Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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ENDRECHERIをサマソニ東京で見た!

moon-milk-overtrip.hatenablog.com

 

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サマソニに向けて、堂本剛のアルバムレビューを書いたミヨシです。

 

当人も無事サマソニでENDRECHERIとしての彼のパフォーマンスを見ることに成功したので、その一部始終を報告しようかと思います。

 

なお、僕が前に見た彼のライブは[si:]のツアーなので、生の剛体験に著しい断絶があることをご承知ください。

 

 

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前日のSparksなどの深夜ライブで疲れを隠せないまま幕張に舞い戻った僕は、本来予定では最初から見るつもりであったKnox Fortune(Tears For Fearsのカバーが最高だった)を途中から見始め、前の観客が帰っていく度にその隙間に入り、地道に前に進んでいく。

お陰で、一切強引なことはせずにステージ最前から10mぐらいのところまで近づくことに成功した。おそらく熱心な剛ファンなら発狂ものの距離感である。

 

Knox Fortuneが客席を撮影した後に歩きスマホしながら退場した途端に、大編成のENDRECHERIの設営が始まる。

ギター×2、ベース、ドラム、パーカッション、キーボード×2、ホーンセクション×3、コーラス×3に、剛が加わって合計14人という、おそらく今年のサマソニのマウンテンステージで最多人数の編成であったが、滞ることなくスムーズに準備が終わり、開始時刻の15分前には早くもバックメンバーが入場してサウンドチェックを始める。各々が適当に音を鳴らすのではなく全員でがっつりとセッションをし、その時点で早くも会場は濃厚なグルーヴに包まれて歓声が湧く。そしてバックメンバー御一行は一旦退場し、場の空気は少しずつ緊張していく。

 

何せ堂本剛が出てくるのだ。しかも農業アイドルというネット民からの支持も厚いTOKIOのサマソニ出演とは違い、今から出てくるのが誰なのか知らない客も多い中での登場。アレサフランクリンが白人たちの縄張りであるフィルモアに殴り込んだとき程ではないが、日本の音楽シーンでは間違いなく事件だ。

この英断が吉と出るか凶と出るか。開演2分前に客電が落ち、その答えが現れた。

 

バンドが演奏を始める中のっそりと出てきた剛は、まずは舞台袖でしばらくバンドの演奏をじっと見つめている。すぐには出てこず、まるで俺が監督だと言わんばかりの振る舞いに、あ、これはまともじゃないぞ、となんとなく察した僕の予感を裏付けるように、たらたらと、とてもかったるそうに中央のマイクスタンドまで歩く。ストリートギャングのような立ち振る舞い。あとサングラスとうっすらと生えたヒゲが胡散臭い。

 

そのままマイクを掴み、1曲目「HYBRID FUNK」を歌うのだが、マイクスタンドに手を乗せた姿勢を中々崩そうとせず、煽りとかそういう演出は一切なしで淡々と歌い続ける。

これはもしかしてもしかするかもしれないぞという期待を裏切らず、冒頭の4曲で剛は楽器を持つことなく全身フリーのはずだったのだが、ド派手なステージアクションは一切行わない。所々グルーヴに合わせてダンスのような素振りは見せたものの、粛々と進行していった。ただしその4曲は全て最新作からの、かつてなくファンク要素が強いナンバーである。ホーン隊も活躍するきらびやかな楽曲が矢継ぎ早に繰り出されている最中でのステージングなのだ。

 

また、当然のように曲間のMCはなく、5曲目(聞き覚えがないので色々セットリストを調べたところ「TU」の初回盤収録曲?)に至っては間奏で自らはベースを弾き後ろに下がり、手の空いたギタリストに煽りを任せて完全にバッキングに徹したのである。

ちょっと待て。アイドルという色眼鏡云々を通り越して、バンドではなくソロで活動をしている人間がバックに徹する? しかもそこはアウェーに近いフェス会場である。

畑違いのイベントに乗り込むミュージシャンは「お手柔らかによろしく」なり「名前覚えていってくれたら嬉しいです」なり、とにかく下手に出ようとするのが定石だが、以上のような態度で終始音楽そのものだけを浴びせようとする剛、いい子ちゃん化した近年の音楽シーンにおいてぶっちぎりで「ワル」である。

 

その後、シームレスに「Blue Berry」の間奏部分につながり、いわゆる「Berryジャンプ」なるワンマンでお決まりのパートに突入する。ここで全然説明もなく周りのファンが飛び出し、「え?」と我々は困惑するのだが、ステージ上の巨大スクリーンがライブ映像用に初めて解放され、剛の提示する指の本数でジャンプの回数が決まることをそれとなく示してくる。

一歩間違えたらファン以外には分からない内輪のノリのコーナーに陥るところだったが、ここまでの楽曲で「ENDRECHERIはあなたに親切に話しかけませんが、音楽で最高に気持ちよくさせます」という姿勢をはっきりと示し、客とバンドの独特の緊張関係を構築したがため、観客をステージに集中させ、即座に理解させることに成功していた。

 

更に「I gotta take you shamanippon」「TU FUNK」とメドレーで繋げて締めくくった後に演奏したライブ定番曲「Chance Comes Knocking」では、バックに超一流のギタリストを配していながらも、終盤には自ら堂々とギターソロを担当していた。ヨナ抜き混じりの和洋折衷なフレーズで、下駄を履かせてもらってだとかそういうお膳立ては一切なくひたすらカッコよかった。

 

その余韻を上回るように始まったのがなんと10分に渡るファンクセッション。アウェーの50分ステージであえてセッションに10分費やすだと...? 剛のメロウなギターソロから始まった後、バックメンバーのソロを次々とバトンタッチしていき、結果としてはコーラスの2人を除く12人がしっかりとソロパートを受け持った。流石にこんなサマソニのライブは初めてだ。

と言っても、全員超一流のミュージシャンだ。面白くないはずがない。少しずつ盛り上がっていく曲調に合わせてドライブしていくソロ合戦。それを貫禄すら感じるソロで締めくくる剛のギタープレイ。クライマックスではまるでトリのライブが終わった後のような充実感を覚えた。

 

最後に「ありがとうございました」と最初で最後のMCを残し、誰よりも早くさっとステージを捌ける剛。徹頭徹尾、寡黙なパーソナリティを保ち続けてサマーソニックという異なる界隈に身を乗り出した彼に僕は力一杯拍手し続けた。

無論、ここまで無言のフロントマンスタイルに賛否はあると思うが、自分のやる音楽に絶対の自信を持って、あえて音楽以外では口を封じたのであろう(少なくとも普段のライブではMCしっかりしてるし)姿勢は、なんとなーく見に来たぐらいの観客にインパクトを与えるには抜群であった。「アイドルを見に来たら真っ黒なグルーヴだった」「堂本剛舐めてた、すいません」の如き感想がTwitter上で結構見受けられただけに、今回のサマソニは見る側、見せる側共々貴重な体験をしたと思う。

 

見終わって僕が思ったのは、是非来年以降も積極的に夏フェスに出て欲しい、ということだ。今まで彼の音楽と縁もなかった人間を虜にするには、一発勝負のライブ会場に乗り込むのが最適であると思うのだ。というのも、音楽に多額の金をつぎ込む人々は概ね自分のテリトリーにいるため、能動的に他の界隈に出ていこうとしない。だからこそ夏フェスというのは、彼のフロンティア精神に打ってつけの場であるし、何よりも「生」の音楽をしている彼にとって、ステージの上は新たにファンを取り込むのに最高の場所である。だからこそ、色んなフェスで彼の音楽をもっと沢山の人に届けて欲しいし、唯一無二の世界観を構築している彼がそうすることはある種の義務と言いたい。

 

 

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あと余談になるが、今回のライブにおいて「剛ヤベェ」という内容の文言とともに、ステージをスマホで撮影した映像がTwitterで度々拡散されていた。

ファンからしては許せない行為かもしれないが、ちょっと待って欲しい。実のところ、欧米の音楽文化において、ライブの撮影はSNSでの宣伝手段としてほぼ好意的に受け止められており、サマソニ運営側も撮影禁止と言いながらスタッフの目の前で撮影していても無視という有名無実なルールと化している。剛も見に行ったPファンクの帝王、ジョージクリントンのステージに至っては「撮った映像はハッシュタグ付けてSNSにあげてくれよ!」とミュージシャン側が言ってしまう始末で、洋楽フェスに剛が出演したのは、もしかしたら本来彼の立場なら絶対にありえない客撮り映像の拡散を狙っていたのかもしれない、と僕は密かに推測している。

何せ、事務所の方針でYouTube上の動画はほぼ消され、ストリーミングサービス、はたまたダウンロード販売への参入はそう簡単にはいきそうにもない現状で、彼の音楽を聞く方法で一番手軽なのが街のレンタル屋なのである。それでは既存のファン以外中々聞く機会もない。そこにTwitterで彼の音楽が流れてきたら。

 

もしステージでの無愛想さから撮影規制の緩い洋楽フェスを選んだことまで全て計算づくでやっていたのだとしたら、相当の策士だ。

僕の思い込みが暴走しているだけかもしれないが、実際にあの場に居合わせた人ならそこまで買い被っているわけでもないと同意してくれるのではないかと思っている。

 

最後にこれは完全なる剛ファンへのヨイショなんですが(笑)、大分前で見ていたにも関わらず、剛が登場しても全然後ろから押されることなく終始快適に見れた上に、剛の出演が終わっても終日sankakuシャツの人をあちこちで目撃したので、別の畑違いのミュージシャンを呼んでファンのマナーで問題になるのなら、全部剛呼んだ方がいい。これはマジ。