Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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QueenB面・未発表曲を語ろう〜「Smile」から「Queen」への引き継ぎ時代・初期編

こんばんは、べしちゃん…又の名をべすです。

 先日の記事【「界隈」にぶっちゃけ息苦しさを感じてるクイーンのオタクたちへ】に、かなり反響いただきまして…。

こんな駄文を必要とする人は少ないほうがいいに決まってます。現状ご自分自身でムーヴメントも音楽も楽しめてるならそれが余裕でベストです。

それでも頂いたたくさんの暖かいコメント、本当に嬉しかったです。評価のお言葉だけではなく、多々失礼に当たる表現を用いたこと、ぼやかしまくり回りくどくなってしまった内容、などに対する諸々のご指摘も真摯に受け止め、今後の糧とさせて頂きます。

今後ともapollo96をよろしくお願いします!テイスト違うシューゲのオタクとプログレのオタクの登板頻度やたら高いけど… 

moon-milk-overtrip.hatenablog.com

 

さて!とどまるところを知らないボヘミアンラプソディ旋風、サントラや各種グレイテストヒッツをダウンロードしたり、購入したり、スタジオアルバムを揃えてみたり…と、そんな方も多い昨今と見受けます。廃盤作品の再リリースも決定し、そろそろ未発表曲の話とか気になる頃合いじゃないですか?

 

オリジナルメンバーでの活動歴はおよそ20年、リリースされたスタジオアルバムは14枚、ファースト「戦慄の王女」から「Innuendo」までの公式リリースは数字にして159曲(※のちリリースされる「Made in Heaven」や単発シングル「Thank God it’s Christmas」「No one but you」など、またQueen+Paul Rodgers名義でのリリース「The Cosmos Rocks」を除く、スタジオアルバム通算成績。成績?)

もちろんこれだけのキャリアがあるということは我々の知らないクイーンの姿も多々存在するわけで、そういう片鱗に触れるのはめちゃ楽しい。そんな欲に忠実に、このご時世レア度こそ落ちますが、いわゆるスタジオアルバム収録漏れの「未収録曲」全3回にて連載でお届け、べしちゃんfrom apollo96プレゼンツ「QueenB面・未発表曲を語ろう」です。

女王様の秘め事♡というタイトルにしようと思ったんですけどギリ理性が勝ちました。お付き合いどうぞお願いします。

 

 

 

その前に背景解説をば

60年代も後半、モータウンサウンドの残り香漂う中でビートルズやストーンズやZEPと誰しも知るところのレジェンドクラスがUK市場を圧巻、US市場においてもウッドストックの開催と独自市場を擁していた頃。

有象無象の学生バンドの一つであったSmileはボーカルのメンバーチェンジに伴いバンド名をQueenと改定。新ベースの加入に至るまで・もしくはファーストリリースのそれ以後も地道なドサ回りとも言えるギグ活動を続けていきます。

1973年にリリースされたファースト「戦慄の王女」は非難轟々の中、上記レジェンドの圧巻具合も鳴りを潜め新顔奇顔の有象無象が渦巻くチャートの海に放り出されます。続くセカンド「QueenⅡ」まで一貫して、彼らの持ち味はギターテイク・コーラスワークに用いられる多重録音とどっち付かずの時代遅れとも揶揄されたジャンルレスさ。

10ccがすでにギターオーケストレーションを、Sparksがメールハイトーンでカルト的人気を誇っていたことに加えて、プログレ勢も一通り名盤と呼ばれるものはすでにリリースされ、グラムの神様ボウイも既にジギー・スターダストのベールを脱いでグラム時代の終焉を物語っていたこともあり、批判は言い得て妙かと。

そしてシングル「Killer Queen」がリリースされると状況は一変、UK市場でヒットを飛ばし、遥か東方の島国にまでクイーンの名は轟くこととなります。

同時期ヒットを飛ばした同期バンドといえばKISS、エアロスミスなど。遥か東方の島国ことここ日本においては、ミュージシャンや時のアイドルによる洋楽日本語コピーが多々リリースされ、ラジオ環境も今よりずっと浸透していた時代。洋楽を耳にする環境はそれなりに揃っていたことに加え、さらに独自進化を遂げているGSサウンドの浸透。そして散々語られ再販される少女漫画や音楽グラビア媒体の全盛期。

そんな土壌と相まって一躍クイーンはちゃっちゃと洋楽耳やロック少女の間に浸透し、「オペラ座の夜」「華麗なるレース」とリリースの続く初期における全盛期であったクイーンのツアー日程に組み込まれるというまごうことなき市場拠点に。

US進出、批判を跳ね返す進化した独自性、同期バンドとのスタイルの被らなさ、とまさにいい波乗ってんね〜と言わんばかりの快進撃を見せるクイーン御一行に陰りが見えたのは、パンクムーブメントの勃興。しかもあろうことに今後一つのジャンルスタンダードとして定着していくパンクというジャンルにおいて金字塔とされる「Never Mind the Bollocks,Here's the Sex Pistols」と6th「世界に捧ぐ」のリリース日程が重なることとなります。

多重録音・コーラスといった初期キャリアの楽曲を象徴する闇鍋技法は鳴りを潜め、よりシンプルでアンセム的である音楽に傾倒していくクイーン。そうして念願のUSチャート1位を取得すると、続く7th「JAZZ」においてもこれまで流行2、3年遅れサウンドからガラパゴス進化/深化を遂げ確立された独自形態のサウンドから、図らずしもチャートとの整合性を見据えたサウンドへと舵を切ることとなったのでした。

 

 

 …サウンド遍歴と時代背景はこんなところで、いわゆる試行錯誤の曲作りであったキャリア初期。そんな中でどんな曲がアルバム収録選外もといスタメン落ち、もしくはB面送りの刑に処されたのでしょうか…と言っても今回はSmile〜Queenへの過渡期がメインですが…それでは行ってみましょう〜。

 

 ※取り扱う内容上、音源は所謂ブートレグですのでおよそ半数の出典元は非公式であることをご容赦ください。該当する楽曲は曲タイトル部分に該当リンクを貼っています。

また公式リリースのある音源については、iTunes(apple music)/Spotify両リンク記載しています。お使いの環境に合わせてご一聴あれ!

 

Polar bear(1969)

ファースト収録「Doing All Right」同様、元はSmileの持ち曲。ごく初期のギグでのみセットリスト入り、必然的にティムボーカルバージョンとフレディボーカルバージョンの2種が存在します。探してみてね。

1969年(クイーン結成前)ブライアン作曲。録音状態もかなりファーストに近い印象。そういえば実在の動物がタイトルに入っている曲ってこれと「Cool Cat」(形容詞だけども)くらいかな?

ちなみにSmile時代の楽曲のスタジオ版も多々ネットに出回っており、クイーンとしてのキャリア最初期の持ち曲が少ない状態の時代にSmile曲がセットリストに入っていたことは想像に容易く、実際怪しい音源が多々出回っています。探してみてね。

曲タイトルにリンクあり。

 

Silver salmon(1971/1977)

ZEP調の時代背景感じる一曲。Smileのボーカルティムの作品でありながらフレディのハイトーンボイスの映えるハードな作品。ただし現存するスタジオ音源は1977年のものとも言われ、言っちゃえば「息の長い」作品なのかも。ただし公式には公開されていない楽曲なので、フレディの歌い回しやミックス、録音状態からのファンの推測であり普通に1971年録音説もあります。

ただし聴いてみると、確かにこれまでの華美路線から分岐を遂げた「世界に捧ぐ」期のどこかカラッとしていてより目の覚めるようなハイトーンを開拓したフレディの歌声っぽく聞こえます。「Bohemian〜」以降ドラムセットに組み込まれたチャイナシンバルの音が入っていることからも77年説が濃厚。後述「Feelings,Feelings」と同時期のテイクと予想されます。アレも最初期ナンバーの再録なので。

曲タイトルにリンクあり。

 

Hangman(1973)

クイーン結成以前にフレディが所属していたバンド、Wreckageでの楽曲。

リンク先テイクは1973年ギグにて。また1975年「例の初来日」でもセットリストに組み込まれており、比較的この手の曲の中では有用な楽曲。それもそのはず、確かに初期クイーン作で弱かった「ライブ映え」する楽曲であり、(失礼な話当時の技量的に)フル尺でのライブ再現不可能な楽曲が多かったスタジオアルバム収録曲群よりは断然に登板頻度が高かったのも頷けます。

すでにこの後ブライアン作に顕著なブルース基調のハードロックが垣間見得て、ルーツを感じる一曲。テイクにもよりますが一部では後半にちょろっと「Ogre Battle」の一節を用いていたりと、ニヤリとさせられる一面も。

曲タイトルにリンクあり。

 

 Mad the Swine(1972)

こちらは公式リリース有り、ファースト「戦慄の王女」の収録用にレコーディングされたもののお蔵入りとなった曲。初出は1991年リリースのシングル「Headlong」12インチ版B面・同年リリースのUSリマスター版「戦慄の王女」ボーナストラック。
フォーク直系ともビートルズフォロワーたる王道サウンドとも言えるものの、どちらにせよ当時のクイーンでは珍しいタイプの楽曲で後年のジョン曲っぽさも随所に出てます…がフレディ作。

ただのフォークなんて地雷ジャンルですと公言していた彼ららしく、随所にミックスで「遊んだ」形跡のある音作りが特徴。歌詞も同ファースト収録「Jesus」と路線は全く同じ。同コンセプトをもつ兄弟作と言っても差し支えないのかもです。

しかし収録を巡ってはプロデューサーのロイ・トーマス・ベイカーとメンバーとの意見の食い違いがあり敢え無くスタメン落ちどころかシングルB面でも収録は見送られることに。めっちゃ好きやねんけどなあ…ライブでのお披露目も現在確認できる限り全くなかったとのことで、録音から20年の時を経てようやく日の目を見た隠れた名曲です。

 

クイーンの"Mad the Swine (June 1972)"をApple Musicで

Mad the Swine

Mad the Swine

  • クイーン
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

Mad The Swine - June 1972, a song by Queen on Spotifyopen.spotify.com

 

 

See What a Fool I’ve Been(1974)

「輝ける七つの海」シングルカット時のB面収録曲。現行では「QueenⅡ」のボーナストラックとして収録。ブライアン作のオーソドックスなブルースナンバーで、これも初期のクイーンでは珍しい作品。

しかし元ネタが存在しており、一概にはオリジナル曲とはいえないのがこの曲の曲者ポイント。元ネタとなった曲はこちら。1958年のブルースセッションで、テレビで流れてきたこの曲から着想を得たそう。…と言ってもかなりクイーン流ブルースでロジャーのドラムはドカスカ言ってるしブライアンのギターもアルバム本編と同じくらいかそれ以上に唸りを上げ、フレディの七色ボイス女性的ファルセット部門が火を吹いています。ブルースとは。ほんとに珍しくシャウトも聴けます。あとフレディのDear〜♪が聴けるぞ!オタク集合!

グラムともプログレともつかないジャンルの初期キャリアに於いて、彼らそんな引き出しも持ってたのねと驚くこと間違いなしのかなり必聴の一曲。

 

クイーンの"See What a Fool I’ve Been (Alternate Version / February 1974)"をApple Musicで

See What a Fool I’ve Been

See What a Fool I’ve Been

  • クイーン
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

open.spotify.com

 

同「QueenⅡ」収録の「Nevermore」同様、BBCセッションバージョンも同じくボートラに収録有り。歌詞も変わってますし歌い回しも全くの別物。聴き比べマストです。

 

 

クイーンの"See What a Fool I've Been (BBC Session / July 1973 / Remix 2011)"をApple Musicで

See What a Fool I've Been

See What a Fool I've Been

  • クイーン
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 See What A Fool I've Been - Live BBC Session, London / July 1973 / 2011 Remix, a song by Queen on Spotifyopen.spotify.com

 

 

Feelings feelings(1971/1977)

初出は最初期におけるライブナンバーで、当時は「Feelings」というタイトルが冠せられ、下記の現存テイクとはまたテイストの違うブルージーでスローテンポな楽曲でした。初期ZEP意識かな?と思ったり。

しかしおよそ6年の時を経て再録に挑んだのが今回のテイク。TAKE10とSpotifyリンクの方にあるように、テイクを重ねながら現行 77年のクイーンの要素も盛り込みつつ、どちらかと言えばディープパープル畑のアップテンポハードロック調に仕上がっています。

あくまで憶測の域を出ませんが、ピストルズファーストと「世界に捧ぐ」はリリース日が被っていたところから、対抗馬となりうるような過去作のハードロックナンバーからセットリストを引っ張ってきたんですかね。仮にそうだったとしても、パンクにぶつけにいくにはあまりにも旧時代のロックがすぎると思います。音楽市場における1年単位ってものが今のサブスクや大型フェスが牽引する市場とは違い大きすぎるなと感じるところです。

ちなみに同曲TAKE9も出回っており、まあ言うほど曲としての変化はないけど演奏に萌えを見出せる方なら聴き比べもまた一興。

しかしこの時代のフレディの伸びのある歌声はいいですね。カッコいいなあ…

Feelings, Feelings

Feelings, Feelings

  • クイーン
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

open.spotify.com

 

 

と、こんな調子で3回行きます。ちなみにリリースバックグラウンドとかはこのシリーズ参照していただけたらわりかし網羅しています。

 

moon-milk-overtrip.hatenablog.com

 

次回もお楽しみに。べしちゃんでした!またね。