に残ってるのはディストーションギターの存在。

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歪んだギターが心地よすぎる。この歪みギターとローファイさとテンポ感、気だるげなボーカルがあいまって、僕的にはグランジと繋がった、Pixiesとか。。けれども、リズムはロックでも何でもないし、メロはめちゃポップスだし、フロウはトラップ以降だし、オルタナとかでもないしっていう。。

あとアルバムのリード曲と言ってもいい美メロバラード、「SLOW DANCING IN THE DARK」。

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ななんと、ChairliftのPatrick Wimberlyがプロデュースに入ってるぽい。

 

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この曲「TEST DRIVE」はRL Grimeがプロデュースに参加とね。

 

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アルバムの中で1,2番好きなこの曲「CAN'T GET OVER YOU」。

タイトル通り、Clams Casinoとの共作に加え、Thundercatもプロデュース入ってるらしい。どこ要素で・・?

恋愛にまつわる歌ですが、ちょっと重い。あんま書き出したくないですが、自傷グッズとして一般的だとされているボックスカッターを女性だと例える詩のくだりからは、ほんの少しjojiの苦悩が読めてしまった気がする。

 

 ともかく、あらゆる音楽の地つづき(もしくは音楽家間のコネクション)を自然に感じさせるSSWは最近特に多いかもしれんけど、それに加えてjojiには、youtuberとして既にビッグネームだった特殊なキャリア、喋りの上手さやキャラの濃さ(被写体として強すぎる)、日本(大阪、神戸)〜オーストラリア〜NYと、複数のホームグラウンドが備わっていて、、、特に今後も活動が気になってしまう。

 

あとアルバム一曲目のこの曲、ゴリゴリに音が割れててかっこよかった。

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 ということで、、joji、おふざけyoutuber時代に培った技が、内省的なR&Bの表現に活きてんだと思って聴くとかなり面白いものが見えてくるんじゃないかという話でした。