Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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QueenB面・未発表曲を語ろう〜 隠れ名作も隠れ駄作も揃い踏み・中期編

こんばんはべしちゃんです。べすって名前の方が売れてきたのかしら。ややこしくて申し訳ないです。

QueenB面・未発表曲を語ろう連載、第二回です。今回は「The Game」から「The Works」まで、いわゆる中期と呼ばれる期間におけるレア曲集です。

〜「Jazz」期まではこちら参照のこと。

 

moon-milk-overtrip.hatenablog.com

 

 

 

 

その前に少し背景解説をば
 

時は80年代手前。ディスコカルチャーの台頭・ロンドンパンクムーブメントの勃興、そして少し間を置きマイケル・ジャクソンの「Thriller」発売、これは映画ボヘミアンラプソディ内でも物語の動くキーワードとして登場しましたね。爆発的大ヒットは確実にチャートも歴史も塗り替えました。また国内でもYMOの逆輸入デビューから始まるジャパンテクノの勃興期と位置付けられます。

そんなポピュラー音楽史における転換期、クイーンはというと「The Game」収録の「地獄へ道づれ」の大ヒットを皮切りに、このムーブメントに一枚噛んでやろうとリリースした…もののチャート上でも評論誌上でもスベった「Hot Space」。

ソロ作においてもダンサブルなビートサウンドに舵を切ったフレディ、「地獄へ道づれ」作曲者であるジョン、シンセサイザー解禁作である「The Game」製作においても一早くニューウェイヴサウンドをそれなりに取り入れていた流行敏感系ロジャー。一方でシンセサイザーを取り入れたは良いものの「Flash Gordon」作品一連におけるようにまだあくまでも効果音としてのシンセを主体として曲作りをしていたブライアン。この時期不仲であったが故に「Hot Space」は地獄へ道づれられたという通説がありますが、単純な不仲に加えてこの辺りの製作スタイルへの認識のズレの方が大きかったと思います。どうかな?

そして少しの休憩期間をはさみ、「The Works」のリリース。その間にはデュランデュランをはじめとするニューウェイヴ界隈のポップチャート進出、シンセポップ勢も黎明期ながら市場台頭の兆し、MTVの登場もそれを助け、ある種分かりやすいエレクトロサウンドが主流となった原点の期間と言えます。日本ではアイドル黄金期、AORの登場、同じくMTVの輸入で分かりやすさと視認性といった点で海外市場と整合性を持っていた時期です。

クイーンメンバーも各々ソロキャリアを重ね、いざ集結し出来上がったのは前作と同じ轍を踏むまいという意気込みが見え隠れする”もはやベスト盤”。クイーンらしさ満点のロックサウンド、より噛み砕かれたクイーン流ニューウェイヴ(機材環境の洗練も大きいと思います)、そんなナンバーをPV共に多数シングルカットし、ワールドツアーで掴んだ新規市場も巻き込み、現在ステレオタイプとして想像に容易いクイーン像を確立させていきます。

 

 

…さあそんなキャリア中期におけるクイーン。低迷期とも揶揄されるこの時代、スタメン落ちやB面送りの刑に処された中にはどんな楽曲があったのでしょうか。言い方が鬼悪い。それでは行ってみましょ〜!

 

 ※取り扱う内容上、音源は所謂ブートレグですのでおよそ半数の出典元は非公式であることをご容赦ください。該当する楽曲は曲タイトル部分に該当リンクを貼っています。

また公式リリースのある音源については、iTunes(apple music)/Spotify両リンク記載しています。お使いの環境に合わせてご一聴あれ!

 

 

Sandbox(1979)

 "property of Queen productions" ... "property of Queen productions" ...と録音防止用アナウンス。まずそこがどうしても耳に付くのですが仕方ありません出どころがアレだから。
The Game」製作期のデモセッションで、「Coming Soon」の原型であるとも。ということはロジャー作かな?そしてリンク先はファンクラブのコンベンションで公開された音源。現存音源は参加したファンによる録音のみの、かなりのレアトラック。すみません情報が少なくて…
まずロジャーのドラミングにおける特徴的なオープンハイハットがよく聴けて「ああロジャーおるわぁ」。そしてジョンのベースラインで特徴的な、ルートのループは極力避けオブリガートとして一つのメロパートを成立させるライン作りが顕著に聴けます。デモ曲だとある意味デフォルメされた曲作り要素が見えてきて面白いですね。


【完全に余談】

ただこの音源、property of Queen productionsというアナウンスの羅列もショービズミュージックライクな作風に意図せず謎にマッチしており、偶発的に虚構と体制が混じり入る様子はある意味製作手段としてかっこいい気もして、ニュアンス的にはちょっと近年のVaporwaveの潮流内でそこらのエレベーターミュージックがチルの1ジャンルとしてカウントされる構図に近いっちゃ近い気もします、中身全く別物だけど。ていうか本当に制作側も管理側もまっったく意図していないポイントなので本当にどうでもいいんですけど…

曲タイトルにリンクあり。

 

 

It's a Beautiful Day(1980)

Made In Heaven」にて2曲分追加レコーディング、またリプライズバージョンではかなりバキバキにリミックスされている(あれ完全にこれまでクイーンと仕事してた人間とは別の人間が噛んでますよね、いくら95年リリースったってあんなに褪せない音作り聴いたことないわ…)ので未発表ではないのですが…"オリジナル・スポンテニアス・アイデア"バージョンであるこのテイクは「The Game」期のフレディによるピアノとヴォーカルテイクのみのデモ音源。


過去にはホンダFITSのCMソングとしてタイアップされたり先述のように「Made In Heaven」には2曲分使用されていたりと必然的になかなか認知度の高い楽曲だからこそ、新鮮かつ息遣いごと感じ取れるようなこのトラックは必聴。そして確かに言われてみれば「The Game」の時のフレディの声だな〜なんて思いを馳せたり。改めて本当に美しい歌声です。

It's a Beautiful Day

It's a Beautiful Day

  • クイーン
  • ロック
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A human body(1980)

シングル「Play the Game」B面収録曲。リードボーカルはロジャー、そしてどう考えてもどう聴いてもロジャー作。

元々はアルバム「The Game」の為に書かれたもので、シングルB面として書かれたのは「Coming Soon」の方。ロジャー本人もこの「A human body」に対する熱量は段違いでアルバムに収録すると言って聞かなかったもののメンバーと折り合いがつかず敢え無くB面送りの刑に。
このころロジャーがハマっていたチャキチャキのポスト80sロックンロールより断然シブくて良いと思うんですけど…いかにもメンバー仲不穏期っぽいエピソードですね。(?)

それでも新し物好きのロジャーらしくYMOのトキオーを彷彿とさせるボーコーダー音源の使用もあり、クイーン内でのシンセサイザー解禁に伴って後々いちばん有用にシンセサイザーを使用した曲を放ち続けたロジャーらしい作品。

正直なところ「The Game」から「Hot Space」にかけてのロジャーの手がけた曲は今一歩デモっぽさが抜けず野暮ったい仕上がりに落ち着いている印象が強いですが、その中でもこれはスタメン落ちにはもったいない成績を残してるように思います。

 

A Human Body

A Human Body

  • クイーン
  • ロック
  • ¥250
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 Feel like(1981)

完全お蔵入りデモ。一説によるとロジャー作。

Under pressure」の雛形とされ、コード展開、ブライアンによるクリーンアルペジオ、ドラムの入りなど随所にそれが顕著に現れています。例のベースラインから曲できた説は違うかったんだよなぁ。しかしなんとも産みの苦しみを感じるデモであり、突破口となったのが例のベースラインであったのは想像に容易いですね、あの実は複雑怪奇なボーカルラインの決まって行く様子も知りたいけども。
曲や作曲者にもよりけりですが、主に初期においてはコードやリフレイン先行で作曲構成をしていた印象があまりないクイーン作品の中で、コード先行のジャムセッションのを骨として肉付けされていくまさにバンドとしての制作スタイル転換期の様子が感じられるありがたいデモではないでしょうか。
Hot Space」作品はわりとデモ段階のものが出回ってて面白いです。セールスや結託具合はどうあれ「地獄へ道連れ」のヒットを受けて、このアルバム本編も比較的イケイケで製作に臨んでいたであろうさまがなんとなく見えてきます。

曲タイトルにリンクあり。

 

Soul Brother(1982)

シングル「Under Pressure」のB面曲。クレジットではメンバー全員による共作。

ファルセットで流麗かつソウルフルに歌い上げるフレディの歌声は圧巻!クイーン全曲中でもかなりブラックミュージックの潮流を感じつつも、初期の楽曲のような見せ場とも言えるハデなコーラスワークを用いたブレイク、レッドスペシャルの泣きのサウンド、と異色かつ高クオリティのスタメン落ち曲。
要素ごとに抽出すると80年代初頭のマイケルジャクソンの台頭期の音、しかしコードで言うとCメジャーを基調としながら大サビとも言えるブレイクでは♭7へ(初期作にて頻出するので私は勝手にフレディ転調と呼んでいます)と、クイーンらしさはなんなら本編以上!

リアルタイム視聴者がクイーンに何を求めたかは抜きにして、なんならいっそ中期曲最高クオリティと言っても過言ではない、のかもしれないです。やはりスタメン落ちシリーズではかなりの人気を誇る曲。Hot Spaceならもっと他に落とす曲あったやろ…と思っちゃうのも仕方ないと思いませんか。小さな声でね。

 

Soul Brother

Soul Brother

  • クイーン
  • ロック
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Cool Cat with D.Bowie(1981)

Under Pressure」でのボウイとクイーンの共作は、元々はこの「Cool cat」にボウイがバックコーラスで参加するという共同プロジェクトから始まった試みで、希代の名曲「Under Pressure」が生まれるに当たっては前項「Feel like」のクイーンメンバーのみによるセッション中にこれを聞きつけたボウイ側が参加交渉、そしてボウイの参加が決まったとされています。
で、本来注力するはずであった「Cool Cat」は結局フレディの単体ボーカルとして収録。ボウイ参加バージョンはボウイ本人が歌唱をお気に召さず、敢え無くお蔵入りに。…まあ正直それで良かったかなといった感じ…

本ちゃんテイクよりリバーブ浅めで正規ミックス前なのを考慮しても露骨に難産、という印象を抱きます。「Under pressure」が生まれて本当に良かったとか思っちゃうネ。

曲タイトルにリンクあり。

 

 

 I go crazy(1981/1984)

 「RADIO GA GA」7インチ版12インチ版共B面収録。元々は1981年、「Hot Space」録音時のボウイとの「Under Pressure」セッションシリーズで生まれた曲で、次作に持ち越しとされお蔵入りした作品。
ブライアン作のロックンロールナンバーで、ルートコード主体のロックナンバーを作る際はブルースロックを基調としたセブンス多用の4コード進行が目立つブライアン曲の中でもちょっぴり異色。何ならこのスパッと爽快感はロジャー作っぽい。ブライアンもこういうのやるんだ!と新鮮な驚きがあります。

それでも「Hot Space」「The Works」シリーズに共通して言えるフロントピックアップで作ったであろうカラッとしたギターサウンドが製作時期の一貫性をもたらしています。
ちょっとロッキーホラーショーっぽいような…いやロッキーホラーショーがクイーンっぽいというべきか…卵が先か鶏が先か… 

 

I Go Crazy

I Go Crazy

  • クイーン
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Let me in your heart again(1984/2014)


The Works」期に製作され未完のままであったナンバー。2014年に発売された未発表曲含むクイーン流ラブソングを取りまとめたベスト盤コンピ「Queen Forever」収録の為に再編、ミックスされ日の目を見ることに。
「未発表曲が表題作としてリリースされる」という事象が重要であったわけで、正直「The Works」が半ばベスト盤かいと言うくらいにシングルカットされまくりのヒットソングの宝石箱状態であったことから考えても、スタメン落ち(当時でこの曲がどこまで仕上がってたのかはさておき、とりあえず当時最終ミックス着手には至らなかった)のはまあ納得の「他の曲で聴いた」感。2014年まで温めた上でリリースされてなんぼの名曲、と言ったところかなと思います。そのベスト盤商法自体なかなかやらしいなと思いますけど… 

Let Me In Your Heart Again

Let Me In Your Heart Again

  • クイーン
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 

There Must Be More to Life Than This(1984/2014)


「生命の証」と言うタイトルでフレディのソロアルバム「Mr.Bad Guy」に収録。マイケル・ジャクソンとのコラボバージョンが残っており、未発表とされていたのはこのテイク。

なおこの幻のコラボについてはWikipediaにもあるように「マイケルがレコーディング時にラマを連れてきてフレディが気分を害した為」お蔵入りに。LIFE!のコントでもそんな状況見ねえよ。

上記「Let me in your heart again」と同じく2014年リリース「Queen Forever」にて初収録。ただしサブスク配信版では権利問題が生じる為、現行視聴不可能です。
内容は…規模の大きなバラード…フレディサイドもマイケルサイドも各々この手の曲はすでに「手持ち」としてあるわけで、壮大な筈なのにリスナー側の慣れからくる小粒と言った印象が先行するようで、いい曲であるものの正直こんなビッグネームが名を連ねている割にはあまり目新しさは無いです。あくまで個人の感想です!!


ちなみに公式音源のミックスを担当したWilliam Orbitはアンビエントクラブミュージックの前線にいる人物で、インストアルバム「ストレンジカーゴ」シリーズは名作。またプロデューサーとしてもマドンナの「Ray of Light」、blurの「13」を手掛けたりと、言うなれば正直界隈違いのビッグネーム。どうしてこの曲をアンタが…

サブスク視聴不可なので公式YouTubeより→

www.youtube.com

 

 

 

取りこぼしあると思いますけどとりあえず以上!

前回記事でもあったんですが、もしリンク先間違ってたりしたらこそっと教えていただけると嬉しいです…

次回はキャリア後期の取りまとめをば。お楽しみに〜。

 

moon-milk-overtrip.hatenablog.com

当シリーズ、合わせて読むと面白いかも。

 

べしちゃんでした、次回もCOMING SOON💓