Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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黙って新譜を聴いてくれ etc

この記事には、この企画が立ち上がる前の今年の上半期の作品を主としたダイジェスト版です。どれもイチオシアルバムなので、聞くも聞かぬもあなた次第。

 

 

Andrew W.K./You're Not Alone

兄貴が帰ってきた!!パーティー野郎10年来のオリジナルアルバムである。とにかくブチ上がれることを徹底した衝撃のデビューアルバム以後、どうにも煮えきらない作品を出してきたが、今回は静けさにもアツさを滲ました激アツの出来である。

時折差し込まれるありがたい演説では、人生の厳しさや闇を説き、それを否定するのではなく、受け入れ、打ち勝つんだと我々を鼓舞する。彼は決して軽薄にパーティーをして享楽に溺れてるのでない。彼のパーティー精神は生きていく上での糧であり、人生に苦しむ人のためにこそパーティーがあるのだ。

パーティーを愛する人もパーティーを嫌う人も兄貴は分け隔てなく接する。いつでもパーティー。雨でもパーティー。泣いてもパーティー。死ぬまでパーティー。

 

Buddy Guy/The Blues Is Alive And Well

80歳を越してなお新譜をコンスタントに発表するブルースマンの最新作。声もギターも絶好調で、「Bad Day」のアウトロでのギタープレイは「Alive And Well」なんてもんじゃない。「火の吹くような」という比喩はこのソロのためにあるのだと確信してしまうほどに激しく情熱的なフレーズが炸裂する。

ファンキーな「Whisky For Sale」やJeff BeckやKeith Richards、James Bayなどのゲスト参加など聞き所は多いが、何よりも主役が老いとは無縁のキレッキレの音を発しているので、ブルースに敷居を感じてしまう人、ブルースを何から聞いたらいいか悩んでる人はとりあえずこのアルバムを聞いてしまったらいいのではないか。

 

David Cross/Anorher Day, Cross the Tracks, Ends Meeting

元King Crimsonの…という商法で未だに売るしかない、脱退後パッとした経歴がないバイオリニストDavid Crossだが、それは音楽的に大したことがなかったからなんてことではなかった。今年出た3種類の異なるタイプのアルバムを聞けば納得できよう。

ジャズロックと邂逅したオールインストの「Another Day」に様々なボーカルと共演した「Cross the Tracks」、アンビエント作品「Ends Meeting」。毛色の異なるアルバム群だが、やっていることはただいつもの通りバイオリンをディストーションをかけて弾くだけ。

だが、それが面白い。ややダレ気味の展開になったらバイオリンを暴れさせ、気持ちよく音に浸りたいときは控えめに。まるで指揮者のように全体を見て適切な演奏を行うことで、飽きさせることなく最後まで聞かせてくれる。

Leonard Cohenの名曲「Hallelujah」のカバーを聞けばそのセンスはよく伝わる。楽曲のうまみ部分はしっかりと残しておいて、ボーカルのメロディーラインは一切なぞらずに、と言っても自分だけが満足するようなソロではなく、楽曲に適したフレーズを弾く。歴代クリムゾンファミリーの中で、完成度の高い音楽を作り上げる才能を一番持っているのは実は彼ではないだろうか。

 

Graham Bonnet Band/Meanwhile, Back in the Garage

御年70歳でありながら、額に血管を浮かばせて熱唱する様がありありと脳裏に浮かぶ。そんな傑作。

いきなりオルガンの固形音によってぐっと引き締められたソリッドなバックの演奏から開幕する1曲目から「まだ老いぼれと呼ぶには早すぎる」とばかりにシャウトしっぱなし。老境に入って次々とセミリタイア、リタイアしていくメタル界にあって、この健在ぶりはメタルに疎い自分でも胸が熱くなる。

音楽的にも素晴らしい。70年代末期のハードロックとヘヴィメタルの境界が不明瞭だった時代からスタジアムロックを介し、今日に至るまで第一線で活躍してきた彼のキャリアを1枚にまとめている

 

Grounders/Coffee & Jam

ポストパンク〜ネオアコの流れにあったエグみと軽みを両方ひっくるめてしまったバンドの2nd。

80年代は既存の枠組みを壊すためにあえてメジャーレーベルを蹴り、非コマーシャルな音楽を標榜するバンドが地下で跋扈していたが、現在は誰でも世界中に向けて発信できるため、アンダーグラウンドで質の高いバンドが溢れているという因果の逆転が発生している。その中でこのような80年代の音楽面での再現を試みるバンドが存在するのは大変興味深い。

楽曲のクオリティーは高く、ボーカルのあまり抑揚のない節回しに、胡散臭くも美しくもなる七変化するキーボードの音色などに一定の中毒性がある。こんなバンドが無名のまま埋もれているところにもやはり80年代に通ずるものを感じる。

 

Legend of the Seagulmen/Legend of the Seagulmen 

映画監督Jimmy Haywardに、21世紀のロック界のドンとなりつつあるQOTSAのJosh HommeがMastodonのBrent Hindsを引き合わせた出来事を起点として発生した、メタルやストーナー、映画音楽を混ぜ合わせた音楽プロジェクト、Legend of the Seagullmen。

MastodonのダーティなギターにToolの複雑かつ歌心のあるドラム、そしてむさ苦しさ溢れるボーカルにチープなシンセサイザー、そして映画のスコアを思わせるストリングスが渾然となり、タイトル通り「海の野郎どもの戯曲」とでも言うべき、唯一無二の音楽性を提示している。他のスーパーバンドのようにただ個性豊かなミュージシャンが集まるだけではなく、他所では聞けない音楽を作るところまで到達したという点で、各々のメンバーが在籍するバンドのファン向けという枠を飛び出してそれ以上の求心力を有しているアルバムだ。

 

Ministry/AmeriKKKant

タイトルからしてあまりにも強烈なポリティカルアルバム。2016年にTVを駆け巡った「We Will Make America Great Again」のサンプリングから始まる本作では、トランプ大統領に対する忿怒をインダストリアルメタルを通してこれでもかとばかりに叩きつける。「Twilight Zone」での8分に渡るミドルテンポでのリフとサンプリングの掛け合いは、スピードチューンで叫ぶよりも破壊力抜群である。

本来の反体制的な意味合いの薄れてきたインダストリアルミュージックだが、Ministryは依然として本気で戦う姿勢を見せていて頼もしい限りだ。

 

A Perfect Circle/Eat The Elephant

ヘヴィーなリフこそあれ、「静」の要素の強いオルタナバンドであったが、長い長い充電期間の間に更に耽美的な音に。「So Long, Thanks For All The Fish」でのMaynardの歌声はかつてなく澄み渡っている。メタルらしからぬ声質ではあったが、ここに来て完全に開き直るとは、嬉しい誤算である。

今までのアルバムがリードトラックを前半に詰め込んでいたため、後半では印象が薄くなりがちであった。本作も同様の作りではあるもののの、デジタル音で塗り込められた新機軸の「Hourglass」などが後半戦を彩り、最後まで飽きさせない。APCを最初に聞くならばこのアルバムだろう。

 

PinioL/Bran Coucou

プログレを誰かに聞いてもらおうとする時、どういう切り口で紹介するか、初手は誰にするかなどと色々な思惑が湧くものだが、その中で1番過激な案とは本バンドを聞かせることだろう。

本バンドはフランスの変態バンド「PoiL」と「Ni」が合体してアルバムを作ったらどうなるか、という悪夢のような実験の果てに産み落とされた「超」変態プログレバンドである。

間違いなく高度なテクニックに裏打ちされた凄まじい密度の音が炸裂する一方、どこまで真面目にやってるのかと考えあぐねてしまう歌唱や何をどうしたら湧いてくるのかというフレーズやリフがリスナーの知性を打ち砕く。シンフォニックで起承転結のあるタイプのプログレと異なり、一切先の展開が見えないまま10分近くの曲が連続する構成は間違いなく初見殺しである。しかしThe Mars Voltaよろしく異常なまでのテンションのおかげで正座を強いられることなく聞けてしまう。

ある意味ではもっとも取っ付きにくいプログレでありながらも、かなり聞きやすい部類とも言える。変態音楽好きと初心者向けの当たり障りのないセレクションから文化体験をしたくないという方にはオススメです。

 

Riot V/Armor of Light

唯一の創設期のメンバーでありメインコンポーサーであったMark Realeの他界によって、バンド名を改名し新体制で再始動したメタルバンドRiotの復帰後2枚目のアルバ厶。

復帰後1作目の「Unleash The Fire」も間違いなく名盤であったが、勇ましいドラムに合わせて快哉をあげるのではなく、感動的な展開に目頭を熱くさせる作品だった。その一方で本作は、聞けば必ずや拳を突き上げて勝利の雄叫びをあげることとなる戦いのアルバムとなっている。殆どの曲がスピードチューンという疾走感。それに絡み合うRiot印のキャッチャーなギターリフにツインリードによるソロ回し。ダサいしクサいが、それでもどうしても好きにならざるを得ないのがこのバンドの魅力。メタルの苦手な人が避ける要素をほぼ網羅しているが、むしろそういう人にオススメしたくなるほどの突き抜けたカッコよさがある。

ミームと化した「メタルはいつかガンに効くようになる」も、このようなマジックを目の当たりにすると何となくありえなくないと思ってしまうのだ。ロックが何度死のうとメタルは死なない。