Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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2018年トップアルバム13選

去年と相変わらずランキングには断固として戦う方針ですが、5段階評価でダラダラと続く、貧弱なレビューの羅列はやめます。

順列はつけずに、「これは素晴らしい」と思ったアルバムをとりあえず13枚上げました。

それもただ聞いてて素晴らしいと思ったかどうかではなく、どういった文脈で生み落とされたのかという背景もしっかり踏まえた上で選びました。

裏に隠されたドラマだとか関係なくただ感動して選出したようなアルバムもありますし、一方で様々な物語が裏にあるアルバムは、下駄を履かせなくても素晴らしい完成度を誇る作品であるように思います。

100%自分の完成で選んだ結果、雑誌や他の市井のベストランキングとほとんど被らないものとなりましたが、個人的にはこれ以外にはあり得ない選出内容なので、オススメできないものなど1枚もないです。

 

BUCK-TICK/No.0

00年代以前のV系バンドの音楽には、世界のどの音楽シーンにも類を見ない、偏執的完成度の世界がある。ノイズ民族音楽過激思想なんでもござれなニューウェイブを聞いて育った世代だからというのもあるだろうが、市民権を獲得する前のV系という世界を生き抜くには、作り手に相当ドープな文化的蓄積がないと厳しかっただろう。ヴィレバンに行けば簡単にニッチな趣味を開拓出来る昨今とはまるで在り方が違う。

今更ブロステップとハウスミュージックを掛け合わせたような「Gustave」を聞けばその片鱗が伺える。ひたすらCatを連呼するサビの異様な中毒性と周回遅れの流行サウンドとの合わせの妙が光り、既に消費し尽くされたと思われていた流行のエレクトロサウンドに新たな命を吹き込んでいる。小説家稲垣足穂など音楽以外の文化作品をモチーフにした楽曲も散見され、ロックがロックの内部だけで再生産され、矮小化している今日の流れなどどこ吹く風な態度には頼もしさを覚える。

歌と音に真剣に向き合った世代を代表する鬼才の珠玉の名曲集が本作であり、ベテランとなっても創作スピードもレベルも衰えない数少ない稀有なバンドの最新作でもあり、ポスト「V系」なアルバムとも言えよう。

 

David Bowie/Glastonbury 2000

Queenにおける復活劇がバンドエイドであったならば、David Bowieの場合は本公演がそれに該当するだろう。80年代の低迷期(バンドエイドに至ってはしばらくライブをやっていなかった状況での急造バンドによる迷演であったのは嘆かわしい限り)を抜け、90年代に創作力を復活させるもドラムンベースやインダストリアルなど時代に迎合した作風に「若作り」と叩かれ、世間的には「過去の人」となっていた頃合い。そんな時期に勇敢なプロモーターが掛け合い、出演が決定した。

久々の祖国での公演であること、10万人を越した大観衆を相手にすること、風邪気味で喉の調子がすぐれないことなどの不安要因が重なり、ブックレットに転載された日記や前半のMCではかなりナーバスになっている様が現れている。しかし結果は大成功、Bowieの完全なるカムバックがこの日をもって世間の間でも知れ渡ることとなった。

入場の時点でのBowieは素人ののど自慢大会のようにぎこちなく笑みを浮かべているが、3曲目の「Changes」で空気は一変。サビで観客が映るのだが、前方だけでなく後方の客も数万人が一斉に飛び跳ねている。30年前に同会場で最初に演奏した曲で観客の心を鷲掴みにしたということもあったのだろう、バンドのボルテージは本曲を境に一気に上がっていくこととなる。

ソウル期に在籍したEarl Slickのバンド復帰を祝うかのように披露される「Stay」や「Golden Years」を初めとした70年代の代表曲が矢継ぎ早に繰り出される一方で、「子守唄でもやろう」と冗談交じりに挟み込む90年代のデジタル路線の楽曲が並存する素晴らしい選曲だ(日記によると当初はどれぐらいの演奏時間なのかよく分からずに30曲超のセットリストを組もうとしていたらしい)。「Under Pressure」や「Starman」から大作「Station To Station」までも網羅した内容にかつてのファンは大いに満足したことだろう。バンドメンバーも素晴らしく、人気の高いReality Tourバンドのプロトタイプといった顔ぶれだが、この時点でその真価はすでに現れている。

アンコールでの「Let's Dance」後には、「We Just Made It」と自らライブの成功を無邪気に喜ぶBowieにはニッコリ。だが、本当に評価すべきは最後の曲の選曲。誰もが知ってる代表曲ではなく、NINがRemixやPVでの共演を果たしたインダストリアルナンバー「I'm Afraid Of Americans」を持ってきているのだ。あくまでも現役であることに拘りつつもヒット曲を惜しげも無く披露した名演。亡き後もその影響力の大きさを示している今こそ、そのカリスマ性を体感すべきであろう。

 

Donny McCaslin/Blow.

詳しくは過去記事を読んでいただきたいが、David Bowieの「★」時の編成で制作された第2弾アルバムである本作こそが、真にBowieの遺伝子を引いた継承作と言いたい。レコーディング時の「ジャンルを気にするな。出てくるものを楽しめ」というBowieのモットーに感化され、「★」とは逆にジャズメンなりの他ジャンルへのアプローチがなされている。ガンズ風のリフから始まる「What About the Body」やBjorkのような怪しげなボーカルラインとベースリフが導く「Tiny Kingdom」、はたまたインディーポップな「Great Destroyer」など、今まで固定観念で制限されていたサックスの演奏スタイルを広げ、新たなる可能性を広げた作品である。

何よりも面白いのがBowie風の楽曲はないことである。プレス文では本作がいかに彼の影響を受けて作られたかを公言しているにも関わらず。

つまり、表面的に彼をなぞるのではなく、信念や価値観、行動規範など抽象的なレイヤーでBowieのことを慕い、参考にすることで本作は制作されたのだ。

作風だけで評価するならば、散漫であったり誰かの模倣であったりと粗はいくらでもある作品である。ただし、真に何を目指して作られた作品なのかを考えた時、あなたのコレクションの中で珠玉の1枚になるだろう。

 

ENDRECHERI/Hybrid Funk

やっぱりこれを無視して今年を終わらせるわけにはいかない1枚。

突発性難聴がもたらした波瀾はよその風とばかりに、今まで以上によりドス黒いファンクを突き詰めた彼。かつてのエキセントリックな作風は鳴りを潜め、よりフィジカルな音楽にシフトしたことでかつての聞きやすさは後退したが、結果的には進歩である。

彼の声質は決してゴリゴリのブラックミュージック向けではないのだが、それでもこれをやりたい!という意志がバンドと一丸になって貫かれており、表面的な音の調和とは別に、このアルバムはこの路線であったからうまくいったのだ、という確信を持つことが出来る。

アルバムに付随したジャニーズとしては珍しい一部試聴の解放や夏フェスへの出演といった攻めの姿勢を見せながらも、インタビューでは「別に聞かなくても良いです」と話の腰を折ってくるあたり、本気でありながらもどこか掴み所のない、自然体の彼を感じることが出来るアルバムだ。

 

Gleb Kolyadin/Gleb Kolyadin

ロシアのチェンバーポップ/モダンプログレのデュオiamthemorningの鍵盤奏者Gleb Kolyadinの初ソロ作品。上原ひろみやTigran Hamasyanのようにクラシックやジャズが影響を与えたジャンルを通って再び原点に戻ってくるという手法を取った音楽スタイルに近く、一応はロックに分類するにしても、収録曲の多くはアコースティックな楽器だけで緩急や表情などの彩りをつけている。

と言ってもまだ何のことやらという人もいるだろうから、身も蓋もないが「ヨーロッパが舞台の雰囲気良い感じの2010年代のゲームのサントラ」っぽいと評しておこう。

全体が1つの組曲のような構成でありながら、個々で聞いても優れた楽曲が並び、時折挟まれる歌についても、耽美な性質のボーカルを招聘しただけあって、全体の流れを変えることなく、適切なアクセントとなってアルバムの展開に膨らみを持たせている。そして、「ここではないどこか」に誘ってくれるようなピアノの美しい旋律は、88個の鍵盤の音の重ね方に新たな可能性を感じさせてくれる。

ちなみにKing CrimsonのドラマーGavin Harrisonが参加しているのでそれ目当てで聞くのもあり。

 

Jason Becker/Triumphant Hearts

Marty Friedmanと結成したバンドCacophonyで評価を得、期待の新人ギタリストとしてキャリアを踏み出した途端にALSの発覚によって状況は一変。もはやギターはおろか、日常生活を送ることすらままならなくなり、悲劇の主人公として一部の人間にその名前を記憶に留められるだけに終わったかのように思われた...

が、本作を手土産に彼は四半世紀ぶりに帰ってきた。無論楽器も何も出来ない寝たきり状態だが、父親が会話と同様に音楽制作を行えるシステムを作り上げ、それをもって執念で作り上げたのだ。旧友のMarty Friedmanはもちろん、Steve Vai、Joe Satriani、Paul Gilbertなどのメタル界の大物ギタリストだけでなく、Neal Schon、Joe Bonamassa、はたまた、ジェイク島袋といった様々なジャンルのソロイストが集結し、彼のヴィジョンの具現化のために一肌脱いだのである。

作風は前作「Perspective」での脱メタル路線を引き継いでおり、悟りでも開いたかのように穏やかな曲調の楽曲が続く。ストリングスがメロディーを奏で、その土台の上で各ゲストが出しゃばることなく、それでも己が個性を余すところなく出し切ったソロを弾く。

目玉は「Valley of Fire」。The Magnificent 13と名付けられた、先述のゲストも含めた13人のギタリストが、西部劇の劇伴のようなオケに乗せて最高のソロ回しを聞かせてくれる。その音から溢れる、Jason Beckerへの尊敬と愛情の念は、楽曲の素晴らしさも相まって涙腺を刺激する。「こうなる運命だった」とALSとなった自分を悲観しない本人の弁も、この素晴らしい音楽を聞くと、決して痩せ我慢や周囲へのフォローではなく、心の底から湧いてきた思いだったのだろうと納得である。

皆に愛され、皆を愛して生まれたアルバム。その背景にある物語も素晴らしいが、この1時間の音楽の旅は飛び抜けて素晴らしいものであることを保証しよう。

 

Justin Timberlake/Man of the Woods

R&B界に革新を起こしてきた男の最新作はR&B×ファンク×アメリカーナというこれまた奇妙な取り合わせとなった。と言えども、テネシー育ちの彼としてはR&Rやブルースなど雑多に渡る音楽が彼のルーツなわけで、今回はあくまでも本来の自分を解き放ったというわけであろう。

ぶっちゃけ彼やR&B全般に関して疎いのであんまり大したことは言えないが、アコースティックとエレクトロの融合によって今のアメリカのポピュラー音楽を総括する試みは、目新しさこそないものの、豪勢にプロダクションに労力を投じてやるだけのことはある、素晴らしい取り組みだと思う。1時間に渡る長丁場を一気に聞かせる名盤だ。

 

King Crimson/Meltdown

間違いなく現行King Crimsonは、半世紀の歴史の中で再び全盛期を迎えており、更には年々進化している。「トリプルドラム」という難易度の高いコンセプトに当初は真価を発揮できていなかったところがあったが、今となっては最高の音楽体験をするのにその編成は必要不可欠な要素であったことがはっきりと分かる。特にこのメキシコ公演では。

熱狂的なメキシコの観客に感化されて非常に攻めた姿勢の演奏となった本作では、ドラムの重層的な圧が聞き手の耳を襲い、ベースのTony Levinもそれに負けじと縁の下の力持ちのポジションをやや弱め、いつになく動き回るベースラインをぶりぶり唸らせ、Rober Frippのヒステリックなギターフレーズは脳の血管がぱっくり裂けそうな勢いである。その一方でバンド史上最難関曲である「Fracture」の半世紀近く経っての再演は一切危うさを感じさせない圧巻の出来であり、アドリブも多い3人のドラマーが互いに干渉して音が団子になってしまうこともない。

気がついたら食い入るように見てしまう引力に満ち溢れたライブであり、そこに「老人の割には」などといった弁明は一切ない。「若い世代よ、よく聞け。これが我々の本気だ」とばかりに出し惜しみなく全てを出し切る演奏は、同世代の老人会のようなライブと同列に語るだけ失礼であろう。「プログレッシブロック」とは一体何だったのか、全然興味のない人も含めて是非本作を見て聞いて考えてみてほしい。

 

※2019年1月からサブスク参入らしいです!!

 

Muse/Simulation Theory

作曲レベルに関しては4th辺りが頂点であったと言うと、一部のファンには怒られそうだが、多くのファンは渋々認めるところではないだろうか。以後のアルバムはいかに前作の焼き増しに終わらないかという鬼ごっこを演じていた感すら覚えてしまう。そのため、これが「Drones」や「The 2nd Law」だったら間違いなくトップアルバムには入ってなかった。

その道のりからやっと、外れることに成功したのが本作だ。サブスクによる視聴形態が一般化した音楽業界に合わせ、シングル主体のレコーディング方式を採用し、その中から生まれてきたアイデアを元にアルバムを作り上げるという極めて行き当たりばったりな方法論ではあったが、皮肉にも今まで以上にコンセプチュアルなアルバムに仕上がっている。

新旧のアメリカのヒットチャートを巡る音楽巡礼に、シミュレーション仮説やポストトゥルースなどのコンセプトに基づいた歌詞、そして80年代中心のSF映画のオマージュで構成された一貫性のある映画仕立てのMV集...詳しくは以前の記事にあるが、これらのバラバラのピースがしっかり一体性を持って構築され、しかもMVをどんどん公開してファンの考察を促して盛り上げていく試みは意外と今までなされていなかったものであり、この点だけでも本作は評価されるべきであろう。今後の技術革新で、より一層のコンセプトを伴った新しい音楽作品を作ってくれるのではないかというワクワクが本作には、ある。

 

Orphaned Land/Unsung Prophets And Dead Messiahs

 一神教同士の融和を唱え、本国イスラエルのみならず世界で寛容の心を訴え続けたきたメタルバンド、とうとうキレた。

何故世界は悪化の一途を辿るのか。彼らなりに考えた結果導き出した結果が、「救世主が世のために立ち上がっても民衆は現状に満足して応援しようとしないから」というもの。確かに人々は不満を垂れるものの、いざ実際に改善に向けて努力しようとする人がどれだけいるかという話だ。

そんな民衆をプラトンの「洞窟の比喩」を持ち出して揶揄する冒頭の「The Cave」。前作ではほとんど用いなかったデスボイスによる咆哮を復活させ、近年は歌ものバンドとなっていた路線を再びメタルバンドにシフトさせ、世界に向けて歌いかける。

攻めの姿勢はアルバム全体を通して顕著であり、「We Do Not Resist」では皮肉の効いた曲名も耳が痛いが、歌の途中で検閲音が入り、権益を犯して世直しを図る人間の末路をそれとなく暗示する。「Like Orpheus」に出てくるオルフェウスは、妻を冥界に取り戻しに行ったものの、振り返ってはいけないという警告を破ってしまったがために目的を果たせなかった話で有名だが、一方で新しく宗教を立ち上げたがために怒りを買ってディオニソスの命で八つ裂きにされたという、本作のコンセプトに重なるところのある死に際を迎えている。

その一方で彼らが希望を捨て切ったわけではない。大作「Chains Fall To Gravity」では隷属から逃れようとする人間が自由へと闘争するドラマが壮大なコーラスを交えつつ描かれている。GenesisのSteve Hackettもゲスト参加している本曲は、今年を代表する1曲と言っても遜色のないプロテストアンセムだろう。

 

Wilko Johnson/Blow Your Mind

末期ガン騒動から5年。結局誤診からの生還を果たした彼の真の復活アルバムはタイトルからして活力に溢れたロックンロールアルバムである。Wilko節のキレの効いたギターカッティングにNorman Watt Royのドライブ感溢れるベース。そこに脱力気味なWilko自身のボーカルが乗っかり、唯一無二のバンドサウンドを作り上げている。

アルバムタイトルに関しては「死んだと思ってたら生き返ってびっくりしただろう」という意味もあるだろうが、「70歳の人間による最高にクールなロックンロールで脳天吹き飛ばしてやる」という意図でつけられたのだろう。もはや説明いらずと言ってしまうと投げやりだが、伴奏とリードをカッティングで同時に鳴らしてしまうWilkoワールドに良いも悪いもない。ただ「ロック」している。

 

江沼郁弥/#1

今日び昔のロックスターのように退廃的なライフスタイルで太く短く生きようとしても、社会や価値観が変容しきってしまっており、作為的にやらずして完遂することは不可能である。それ以前に21世紀社会の体質が個々人にも染み付いており、旧世代の生き様をカッコいいと思いこむことすら難しい。

Plentyにおける江沼郁弥という人は、そんな我々世代の代弁者であり、自分たちが「ゆとり」と呼ばれることへの反発や、そうは言っても「ゆとり」に他ならない軟弱な自分たちへの苛立ち、様々な葛藤の中で本気で生きようとしている人であった。

迷いながらも少しずつ答えを見出していった彼が、少しずつポジティブな歌詞を書き出し、音楽性の幅を広げることに興味を見出し、バンドを辞め、チルウェイブなどのエレクトロ路線にシフトしたのは想定の範囲内であった。

今彼が歌うのは人間としてのあり方が分からずにもがく話ではない。具体的な物語は出てこずに、より詩的な心象風景が描かれている。かつての江沼郁弥に救済を求めていた人にはほとんど重なることのない、どこかの誰かの音楽かもしれない。

それでも彼から離れられない人はたくさんいるだろう。彼がより裸に近い状態でで歌うことは何なのか。「光源」では、自らを人々がインスピレーションを受け、1つの目標とするような高みで有りたいと歌う。今までリスナー同じ高さでいた彼もここにはいるけど、そこにはいない。そんな、第2章の幕開けだ。

 

武田理沙/Pandora

昼は臨床検査技師、夜はドラムと鍵盤からノイズを吐き出す、新進気鋭のプログレ/クラシック/ジャズ/ノイズミュージシャンのデビュー作。溢れるパッションをたったの2時間に収めたとでも言わんばかりの情報量の洪水にノックアウトされること間違いない。

印象派風のクラシックピアノの旋律の導入曲「at daybreak,」、ドラムとの熱気に満ちた1人セッションが熱狂の渦に誘い込むジャズナンバー「island」、和風な旋律にAphex Twinレベルの変態ノイズが絡みつく「Pagoda 2018」。冒頭の3曲だけでもお腹いっぱいだが、18分超の大作「Cursed destiny」の、D社のダークサイドとも言うべき不穏ながらも可愛げの溢れる曲運びには、まるで架空のアニメ映画を一編見終えたかのような達成感すら感じる。

ここまではあくまでも1枚目の内容。2枚目は更に別の人格が降臨する。音割れしたドラムが爆発音のように破裂し、人をバカにしたかのようにオルガンのチープな音色が聞き手の心を逆なでする「鳴」で分かるように、1枚目が綺麗に着飾った貴族たちのポートレイトだとしたら、2枚目は心が千々に線切れた芸術家の苦悶する内心を元に、べっとりと油絵具でキャンバスに叩きつけた自画像である。そのノイズに差し込まれる束の間の平穏である「涅槃」でも最後には混沌とした支離滅裂な音の塊になってしまうし、「弟切草」「孤高の厭世家」といった曲名はまるで現代芸術の作品名のような底知れぬ示唆性を感じ取ってしまう。

「綺麗な音楽を奏でる自分を見て賞賛してほしい」という欲望と「偽りの仮面の裏にある本当の自分を見ろ!!」という衝動を等しく大事にし、それをアルバム全体のコンセプトにしてしまうデビュー作。21世紀のミュージシャンが草食化しただとか軟弱になったとか、そう言う言説はここには通用しない。

 

以上の13枚が今年の個人的お気に入りだ。その半分がバックグラウンドストーリーに惹かれて聞いているようなものだが、いずれにせよ、アルバムから得た感動の度合いは優劣つけがたいものだった。

古いロックを好き好んでる自分だが、こうしたアルバムを聞くと新しいものも聞いてみるもんだなとしみじみ思う年の暮れであった。

 

P.S.辛くも選出外となった、めっちゃいいんだけどな…ってなった新譜を今年発売したミュージシャンが以下になります。参考までに。なお、黙って新譜を聴いてくれで取り上げた新譜は省いております。

 


The 1975/ A Brief Inquiry into Online Relationships

Alice In Chains/Rainier Fog

Annal Nathrakh/A New Kind of Horror

Animal Collective/Tangerine Reef

Aphex Twin/Collapse EP

Art-School/In Colors

Bird Bear Hare and Fish/Moon Boots

Black Rebel Motorcycle Club/Wrong Creatures

Cloud Nothings/Last Building Burning

David Byrne/American Utopia

Dir En Grey/The Insulated World

Dorian Concept/The Nature of Imitation

Father John Misty/God's Favorite Customer

Florence + The Machine/High As Hope

Judas Priest/FIREPOWER

Kamasi Washington/Heaven and Earth

mouse on the keys/tres

Nine Inch Nails/Bad Witch

People In The Box/Kodomo Rengou

The Sea Within/The Sea Within

Sting with Shaggy/44/876

Unknown Mortal Orchestra/Sex & Food

The Vaccines/Combat Sports

糸奇はな/PRAY

宇多田ヒカル/初恋