コミックソングがJ-POP発展の鍵を握っている説
近頃、芸人のみやぞんが八代亜紀とのコラボでリリースした楽曲である「だいじょうぶ」が非常に往年のポンキッキーズ曲のようで、なんだかほっこりしていたところです。こういうのもコミックソングって言うのかな?こんばんは、一番好きな芸人さんはバナナマン、設楽統にたぶらかされたい会長のべしちゃんです。
- 芸人さんとJ-POPの世界
- TOWA TEIの現行プロジェクト「Sweet Robot against the Macine」
- J-HIPHOPのもう一つの回答「GEISYA GIRLS」
- 黒歴史で終わせるなんて勿体無い!今田耕司扮する「KOJI1200」
- そしてバトンはtofubeatsへ、KOJI1200もう一つの名曲
- tofubeatsの参入と藤井隆の可能性
芸人さんとJ-POPの世界
コミックソングの枠を出た芸人さんの名曲といえば、古くはたけしの「浅草キッド」、「wow war tonight ~時には起こせよムーヴメント」、「明日があるさ Re:Japan」…やはりエンタメ業界における芸人さんの立ち位置と「人情味」という部分は切っても切れないもので、そこに名だたるクリエイターが付けば自ずと名曲が仕上がる図式にも頷けるものです。やはり我々日本人って横ノリと人情に弱いもので、これって歌謡曲や演歌をベースに発展を遂げてきたJ-POPの源流とも言えると思います。
でもやっぱり時代の徒花に終わった有象無象も存在しており、思い出せないようなものも多数存在するこの業界。(業界?)
しかし一方で、ある意味「仕掛けられる」フィールドでもあるのです。あくまで先述のヒット方程式に乗らず我が道を行った結果、むちゃくちゃ後世に残したい作品となった数作をご紹介。
TOWA TEIの現行プロジェクト「Sweet Robot against the Macine」
日本の縦ノリといえばテクノ。テクノといえばYMO。今きてるYMOファミリーといえばTOWA TEI、テイトウワ。
テイトウワといえば近年は高橋幸宏を始めとした豪華メンバーによるバンドプロジェクト「METAFIVE」や水原希子・水原佑果姉妹との共作と精力的な活動が目立つ最中。
そんな中、テイトウワのサイドプロジェクト「Sweet Robot against the Macine」(初代は麻生久美子をフィーチャリング)が再始動。迎えられたのはMETAFIVEよりまりんこと砂原良徳と、なんとバカリズム。
バカリズムといえば自ら主演と脚本を手がけたTVドラマ「架空OL日記」にて向田邦子賞を受賞。マルチな活躍を見せる昨今、兼ねてよりヴィジュアルが激似と名高かったテイトウワとついにタッグを組むことに。「架空OL日記」にて共演した女優の夏帆をゲストに迎え「Sweet Robots against the Macine 3 with KAHO」としてSweet Robot名義では16年ぶりとなる楽曲「ダキタイム」をリリース。
Sweet Robots Against The Machine 3 with Kaho / Dakitime
バカリズムと夏帆の取り止めのない会話の抑揚がなんともアンビエントな響きを持っていて、この手のコラボ企画の新たな一手を見ているよう…!ちなみにバカリはthe pillowsの山中さわおとも「公認の激似関係」なんですがそっちはまだですかね。
…といってもバカリズムってちょっと文化人枠というか、なんかそんな感じじゃないですか。楽曲作るなら秋元センセのところじゃなくてこういう畑に迎え入れられる系というか。テイトウワとバカリズム、もともと組む宿命(さだめ)だったでしょ?みたいな…
J-HIPHOPのもう一つの回答「GEISYA GIRLS」
そうでもないのもあるんです。遡ること平成初頭、2人のゲイシャがNYCを練り歩くーーー
白塗り・日本髪・に、きらめくGOLDのアクセサリー…ゲイシャガールズ!!
…正体はダウンタウン。「ガキ使」内で坂本龍一とのコラボを企画。その際、DJ・トラックメイカーとして参加したのが当時Deee-Liteを脱退、ソロ活動の中でカイリー・ミノーグなどビッグネームと仕事をしていた時期のテイトウワであったのです。ちなみに別名義を用い、DJ Shungikuとして。
テイトウワの手がけたトラックがこちら。
冒頭1秒で映るテイトウワ。教授若っ!…はさておき、まじゴリッゴリのヒップホップです。(リリース時期から考えても尚更)かなりJ-POPの潮流から外れたオールドスクール調。当時米国チャートはヒップホップの全盛を辿っており、ビースティ・ボーイズのブレイクなどとも同時期。
ブレイクに用いられるのは60年代のアフリカン・アメリカンのサックス奏者、Oliver Nelsonの作品「Freedom Dance」から。サンプリングの源流も抜かりなしでここでもガチ感を汲み取れます。
それでもなお「日本で流通させる商業音楽」たる体裁を保っているのは、日本屈指のクセが強い街・アマこと尼崎市出身のダウンタウンの2人が変なカッコで故郷のアマ弁で自ら綴ったリリックをべしゃり倒す…というポイント。単純にオモロイし、関西弁話者圏に住もうてても尚あんま何言うとるかわからへんコッテコテさ。
…(まさにコンビ名通り)ダウンタウンのストリート出身のMCが自らのルーツを自らの言葉で綴る、これってオールドなヒップホップの基本をムチャクチャ踏襲してるのでは…?
異色のタッグに思わぬ形で生まれたジャパナイズ、いやアマナイズヒップホップ。ゲイシャルックと合わせてジャパンヒップホップのもう一つの世界線としてもっと評価されていい作品な気がします。
黒歴史で終わせるなんて勿体無い!今田耕司扮する「KOJI1200」
異色のタッグ、それだけでは終わらない!ゲイシャガールズプロジェクトの翌年1995年、今田耕司のシングル「ナウ・ロマンティック」をまたもテイトウワが作曲・プロデュース。
元来UKミュージックカルチャーに造詣が深いという今田耕司。ディヴィッド・ボウイに代表されるグラムロック、少しときを経て登場したデュラン・デュランなどのニューウェイヴ勢をフェイバリットに挙げ、この「ナウ・ロマンティック」の制作にあたってはヒューマンリーグを意識した…そうです。
案外お化粧がハマってたり今田はナウロマンティック…といった歌詞だったりなんだか言いたいことは色々ありますが、渋谷系の大躍進を遂げていた時代の最中でこのモロにニューロマンティック意識のサウンドは良すぎる…!
前述のヒューマンリーグのみならずデペッシュモードからの流れも汲んでいて、テイトウワのセンス、そして今田さんのなんだかんだモノにしてる歌唱もなんだかんだそれっぽい歌詞も今聴いても新鮮で、黒歴史にしてしまうのは勿体無く感じます。今田さんがMCを務める深イイ話などでも度々「黒歴史枠」として言及されますが、以前ダンスパフォーマンスグループ「東京ゲゲゲイ」が番組に出演した際、この曲をダンスパフォーマンスの一部に組み込んでいて、やはり音色の派手さもあって非常にダンスミュージックとして映えていました…
そしてバトンはtofubeatsへ、KOJI1200もう一つの名曲
そして今田耕司、もといKOJI1200の楽曲で忘れちゃならんのがこれ、「ブロウヤマインド」。DAOKOのカバーで一躍有名となったtofubeatsの「水星」のサンプリング元楽曲です。
岡村ちゃんやスチャダラとも共通点のあるような、かなりR&Bエッセンスを感じるシティ派の90’sソウル!リリックはアレですけど、20年先を行くこのセンスはすでに近い未来で新世代のミュージシャンが再度この曲に灯をともすことを運命づけていたと言っても過言ではない仕上がりです。
決してこの独自進化が悪いわけではないとおもうのですが、横ノリと人情味とが横行する(なんて言い方は良くないですが敢えて)ガラパコスとも形容されるJ-POP業界に、コミックソングという一枚の強烈なフィルターを被せた上で海の向こうのコアとも言えるジャンルのエッセンスをこれでもかと持ってくるテイトウワの手法は、J-POPに風穴を開ける手段としてかなり有効なものだと言えるのではないでしょうか。
そしてサンプリングという手段を用いてtofubeatsが蘇らせたとも言えるブロウヤマインド。語らずもがなの名曲「水星」です。
tofubeatsの参入と藤井隆の可能性
ボケかましたリリックにガチガチのトラックを持ってくるのがテイトウワ流だとしたら、そう言う意味でのコミックソングの縛りをゆうに越えていくのももちろんありまして、やはり思い浮かぶのは藤井隆。
キャリア初期段階より松本隆や川瀬智子と組んでいたり、早い地点で「芸人の曲」という見えない縛りからの脱却を図っていました。
2014年には自主レーベルを設立。前述のtofubeatsと組み、tofubeatsアレンジによる「ナウロマンティック」を椿鬼奴、レイザーラモンRGとともにパフォーマンス。ここで繋がるぅ〜!
その後もtofubeats楽曲「ディスコの神様」にてボーカリストとして客演。ま〜たこれがいいんだ!
tofubeats - ディスコの神様 feat.藤井隆(official MV) - YouTubeyoutu.be
Jigsawの「Skyhigh」やGrand Funk Railroads直系のディスコメロディでありながらすこぶる現代的。藤井隆の特徴的な声も生きる華々しい曲で、テイトウワの其れとはまた違ったアプローチを見せています。
その後一昨年2017年にリリースされた最新アルバム「light showers」では堂島孝平、ノーナリーブス、EPOと言った名だたる玄人からの楽曲提供だけに留まらず、スカートの澤部渡、シンリズムといった新世代のミュージシャンからも楽曲提供を受けており、ガチさを伺えます。
またアルバムティーザーのデザイン性の高さにも感服で、もはや今回ここで紹介する括りなのかも怪しいくらいガチです。
藤井隆 "light showers" CFまとめ - YouTubeyoutu.be
土曜はダメよおじさんや思とったらアカンで!!
芸人さんの楽曲リリース、いっときに比べてまた増えてきておりこういう普段昨今のJ-POPのチャートには乗ってこないような音楽が外気に触れるいい機会であるとも言えます。なにかしらのキラーチューンカモン!べしちゃんでしたー!