Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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Crazy For Slowdive、単独決定おめでとう!(隠れた名盤『ピグマリオン』について。)

スロウダイヴ単独来日公演決定!

僕たちおめでとう、そしてスロウダイヴありがとう!

12月なんて本当にスロウダイヴのライブを観るにこれ以上ないってくらい完璧なタイミングだ。ゴールデンヘアの轟音の残響に揺られながらクリスマス&正月に向かっていくなんて何て素敵なんだろう。

www.youtube.com スロウダイヴのライブは鬼才シドバレットの名曲ゴールデンヘアのカバー演奏でメインセットを終えるのが定番になっている。(改造しすぎてもはや原曲とは別にスロウダイヴの曲として見るべき曲となっている。)


もうイメージするだけで最高でどうやら居ても立っても居られないので今回はスロウダイヴの記事を書くことにしました。

 


スロウダイヴは言わずと知れた90年代のシューゲイズムーブメント最重要バンドの一つ。今更紹介をする必要はないほどスロウダイヴの知名度は圧倒的だと思う。
マッシュルームヘアで目を隠した4人の少年に囲まれ真ん中にキリッと佇む美女、現代のサブカルバンドのファッションを20年も前にモノにしていたバンドだ。

 

アリソン、40デイズ、マシンガン、と数々の名曲を収録しているスーヴラクはシューゲイズ・ドリームポップの名盤として25年経った現在も聴かれ続け、世界中にたくさんの根強いファンを…

スーヴラクの人気は圧倒的だ。

だがどうだろう、スロウダイヴのファンはThe Jesus And Mary Chain、My Bloody ValentineやRideなんかのシューゲイズバンドたちに比べると随分少ないのではないだろうか?
そこでだ、今回はぼくが最も愛しているシューゲイザーバンドであるスロウダイヴの隠れた名盤を紹介したい。スーヴラクは好きだし新譜も良いけど他は知らない…と言うみなさんにも、もっとスロウダイヴの魅力をより知って貰えるかと思う。

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今日紹介するアルバムは、スロウダイヴの3rdアルバム。今年になるまでスロウダイヴによって作られた最後のアルバムだったピグマリオンだ。


そもそも当時そこまで人気がなかったらしいスロウダイヴだが、中でもピグマリオンは本当に売れなかったらしい。My Bloody Valentine のラヴレスによってシューゲイザーと呼ばれたジャンルのサウンドは完成されたばかりだった上に、ブリットポップムーブメントの台頭によってシューゲイザーは謂わば時代遅れになっていた。そんな状況でリリースされたのがこのアルバムだったそうだ。一風変わったピグマリオンは当時のシーンに衝撃を与えるどころか、全くウケず挙句スロウダイヴはクリエイションレコードにお払い箱にされてしまった。
もちろんツアーも無し。そのまま解散してバンドはバラバラになってしまった。


まさに悲劇のアルバムと呼ぶにふさわしいピグマリオンだが、そのアルバムで鳴っている音は異常と言えるほどに素晴らしい。

open.spotify.com

ゆっくりと広がっていき、静かに静かに空気を濡らしながら脳へ染み込んでくるこの音楽。はっきり轟音と静寂は表裏一体であると実感されられる。
アンビエントなサウンドスケープの上に繰り広げられる、ミニマルなパーカッションとギター。そして時折存在感を見せつけ要所にアクセントを加えるベース。全ての音が不気味さを秘めながらも、心臓の一番奥を揺らし不思議な安心感をもたらす。
初めて聴いた時は正直自分もつまらないアルバムだと思った。スーヴラク序盤のようなポップな曲を期待していたので尚更だ。

しかし何度も聴くうちに、気づけばピグマリオンが自分の中でのスロウダイヴになっていた。
何度も聴いてやっと全ての曲にある美しいメロディを見つけることができた。それらが一度分解され緻密なかけらで再構築されているからこそ唯一無二の世界ができたのだ。
未だにこのアルバムを聴くと心臓の鼓動が早くなる。

最低限の音で静寂を支配しながら壮大にアルバムの幕をあげる一曲目Rutti。最新作のSlomoに最初の掴み曲帝王としては王座を明け渡すことにはなるが、当時の三枚で比べると圧倒的に秀でたオープニングトラックだ。
ピグマリオンがポストロックと呼ばれるジャンルの先駆けと称される意味は中盤Trellisaze、Celloあたりを聴くときっと分かる。Sigur Rósのデビュー作であるVonに直接影響を与えているとしか思えない音が聴こえる。
Miranda、Visions Of L.A. では今までの作品に増して美しいレイチェルの歌声が静寂の中に響く。
この時点ですでにピグマリオンはスロウダイヴの集大成、終着点と言うにふさわしいものなのだが、更にスロウダイヴのキャリア史上最も美しい曲でありうる名曲が収録されている。2つも。

www.youtube.com これはアルバムに収録されているものとは別のバージョン。せっかくなのでアルバムverは通しでピグマリオンを聴く時に取っておいて欲しい。

何度も目をこすってやっとはっきり見えるような曲たちの中で燦然と輝くのはCrazy For You とBlue Skied An' Clear という圧倒的に美しい2つの曲。アルバム二曲目であるCrazy For You は印象的なリフがやまびこのように繰り返し鳴り続けるちょっと不思議な曲。静かでゆっくりと広がるBlue Skied An' Clear はアルバムの最後から二番目で、青空にかかる薄い白雲をゆっくり吹きはらうような曲だ。
シングル向きとも言える二曲は決してアルバムから浮くわけではなくむしろ周囲のぼんやりとした曲たちに溶け込んでとてつもなく神々しく本当に美しく響く。これらの曲はピグマリオンの一部であるからこそ真価を発揮し、ピグマリオンはこの二つの曲を魅せられるからこそ完璧なのだ。

www.youtube.com


Blue Skied An' Clear、なんて美しい曲だろう…

君が愛してると言う、それはとても素敵に響く。
君が愛してると言う、それはとても甘く響く。

もちろんSlowdiveのぼんやりと匿名的でロマンチックな歌詞はピグマリオンでもぼくたちを夢の世界に連れて行ってくれる。

この曲の後、アルバムはAll Of Us という曲にて幕を降ろすが、この曲での幽玄なギターと有機的なニールの歌いはスロウダイヴ解散後ニールとレイチェル、イアンの3人で始められたバンドMohave3 にも引き継がれている。

そう、この曲はピグマリオンだけでなくSlowdiveにとっても最後の曲となったのだ(当時は)。リリースの後間も無くバンドは解散、メンバーたちは道を分かちそれぞれ道を歩んでいく。彼らにもそのファンにも苦しい心残りがあったのは誰がどう見ても明白だったろう。

 


スロウダイヴはちょうどピグマリオンのレコーディングの20年後、2014年に再結成した。
それがスロウダイヴとしての20年ぶりのツアーで、そこで初めてピグマリオンからの曲たちも念願のライブデビューを叶えた。
ロンドンでのツアー初日にはCrazy For You とBlue Skied An' Clear、2日目にはそれらに加えピグマリオン一曲目のRuttiもアンコールで登場。更にUSツアーではピグマリオンのジャケットを印刷したTシャツまで発売されている、ピグマリオンツアーTシャツとして

ピグマリオンのリリース後ツアーに出ることなく解散したバンドを当時見ていたファンにとって、20年の歳月を経て正当に評価されピグマリオンのTシャツを物販に並べその収録曲を大切に演奏しながらスロウダイヴが再びツアーをする光景を見るのは本当に感動ものだったのではないだろうか。もう当事者でないぼくも胸が熱い。

 

ちなみに2014年と2017年のフジロックではピグマリオンからCrazy For You が演奏されている。Twitterでシェアされていた今年のフジロックでのセットリストの写真には塗り潰されたアリソンの右に殴り書かれたCRAZYの文字があった。(今年のフジロックでの演奏はぼくもしっかり見届けた。Crazy For You はもちろん一番心に残った曲だった。写真は僕の知り合いの男前のお兄さんが、男前の中国人のファンに撮らせてもらったセットリストの写真だ。お願いして、載せさせていただいた。)

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しつこいようだが、12月の初めての日本にての単独公演に行く予定の方は新譜とスーヴラクだけでなく是非ピグマリオンも聴き込んで行って欲しい。そしてBlue Skied An' Clear が日本で初めて演奏された暁にはみなで号泣してきてください。

 

ぼくのピグマリオンに対する重い愛はこのくらいにしておこうと思う。(せっかく書いても一歩引かれてしまってはせっかくの努力が水の泡だ。)

ピグマリオンの良さ、少しでも感じていただけただろうか?

 

 

ぼくはどうしても今回の単独公演には行けないので本当に残念ですが、みんなぼくの分も楽しんできてください。


by Merah