Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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『The Killers 日本にまた来てもらおう』回

東京公演めっちゃ最高だったようで、僕は見てもないのに、余韻に浸っております。

The Killers 大阪公演へ行く予定だったみなさん、誠に御愁傷様です。また、台風やら地震やら度重なる災害の被害を受けた皆さん、いち早く普段の生活を取り戻せるように祈っております。

この文章はThe Killers がいかに素晴らしいバンドかを再び認識していただき、愛を深めることで次の来日に繋げていこうというコンセプトの中で書かれました。

 

 

 

ドタキャン芸人を許そう、愛そう

大阪公演中止を嘆く声が当然多く見られる。The Killers、またか、またキャンセルか、と思った方も多いだろう。しかし、もちろん今回に限らず、度重なるキャンセルや延期は彼らの怠慢によるものではない。

納得が行かない方も、The Killers に対して信用が無くなってしまったと言う方も、やはり多いと思う。すぐにとは言わないが、ゆっくりでも、悪い印象を拭っていってもらいたいので、まず今までの公演中止、日程変更の経緯をここに並べてみようと思う。僕が代わりに言い訳します。

 

2009年のフジロックは、The Killers にとって最初の来日キャンセルである。一ヶ月ほど前に詳細な理由は発表されずに出演キャンセルがアナウンスされた。調べるとフジロックでの出演予定だった日の四日後に次男が誕生している。公にキャンセルの理由は明らかになっていないが、ブランドンが妻の出産に立ち会うと言うのが理由だったのだろう。

 

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二度目のキャンセルは2010年2月だ。上の記事にもあるよう闘病中だったブランドンの母親の余命が宣告された為、止むを得ず公演はキャンセルされ、ブランドンは母との最期の時間を過ごした。

 

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三度目の事件は前回の来日で起こった。体調不良、それが原因で来日こそしたものの一日目の公演が延期になってしまった。致し方ないとはいえ、一部のファンにとって振替えられた日程がストライプスの来日公演と被っているなんていうこともあって。まあ当然、ついにThe Killersはドタキャン芸人として、あのクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジと肩を並べたのだ。

 

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そして今回、誰もが心の隅で恐れていたことが起こった。四度目の公演中止のアナウンスである。13日に予定されていた大阪公演は台風の影響で関空がダウンしているという止むを得ない理由から見送られてしまった。非常に残念なことである。

ここまで合計四回、そう聞くとどうにも日本に来る気がないやる気がないバンドだという印象が強くなってしまうのも仕方がない。しかし、こうして公演キャンセル、延期の詳細を見ると、いずれも仕方がないことだったとわかるはずだ。(確かに2013年の体調不良で延期というのは、まあ多少本人たちやマネージャーらが悪いとも言えるのだが、しっかり振替て特別なパフォーマンスを見せてくれたではないか。)

The Killersの気持ちになって考えて見て欲しい。もし、自分が世界中の人気者だった時、あなたなら「他の地域に比べると大してファンが多くない国、しかも行こうとするとしょっちゅう良くないことが起こったり、ステージに立つのを阻む何かがあるような場所」へまた来ようと思うだろうか?

僕なら、絶対に行かない。どう考えてもツイていない、いや大して考えなくても縁がないところだとわかるからだ。

でも、The Killers は何度でも、何度でも、来日に挑戦してくれている。

 

 

そして、

「君には僕の心が読めるかい?」

と何度も歌ってくれる。

いくらなんでも、ここまで印象が悪くなってしまうことはなかなかない、正直トラウマになるだと思う。でも懲りずにThe Killers は来ようとしてくれる。これは僕の推測だけれど、どんなに壁が立ちはだかっていても、それを乗り越えて来日に挑戦させるほどの日本愛がThe Killers にはあるのだと思う。そうでないと『本人談もっともお気に入りの曲』のミュージックビデオを日本で撮るわけがない。

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コ〜なんとかと違ってスタジアム級のバンドになっても愛される理由、等身大のヒーロー

The Killers の魅力は単なる親日バンド(主観)というところにとどまらない。彼らはキャリアを重ね、非常に大きなバンドになった今もかなり僕たち近いところ(物理的な話ではなく、精神的な距離)で音楽を奏で続けてくれる。まさに、真のグラマラスインディロックンロールなのだ。

ここからは、そんなThe Killers の素敵なところをたくさん紹介して行こうと思う。

名前の由来

恐ろしげなバンド名とは裏腹に、ポップで勇気の出る曲が多い!という印象が強いThe Killers だが、別のバンドから名前をパクっているから殺し屋感が薄いのかもしれない。そのバンドは以下の動画に登場する。

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実はキラーズというバンド名はニューオーダーのクリスタルのMVに登場する架空のバンドから拝借されている。ちなみに、2004年の1stアルバムからの先行シングル『Somebody Told Me』のMVには若干ニューオーダーのクリスタルのオマージュ感がある。

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ニューオーダー、ジョイディヴィジョンがめっちゃ好きなので信用できる

要するにThe Killersという名前はニューオーダーに対するリスペクトである。ニューオーダーの新譜にゲスト参加したり、2006年にレコーディングされたJoy Divisionのカバーが今尚ライブセットリストの一軍に登録されているということも納得できる。ちなみにThe KillersによるJoy Divisionカバー音源は、ニューオーダーが自ら音楽を監修したイアン・カーティスの伝記映画『Control』の為にレコーディングされたもので、映画のエンドクレジットに使用された。

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 意味を知ると怖い、『Jenny was a Friend of Mine』のジェニーは殺されている

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ということで、バンド名に怖い意味がないという事はハッキリしたと思う。知る人ぞ知るトリヴィア、別に怖い意味でキラーズとバンド名を付けたわけじゃないのに『Murder Trilogy(殺人三部作)』と呼ばれるジェニファーという女性にまつわる恐ろしい物語を持った三つの曲がある。

実は、1stアルバムに収録されている『Jenny was a Friend of Mine』、アルバムの一曲目を飾る超名曲なのだが、これが殺人三部作では最終章にあたる。この曲の時点で既にジェニーは殺されている。ライブでShe couldn't scream while I held her close の部分がShe couldn’t scream while I held her throatと置き換えて歌われることがあるということからも明らかである。この曲が最終章という事は、パート1、パート2はどの曲なのかという疑問が当然浮上するだろう。

第1章は未発表音源B面曲を収録したコンピ『Sawdust』の4曲目『Leave the Bourbon on the Shelf』である。この曲は2002年に録音された音源だ。そして第二章が1stアルバム『Hot Fuss』の10曲目『Midnight Show』だ。この三作品ではブランドンの声の主人公が嫉妬に狂い、浮気をして彼の元を去った恋人を殺してしまうという、とても悲しいストーリーが描かれている。

『Leave the Bourbon on the Shelf』で恋人であるジェニファーは他の男のところへ去って行き、主人公は悲しみに暮れもう一度チャンスが欲しいと嘆く。『Midnight Show』では人のいない場所で主人公が再びジェニファーに会う場面が歌われている。主人公は「僕たちはいいカップルだったのに」と嘆くも、結局うまくいかずジェニファーを星空の下、首を絞めて殺してしまう。『Jenny was a Friend of Mine』は主人公が警察に尋問されているているシーンとなっている。「ジェニーは僕の友達だった、どこに犯行の動機があるんだ」と主人公は繰り返す。

いや、なんだかんだ言ってマジでキラーズ。

曲調明るいけど、初期の曲マジでメンヘラっぽい歌詞、多い

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皆でシンガロングしてライブで一番盛り上がる曲『Mr. Brightside(ミスター明るい側)』、僕はカラオケで絶対に歌うし、熱唱するの気持ちよすぎ曲である。明るい曲名だし、楽しい曲だけれど、あれも歌詞は違う男に気になっている女の子を持ってかれて「嫉妬が聖者を海に変える」と言ったような内容だ。失恋はいつもヤケクソ!なかなか人生うまくいかない、その通りだと思う。僕にとって(多分みんなにとって)、ブランドン・フラワーズはイケメン高身長であるにも関わらず親近感が湧く珍しい例だ。

エモいことしやがる

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実は『Mr. Brightside(ミスター明るい側)』の物語はここで終わらない。2012年のアルバムである『Battle Born』に収録された一曲『Miss Atomic Bomb』だが、どこかMr Brightsideにイントロが似ていると思えば、なんと続編である。

8年越しに明かされた「ミスター明るい側」氏の恋した相手の名前はなんと「ミス原爆」。ビデオも『Mr. Brightside』の続編になっている。あの金髪の美女とキザなイケオジが登場し、ブランドン演じる主人公はまた横取りされる。

上のビデオで3分20秒あたり、アルバム版で3分30秒あたりから聴いてみれば、マジに『Mr. Brightside』のメインリフが流れる。また、歌詞も『Mr. Brightside』を当然意識したものになっていて

Open up my eager eyes cause I’m Mr. Brightside

という良い『Mr. Brightside』のアツい一節にあるアツい瞳が

I was new in town, the boy with the eager eyes

と『Miss Atomic Bomb』の歌詞でも冒頭で言及されるなど、長年のファンにはなかなかアツい仕様になっている。(ちなみにバトルボーン発売当時、キラーズを聴き始めたばかりだった僕はクソほど怖いジェニーの歌詞も知らずに「新譜じじくせえな、やっぱホットファスっしょ」と思っていた)

Wonderful Wonderfulは今までと一味違う  

昨年出た新しいアルバム『Wonderful Wonderful』は今までのアルバムと一味違う。先行シングルの『The Man』のアートワークが出た時に2ndの『Sam's Town』っぽいなと思った人は非常に鋭い。やはりジャケがアントン・コービンであるのは単なる偶然ではない。実はこのアルバムは2016年の『Sam's Town』発売10周年記念のコンサートの後にまた『Sam's Town』の様なアルバム、単なる曲の詰め合わせではないレコードを作ろうと感じて構想を固めたものらしい。三人の女性ボーカルを招いてのステージパフォーマンスもそのコンセプチュアルであろうとする意思からきたものなのかもしれない。

めちゃ優しい

日本ではドタキャン芸人として名を馳せているThe Killers だが、それは本当に運が悪いだけで、ライブに言った人らはご存知のようにめちゃくちゃ良い人たちだ。(知らんけど)

今年三月、リアムギャラガーがロラパルーザ(チリ)で途中で声が潰れステージを降りるというハプニングがあったが、その後にThe Killers が登場し、リアムのファンを思いオアシスの曲を何曲かプレイした、というめちゃくちゃ心温まるエピソードがある。すると、その一週間後のロラパルーザ(ブラジル)で、The Killers のステージにリアムギャラガーが急にやって来てハグ、世界が感激というこの二組の絡み、いや感激、めでたし。

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と思っていたら七月にはイギリスで、またThe Killersのステージにリアムがやって来てこのあいだのお礼なんかの挨拶した後引っ込んで、今度はThe Killers がオアシスのAcquiesceをカバーするのを袖で観戦したそうだ。意外な組み合わせだが仲良しになったのかもしれない。

今週末は、シンガポールのフェス(?)で同じ日にThe Killers とリアムギャラガーが登場する様だ。今回もリアムの直後にThe Killers が登場するというタイムテーブルになっている。ひょっとすれば、今度こそデュエットする?

お気に入りの曲

最後にThe Killersのお気に入りの曲を三つ紹介しよう。

 

All These Things That I've Done

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好きな理由:どエモい

 

The World We Live In

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好きな理由:めちゃカッコいい

Bless your body, bless your soul
Pray for peace and self-control
Underneath the waterfall
Baby we're still in this 

 

Sam's Town → Enterlude → When You Were Young → Bling → For Reasons Unknown → Read My Mind

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好きな理由:いずれゆくゆくは『Sam's Town』を顔に貼ってA面をみんなに見える方向に向け、B面を匂って生活したい、将来の自分の顔の代わりになると思うとやっぱりSam's TownのA面が一番好き。結婚してくれ。10周年ライブの音源出してや。

 

 

by merah aka 鈴木レイヤ