今話題のルシファーの塔に行ってきた。 『Godspeed You! Black Emperor / Luciferian Towers』
今日はGodspeed You! Black Emperorの紹介と、リリースされたばかりの新しい作品Luciferian Towers の感想を書いていきたい。
このカナダ出身の音楽集団は3人のギタリスト、ドラマーとベーシストが2人ずつ、バイオリニスト、映像作家の計9人からなる。まさかあのビートルズの2倍以上の人数である。
結成は1994年、2003年に活動を休止し2010年に再び再開して現在に至る。カナダ周辺はどうも大所帯なグループが多いように感じるが土地柄なんだろうか。
彼らの音楽の魅力は混沌としたドローンノイズの上に織りなされる美しいメロディだろう。こう言うと一見取っ付きづらいように見えるが、 ポストロックファンの間のみにとどまらず世界の音楽通たちから非常に高い評価を得ている。その完成度の高さを示す1つの指標としてピッチフォークのスコアを紹介しよう。採点済み5枚の作品のスコアの平均は7.8点、さらに二枚のアルバムが9点以上を獲得している。活動再開後に発表された 'Allelujah! Don't Bend! Ascend! の得点が9.3、同じくカナダ出身のバンドであるアーケイドファイアの名盤と名高いリフレクターが9.2点だ。
要するにGodspeed You! Black Emperor はアーケイドファイアに匹敵するカナダのモンスターグループであり得るというわけです。
(普段は批評家の意見は極力参考にしないよう心がけているがこの際どうしてもGY!BEを聴いてもらいたいので止むを得ずこういった形をとることにした。Funeralで9.7点とGY!BEの最高点を上回るアルバムを出しているアーケイドファイアを引き合いに出したのもそういうことだ。何が優っていて劣っているかを決めるのは決して批評家ではなく聴き手だと思っているのでスコアは参考程度に、本当は3割も鵜呑みにしないで欲しい。)
ここからは新作のLuciferian Towers についての紹介。
まあ辛口のピッチフォークから9点越えを獲得した凄い作品が二枚も過去にリリースされているが、それらを予習する必要はない。むしろ予備知識をあまり入れずに是非今年リリースされたLeciferian Towers から聴き始めて欲しい。
今作は、過去の作品と比べ飛び抜けて形がくっきりしているから一聴した時点で掴みやすい(いやむしろ掴まれる)。ちょうどこれからGY!BEに入門する人に最適なアルバムだ。できるだけ良い音が鳴るヘッドホンなりイヤホンを選んで大きな音で再生して欲しい。
彼らの奏でる不思議な旋律はロックやポストロックというジャンルにとどまらない。耳馴染みのない音でありながらどこか普遍的だ。多分どこやらの伝統音楽とかのあれなんだと思う。詳しいことはわからない。過去にはホルンやバグパイプ、アコーディオンの奏者が在籍していたらしい。西洋の民族音楽にこんな感じのがあるんだろうきっと。
そもそもたくさんの楽器が織りなす音は通常の音量で十分楽しめる多彩さで、脳のいろんなところから音が聞こえてくる感動を味わえる。だがそれでは飽き足らず曲が展開するにつれ音量はこれでもかと上がっていく。複数の楽器に奏でられる不穏なメロディはうねりあいながら凶暴なノイズへと姿を変え、徐々に緊張感を増したリズム隊に絡み込んで、我々の頭を揺らすのだ。
今までのアルバムに比べかなり明るくなっているものの、暗黒面のささやきは未だに鳴り止まない。とてつもなくダークで恐ろしくありながらも、楽しさは今までの5倍だ。GY!BEの遂げた最強の進化の前ではあのiPhone X も思わず尻込みするのではないだろうか。
これは一度聴けば「もはやこの時代、ロックバンドには最低でも8人演奏者がいないと話にならない」というとてつもない真実に到達するはず。Luciferian Towers は美しくも邪悪なGY!BEという地下迷宮へ続く入り口、ぜひ楽しんで欲しい。
実験的と言われる彼らのサウンドは、意外にも心地良く耳を浸す、きっとあなたも病みつきになるはずでしょう。
気に入ってくれた人は是非
「ドラマーが2人なんてのはもはやこの時代の音楽においてドレスコードに等しいし、ベーシストも2人いる方が良いに決まっている。ギターが3本なんて当たり前だよ、まさかギター1本だけじゃどうにもならないでしょう笑、そんなことやって許されるのはBlurだけだよ」
という具合にカッコをつけまくってしまおう。そうやって誰しもがポストロックになって行くのだ。
by Merah aka 鈴木レイヤ
最近のロックバンドの傾向、イスラームからの影響を受けている説
Hello, I'm Miyoshi.
本当はJeff Buckleyの魅力を語るつもりで彼を取り囲んでいた音楽的背景を調べていたところ、中々に興味深い繋がりを発見した。それがこの記事の題名の通り、
最近のロックバンドの傾向はイスラームからの影響を受けているかもしれない
という繋がりだ。
先に結論を言おう。
洋邦問わず近年増えてきた高音の男性ボーカルがイスラームの音楽を元ネタとしている可能性がある。
こういうことだ。理屈的には十分妥当性があると自分では思っている分、説明を読めばJeff Buckleyのファンなどにとっては何の驚きもない説かもしれないし、あるいは全然見当はずれかもしれない。
とにかく説明を始めよう。
突然だが、Nusrat Fateh Ali Khanを知っているだろうか。
80年代にヨーロッパでも有名になり、日本にも度々来日している、パキスタンのカッワーリーの歌手である。そもそもカッワーリーというのが日本人には馴染みのない言葉だろうが、「言う」を意味するアラビア語「قول」から派生した用語で神やムハンマドを讃える歌や恋愛に関する詩など様々なテーマを扱うイスラームの伝統音楽を指す。
その歌い手の中でも大物であった彼は、元GenesisのボーカルPeter Gabrielが立ち上げたワールドミュージックのレーベルReal Worldによって西洋世界にも紹介され、一躍世界中のスーパースターとなり、多くの西洋ミュージシャンとも交流を持った。
過労が祟ってか48歳という若さで亡くなるも、その後も西洋にも大きな影響を与え、2015年の彼の誕生日にはなんとgoogleのロゴに登場し、未だにその人気は衰えていない。
引用元:google.com
と言っても、説明だけではいまいちピンとこないであろうから、動画を紹介しよう。これは先ほど述べたReal World主催のワールドミュージックフェスであるWOMADの横浜でのライブ映像である。
これを聞いただけでは、大して最近のロックと結びついているようには思えない。
ではこれはどうだろう。
かなり激しい歌い回しで、特に2:40辺りからの歌い回しは近年の高音でエモーショナルに歌い上げるロックボーカルとスタンス自体は一致しているように思える。
しかしそれだけでは、決定的な根拠とはなりえない。
ここで満を持して登場するのが、冒頭にちらりと名前が出てきたJeff Buckleyである。
彼に関してはできるならば機会を改めて筆を取りたいので詳細は省くが、90年代に流星の如く現れてレジェンドから同時代まであらゆるミュージシャンに絶賛された孤高の天才であり、何を隠そう、Nusrat Fateh Ali Khanの熱狂的なファンである。
対談を行ったり、ライナーノーツを寄稿するだけでなく、「自分にとってのエルヴィスプレスリーである」とまで言ってのけるほどの最上級の尊敬の念を彼に抱いている。
そんな中、当然というべきか、カバーも行っている。
カッワーリーに使われているのはペルシア語、ウルドゥー語、パンジャービー語が主で、Jeff Buckleyが果たして自分の歌っていることをどこまで理解しているかは謎だが、Nusratの歌い方をかなりの再現度で真似している。最初は突然聞いたことのない言語で歌い出したJeff Buckleyに観客が笑っているが、彼の堂々たる歌い回しに少しずつ引き込まれていく様が生々しく収められている。
ちなみにこの直後の曲間ではボイスパーカッションをしたと思えばNirvanaのSmells Like Teen Spritのリフを弾きながらNusratの歌いかたを真似するという爆笑ものの一幕が記録されているので、気になった方はぜひアルバムを聴いてほしい。
さて、ここまで来たらロックとイスラームの繋がりも見えてきたのではないだろうか。
先ほどのJeff Buckley版Nusratでの2分辺りから聞くことが出来る、ビブラートを効かしたファルセットが大々的にフィーチャーされる曲がある。
それが彼のデビューアルバムのタイトル曲、「Grace」だ。
5:10辺りからの圧巻のファルセットは、間違いなくNusratの歌い方を明らかに意識しており、曲の構成も徐々に感情を露わにして熱狂していくカッワーリー的な構成であり、背景を知らない人には気付きようもないが、「Grace」は相当なレベルでイスラーム音楽のクローンであるのだ。更には彼はバンドスタイルにこだわる理由はハイになれるからとまでも言い切っている。
一方で彼はLed Zeppelinの熱烈なファンでもあり、彼のファルセットを単純にNusratからの影響だけだと断定するのは早計である。そうは言ってもやはり、NusratやJeff Buckleyの絞り出すかのようなファルセットは西洋のロックミュージックの発声とはニュアンスが異なっており、Robert PlantよりはNusratの方が彼の歌い方のルーツを考えるにはより妥当性を感じる。
そして更に、彼のライブを見て自分のボーカルスタイルに高音を大きく取り入れることとなったロックミュージシャンがいた。
MuseのMatthew Bellamyである。
やはりデビューアルバムのタイトル曲である「Showbiz」は、静かな立ち上がりから徐々に激しさを増し、最終的には混沌の中にファルセットで叫び終焉する。
完全に「Grace」を意識した構成であり、つまりは「隠れカッワーリー」である。
しかし、Matthewは自分の高音を「ソプラノ歌手を意識して歌っているんだ」という風に度々発言している。自分の元ネタをどこまで自覚しているかわからないが、面白いことに西洋と東洋の音楽スタイルが融合している。本人はオペラという西洋の伝統音楽をオマージュしているつもりでも、文脈的な意味ではイスラームの伝統音楽カッワーリーのオマージュも恐らくはしている。
更にRadioheadもJeff Buckleyの熱狂的なファンであり、Museと共に男性の高音ボーカルを売りにしたこの2バンドが彼の影響下にいることは大きい。更に、日本ではクソバンドマン芸人を貫いてお茶の間を賑わしたゲスの極みの乙女がMuseのトレードマークとも言える、非常にニッチなギターメーカーManson GuitarのMatthewモデルをMステで演奏していたのがUKロック界隈では少し話題になったが、今の流れだと彼も「隠れカッワーリー」である。と言ったらその道の人にぶん殴られそうだけど。インシャーアッラー。
以上で自分の唱える説のあらかたな説明は終わりである。
それはとっくにスタンダードだ、という意見、いや、全く違う、という意見、みなさん色々とお持ちでしょうが、是非ともこのブログにぶつけていただけると幸いです。
最後に締めの言葉を。
こういう風に旧来では結びつきそうになかった文化が一つの線で繋がる。
これがポストモダンというやつか。
おしまい。
ジンジャーエールで乾杯を<ss>
あらいらっしゃい。
お客さん、うちは初めて?
あら大歓迎よ。お客さんアタシのタイプだし。
ごめんなさいね、こんなむさ苦しいオカマだけで。看板娘でもいたらよかったんだけど。
なにお飲みになる?ジンジャーエール。合成モノしか置いてないけどいいかしら。
ジンジャーエール、懐かしいわ。アタシも頂いていいかしら。
…ねえお客さん。すこしアタシの昔話に付き合わない?
いいじゃない、今夜は月も綺麗だし…こんな夜は思い出すのよ。
昔ね…脱法サイボーグやらジャンクアンドロイドってうじゃうじゃいたでしょう、今じゃすっかり規制されてるけど。
この店もすっかりそいつらのオイル注しの溜まり場になっちゃってた時代があったのよ。どこのバーも通る道ね。
その時の常連の1人にちょっといい男がいてね…名前は知らなかった。でもいつもひとりきりでジンジャーエールを飲んでた。
その頃はまだホンモノのジンジャーエール出してたわよ。お客さんごめんなさいね、合成モノで。
その子、どこもいじってなかったの。珍しいでしょ?あの頃、若い子はみんなどこかしらいじるか生身部分を売っぱらって小銭に変えたりしてたのにね。
その子がうちの常連になって10年くらい経ったあたりかしら、うちで1人女の子を雇ったの。
雇った…って言っても、ホラ、昔流行ったでしょう?ナントカって企業がレジのおねーちゃんとしてずらっと並べてたり…まあ要するに量産アンドロイド。
昔はね、この店の下にモグリのジャンク屋があったの。そこである日それの型落ちの故障品が売っぱらってあったの。
ちょうどウチも人出が欲しくてね。型落ちちゃんでもバッテリーがダメになるまでの半年くらいは店番になってくれるでしょ、ってなもんで安くで譲ってもらったの。知っての通り、ホントは中古アンドロイドの使用なんて違法だけど。
もう記憶媒体はダメになっちゃってたし、おしゃべりもできない。スキンも剥がれて素体も見えてきてた。
でもお化粧してあげてね、チャイナなんて着させたら可愛いもんだったのよ。
アタシその子にルナって名前を付けた。よく覚えてる、月の綺麗な夜だったから。
そこにジンジャーエールのあの子が来た。
彼、びっくりしてたわ。
オカマ、こりゃ違法だよ、なに考えてんだってね。
しょっ引かれたらどうすんだ、それに維持するにしてもこんな型落ちのオンボロ、メンテナンスはおろか裏筋からじゃないとパーツも手に入らねえぜ。なんてボロカス言われちゃって。
いいじゃないどうせバレないわ、それにもう半年もしたらバッテリーがダメになっちゃうしそれまでだけ、ね?たまには変わったことしないと。
なんて言ってたらね、後ろで早速ルナの左手がポロっと取れたの。グラスもガシャーンッ!って割っちゃってね。
あぁ、今思い出しても可笑しいわ。フフフ…
ジンジャーエールの彼も笑ってたわ。まさかここまでオンボロだったとは誰も思ってなかったもの。
だけどこっちも客商売。おててがないとお冷も注げないじゃない?だからとりあえず修理しなきゃね…なんて考えてたら、彼、俺が直すよ、1日この子貸してくれって言うのよ。
明くる日、ルナの左手はきっちり直ってたわ。ルナも心なしか嬉しそうだった。
さあそこからが大変だったのよ。
ジンジャーエールの彼はずっとツケで飲むようになるし、アタシはアタシでなんだかルナに愛着が湧いちゃうし。あの子喋りもしなけりゃ気持ちもないただのからっぽのお人形さんのはずなのに、なんだか可愛いのよ。
でももっと大変だったのは彼みたい。
アタシもオカマ長いことやってるとね、恋をしてる目って分かるの。
でも楽しい日々は一瞬で過ぎるもの。ルナのバッテリー、ホントに半年でダメになっちゃったの。
悲しいけどお別れ。そう思ってた。
だけどジンジャーエールの彼がね、どういうわけかルナを持ち帰ったの。
すると1週間ほど経って、ルナは戻ってきた。
可笑しいわね、なんだかルナが前より綺麗に見えるの。この子はからっぽのはずなのに。
ジンジャーエールの彼もまた店に顔を出すようになった。
でも彼の右足は、安っぽいブリキの義足に変わってた。
その後もルナに不調や故障が出るたびに、彼はルナをどこかに連れて行った。
そしていつしか彼の身体はいわゆる典型的な脱法サイボーグへと変わっていったわ。
アタシもバカじゃないから気付いてた。彼が生身のパーツを売って、ルナを生かしてること。
ルナのボロボロだったスキンの補修が終わる頃、彼の生身と呼べる部分はもうほとんどなくなってたわ。
人間の形を失っていく彼と引き換えにルナはどんどん綺麗になっていく。その頃には脳のコンピューターも付けてもらってて、簡単な会話程度なら交わせるようになってた。もうルナは、人間そのものだったのよ。
でもね、不思議よ。ジンジャーエールの彼ね、もうずっと長いこと彼のこと見てきたつもりだったけど、その時が一番醜くて、美しかったの。恋って不思議ね。
でもね、何にでも終わりは付き物でしょ?
彼、最期は心臓を売ったの。心臓を売ったお金で、ルナに超耐久バッテリーを与えてあげた。
彼は死んだわ。
最期の姿はもはや人間ではなかった。
彼の代わりに人間の姿を背負ったルナも、結局はここで働いてるのがバレちゃってね。もう回収されて、スクラップになっちゃったの。
その報せとともにね、ルナのコンピュータに埋められてた記憶チップが帰ってきたの。
I LOVE HIMってプログラミングされてた。
アタシはコンピュータに疎いからわからないけど、それは彼が書いたプログラムなのか、ルナの中で自動生成されたプログラムなのかーー今でもわからないわ。
お客さんはどっちだと思う?
ごめんなさいね、つまんない話を長々としちゃって。
ジンジャーエール、もう一杯いかがかしら。
by beshichan
「向こう側で会おう」DIIVの現在、再出発
今が嘘をつくのをやめる時だと思う。
みんな、向こう側で会おう。
君たちをずっと愛している、君たちって君のことだって分かってるよね?
ありがとう、ベイリー、エド、ダニー、ウィル、アマンダ、そしてお母さん。
ごめんね
https://www.instagram.com/p/BQEiAT7grl2/
今年の2月、DIIVのZachary Cole Smith はインスタグラムにそう投稿し、薬物依存から脱却するための長い治療へ踏み出した。
DIIV は2011年にZachary Cole Smith(以下コール) によってNYで結成されたバンドだ。
2012年にリリースされたファーストアルバムOshin はジャンルを代表する10年代の名盤となり、方々のメディアにDIIV は絶賛され、日本にもたくさんのファンを生んだ。
リーダーのコールは作詞作曲はもちろんバンドのビデオも自らプロデュースしている。How Long Have You Known? は言わずと知れた彼らの代表曲、この曲のビデオを見ればDIIVがどういうバンドなのか分かるはずだ。
金髪のコールが自分の世界を小さなカプセルに詰めて飲み込む姿は、異常であると同時に普遍的だ。鮮やかな瞬間を生きる繊細で未熟なロックスターの姿に多くの若者が共感を覚えたはずだし、ぼくも彼に憧れ髪を染めた。とにかく、そんな彼らのデビューに誰もが華やかな活躍を思い描いたのだ。
しかし、その向こうでDIIVを待ち受けていたのは暗くて濁った未来だった。コールは薬物に溺れ、たくさんのものを失った。社会の信用、恋人、友人、そんな何もかもを彼は失った。
去年リリースされた新作、4年かけてやっとの思いで完成させたセカンドアルバム"Is The Is Are" も、それまでにあったたくさんのゴシップの陰に霞んだか、前作ほどの評価を得られなかった。ドラッグをすっきり止めてクリーンな状態で書かれたという、せっかくのカラフルな新しい曲たちもDIIV というバンドの名と共にだんだんと忘れられていった。
そして今年2月、コールが薬物依存の治療のため予定されていたツアーをキャンセルし施設に入った。コールがドラッグをキッパリ止めていたと思っていたぼくはそれを聞いて本当に残念に思ったし、きっと彼はそのうち壊れて死んでしまうんじゃないかと真剣に思っていた。
ずいぶんぼくは心配していたが、彼のリハビリはなんとか上手く進んだようだ。(本当だという証拠はないが)
最近のインタビュー記事には施設でのリハビリの様子がかなり詳しく記されている。コールは1カ月ほど施設に閉じ込められたという。限られた曲しか入っていないオーディオプレイヤーで何度も音楽を聴き、アコースティックギターを弾いた。素面で居続ける苦痛に耐えながら、彼は再び純粋に音楽と向き合った。
そして4月になりコールは、リハビリ期間中に自らを支えた音楽をカバーしYouTubeに投稿した。
5月にはまた少しずつライブをこなし始める。
(以下はザカリーによるCow (by Sparklehorse) カバー音源だ。)
『前のアルバムでは本当につまらない真似を、みんなが素通りして然るべきことをしてしまったんだ。「正気で居続けるなんて簡単さ。このアルバムはそうやって作ったんだ。」なんて言って。実際素面で居続けることは大変なことだし、本当に苦痛なんだ。』
前作で作り上げた理性的な世界は自分とファン両方に対する大嘘だったとインタビュー記事で明かしている。
ドラッグは当然のことアルコールも断って完全に正気に生き続けることで、これから彼は自分自身に、ファンの皆に謝っていくつもりだ。
DIIV's Zachary Cole Smith speaks out in first interview since rehab stint
今、コールは自分と向き合い、偽らず真摯に音楽に取り組んでいるように見える。
治療を開始すると宣言した半年後、8月6日に行われたMurmrr Theatre でのアコースティックショーはDIIV の再出発を印象付ける鮮やかな公演となった。
スクリーンに流れる色とりどりの雫、蝋燭や花で飾られたステージ。そこで観客は見たのは、ノイズに頼らない裸の音、ありのままのDIIV、偽りのないザッカリーコールスミスの姿だったに違いない。
過去の名曲は新しいアレンジで顔を見せ(Wait では元Beach Fossils のトムが客演しサックスを吹いた)、彼に影響を与えた音楽やリハビリ生活を支えた音楽もカバーされた(Eliot Smith, My Bloody Valentine, Beck, Girls, Alex G)。この今までと少し向きの違う音たちには新しいDIIVのこれから進む道が暗示されているのかもしれない。
どうやらYouTubeを見る限り新曲も披露されたようだ。きっと遠くない未来、3枚目のアルバムがぼくらの元へ届くのだろう。
DIIV - Honey (NEW SONG) @ Murmrr theater - YouTube
8月にMurmrr Theatre で本格的に再スタートを切った彼らは現在アジアツアーの真っ最中だ。
きっともう彼らを心配することはないだろう。そう信じたい。
少なくとも、彼は半年間素面を貫いている。クリーンで理性を保った新しいDIIV にもそろそろ期待して良いのではないだろうか。
先日ぼくはDIIVのアジアツアー初日をバンコクで無事見届けたので、次の記事ではその模様を詳しくお伝えします。
by Merah aka 鈴木レイヤ
本記事は以下のサイトの情報を参考にしました。