ビル・エヴァンス コンセプション 1
私の大好きなジャズメン、ビル・エヴァンス記事第一弾目である。
タイトルはエヴァンスの最初のリーダー作、ニュージャズコンセプションズからもとっているのだが己の考えも自由に反映させ、日々発見や勉強もしていきたいと言う思いでこのタイトルにした。とりあえずウイスキーでも用意して気軽に読んでいただきたい。
エヴァンスにまつわる書籍を読んでいつも感じるのだが、内容が難解であるように思う。(私がとことん無知だからかもしれないが…)
彼のクラッシックへの造詣の深さを鑑みると、難しい言葉で紹介せざるをえないというのも納得できる。
しかし、あの誰もが好まざるをえない美しい響きはあらゆる音楽ファンに幅広く愛されている。知能を持った難解な音楽であることに気付かせてこない為、初心者でも上級者でも皆あの美しい音楽の虜になってしまうのだ。これも彼の凄いところである。
エヴァンスはベースとドラムスの『ピアノ・トリオ』で知られているが、エヴァンスのピアノ・トリオは従来のモダンジャズにおけるものとは一線を画しているのだ。ピアノ・トリオは低コスト編成などとも言われているが(笑)、それぐらい鍵盤楽器は万能であり、メロディと和音の両方を奏でることができる上に打楽器としての役割だって取れる。
エヴァンスが活躍する以前のジャズ・ピアニストたちは、ほとんどがバド・パウエルに影響を受けていた。(パウエル派という)
彼らはトリオの演奏の中でピアノが圧倒的中心であり、右手でシングルノート(単音)のメロディーを弾き、左手で根音を合いの手程度で弾く『管楽器スタイル』。
これに対しエヴァンスは近代音楽要素を取り入れ、ジャズピアノをより芸術的なピアノ音楽として昇華させる。ジャズの純粋な即興演奏の精神を重要視し、ベースやドラムとの対等なインタープレイ(アドリブ)を実現させた。
先ほど近代音楽というワードが出てきたが、エヴァンスはフランスの作曲家であるドビュッシーが切り開いた『印象主義音楽』に影響を受けた。
これは画家のマネ、ピサロ、ルノワールらが行った『印象派運動』から影響を受けたもので、常に構成的、色彩的な音楽だった。
ルノワール「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」
こんなアルバムがある。
「THE PARIS CONCERT1,2」
これはエヴァンス最後のトリオのライブ盤である。
この時期のエヴァンスは薬物中毒のせいで手は二倍以上にむくみ、鍵盤もろくに押さえられなかった。健康状態は見るからに深刻であったが、本人は治療を拒んだのだ。それは彼は常に『死』というものに向き合っていたから延命の意志がなかったのかもしれない。(もちろん命ある限りピアノをたくさん弾きたかったというのもあるが )
そしてこの最後のトリオは彼の死に対する考えと芸術家としての一生に呻吟し、陰鬱な和音の伴奏がつけられたかのような儚くも美しい内容となっている。
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彼が鍵盤に触れることによって一つ一つ音が生まれる。それが印象派の絵画の筆のタッチのごとく色彩的である。そしてその1音が空中に吸い込まれ、音の波紋を作り永遠に広がる…それがエヴァンスのピアノだ。そしてこの『Quiet Now』は特にエヴァンスのキャリアの中でも最高の演奏だと思う。この曲を聴きながら目を閉じると、色彩を持った音の海に沈んでいく体験ができる。第1弾目はこの曲で締めたいと思う。
第2弾目はいつかな…
もちこ