Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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メイナードキーナン、プから聞くか オから聞くか

どうも。

 

それは侵入せんとするいかなる猛者をもはねのける強靭な要塞のようであり、百戦錬磨の武将の巨大な体躯のごとき揺るぎなさ、その所作からにじみ出る禍々しさのような、あまりにも近寄りがたい存在であった...

 

何のことを言ってるかお分かりでしょうか。はい、あれです。Toolです。

 

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引用元:Blabbermouth.net

 

21世紀を代表するプログレバンドとして圧倒的な評価を得、大御所プログレバンドKing Crimsonともツアーを回ったことがあるほどの押しも押されぬ大物バンドであり、ボーカルのMaynard James Keenan(画像の一番右)はRATMやdeftonesなどにも客演をし、同世代の多くのバンドからリスペクトを勝ち取っている。

 

このバンドは元々、Maynardがある時ハコでバンドを見ていて野次を飛ばし、「じゃあお前がやってみろ」といういざこざを起こした後、挑発に乗ってメンバーをかきあつめたことが契機らしい(出典元)。始まりからして破天荒なバンドであるが、その後も数回のライブをしただけで契約のオファーが殺到したり、来日時に「自分自身に問いかけろ…」と日本語でMCをしたり、興奮してステージに上がってきた客をMaynardが柔道の技で床に叩きつけ、ホールドしてそのまま歌い続けるなど、尋常ならざる話は尽きない。

その一方で知性の欠片もないふざけたアー写(下を参照)を出したり、2006年以降、定期的に新しいアルバムの進捗の報告をしつつも一切進んでるようではなく、BlurのDemon Albarnによる「やめるやめる詐欺」と同様「出す出す詐欺」のバンドとして、ネットの洋ロック界隈の一部では大変親しまれている存在ではある。

  

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引用元:metalinjection.net

 

だからToolの楽曲の魅力を紹介したらみんな聞いてくれて気に入って、はいめでたしめでたし、とはいかないのがこのバンドの難点である。

 

何がこうToolを近寄りづらい存在にさせているのか。

 

聞いてみたら分かるのだが、「プログレ×メタル×鬱」という組み合わせを全てパス出来るリスナーはそうはいない。音が重くてテクニカルならメタラーには打ってつけだが聞いていると気が滅入る。鬱々とした空気ならインディー好きでもついていけるが音が重いし難解だ。彼らのインタビューを読み込んでいくと、彼らのやらんとしていることはUKロック以上に繊細で幽玄な側面もある。だが、アンサンブルを全体で聞くとメタルであり、難解なことは否めない。

 

更には、ヴィジュアル面でも他の追随を許さない、というかリスナーがついていけないレベルの特色がある。以下は自分が初めて聞いた&見たToolの曲であり映像であるが、

 

 

イントロまでちゃんとたどり着いた人はどこまでいるか、リンクを貼った張本人が不安になるぐらいにしんどい絵面が続く。

グロテスクで混沌としたヴィジュアルは、ギタリストのAdam Jonesが前職のハリウッドでのスキルを活かして作り上げている。完成度がそこらのセルフメイキングPVと比べるべくもなく高いのは間違いないが、メタル×プログレ×難解×グロという初見殺しカルテットがここにチョモランマの如く屹立している。

しかし、繰り返しになるが、本人達の言行も深掘りしつつ聞いていくと、彼らの音楽の根底はただ難解で暗くて重いのではなく、既存の世界の枠組みへの反感やネガティブな感情を昇華してリスナーへのアジテートを行うという強い意志に根ざされたものである。この音楽性になったのは必然であり、一度音の裏にある彼らの意思に気づくと、熱烈なファンになるのは必至である。

 

と言いつつも、実際聞きにくいのは誰がどう言おうと間違いなく、近年の二作はアルバムチャート全米一位獲得と言われても「マジ? アメリカ病みすぎやろ」と返さざるをえない(もし今の時点でハマった人は速やかにブラウザバックして、YouTubeでPVを見てみよう)。

 

でもメイナードの歌声は素晴らしいし、メタルだからって聞かれないのはもったいない!!

そういうわけで、私は考えた。

 

派生バンドのオルタナ色強いのから聞けばいけるんじゃないか??

 

というわけで今回はMaynard James Keenanの歌声を堪能できる二バンドを紹介し、「メタルもプログレもダメだけど、メイナードキーナンはいいよね」と言ってもらえることを目指そうと思う。話の枕長すぎ。プログレかよ。

 

まず紹介するのはA Perfect Circle(以下APC)

 

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引用元:blabbermouth.net

 

見れば分かる通り、元スマパンのJames Ihaがいる。

これだけでセールスポイントは抜群であろう。

実はまだスタジオのレコーディングでは参加していないが、6年間の活動休止の前後を通して今日まで参加し続けている立派なメンバーである。

 

このバンド、実はMaynardの別バンドというよりは、ToolやSmashing Pumpkins、Nine Inch NailsなどのギターテクをしていたBilly Howerdel(写真のスキンヘッド)が主体となって立ち上げたバンドで、二人以外のメンバーは流動的であり、結成時には二人の他に現行PixiesのベーシストPaz LenchantinとQOTSAのギタリストTroy Van Leeuwen、PrimusのドラマーTim Alexanderが在籍していた他に、その後もUSオルタナの大物バンドのメンバーが入れ替わり参加している。

 

肝心のサウンドについてだが、ソングライティングはBillyが主体となっているため、Toolのとっつきにくさは薄れ、繊細ながらも力強いMaynardのボーカルスタイルの、「静」の部分を味わうことができる王道オルタナロックが基盤となっている(Billyがリードボーカルをとることもある)。

 

 

NINのTrent Reznorも作曲クレジットに記載されてる話題性十分なこの曲は、Keanu Reeves主演の映画「コンスタンティン」の挿入歌でPVも映画の映像を使っており、Toolとはかなり毛色が違う。

それでもMaynardの歌声にこもるカリスマ性は全く消え去っておらず、USオルタナも嫌いじゃないよ〜という人はUKロック派でも是非聞いてもらいたい。

TV出演やライブ映像のリリースなど、初期以外一切プロショットのライブ映像のないToolとは打って変わってメンバーの露出も多く、ここからToolを知ったというケースもあるのだそう。

 

なんせ、デビュー直後の来日はチケットが売れなさ過ぎて中止になったToolに対して、APCは話題性十分のメンバーにオルタナの王道を行くサウンドだったために、Toolがレーベルとの訴訟などで音楽活動が制限されている間にちゃかり先に来日してしまうという珍事すら起きているのである。

 

 

今年はオリジナルアルバムとしては13年ぶり(前作は12曲中10曲がカバーだったので、厳密には14年ぶり)の新作がアナウンスされており、Ihaがアルバム制作の段階から貢献しているのが楽しみなのはもちろん、それに伴うツアーも発表されており、今までのアルバムツアーで来日していることを考えると、この一年はオルタナ界隈ではAPCが一番アツいバンドになるかもしれない。(レーベルと新しく契約してライブでは新曲をやってるので、てっきり出すものと思い込んでいたんですが今年アルバムが出ることはないと公式が否定していました…ライブで新曲を二曲披露しているので近々何かしらの動きはあるかと思います)

→結局新作出ました!!

 

個人的にはImagineの短調カバーが好きなので、上の一曲でなんとなく気に入った人は是非聞いてみてください。

 

 

そしてお次はMaynardのソロプロジェクト。

みなさん、お口に牛乳を含んでお読みください。

 

その名も...!!

 

 

 

 

 

Puscifer!!

 

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引用元:rollinstone.com

 

 そうです、下ネタのアレです。

デビューアルバムは「マはマ◯◯のマ!!」といった有様で、Toolのイメージから180°ずれた、品性が最低な脱力打ち込みプロジェクト、でした。

でした、と過去形になるのはワケがある。

Maynardのいまいち掴めない独特なユーモアがこの名義でのメインにあるのは変わりないが、段々とより真面目な曲作りがなされるようになっており、APCよりも更にメタル色が弱く、3バンドの中で一番聞きやすいオルタナティブロックサウンド(打ち込み要素も以前健在である)となっている。

 

 

これは2015年のアルバム「Money Shot」の一曲だが、ここまでくるとメタル×プログレ×難解×グロのカルテットは一つも見当たらない。いたって普通のオルタナの良曲だ。

そうは言ってもライブではメンバーの後ろで延々とプロレスをやっている珍妙な光景が観れるのでやはり変なバンドではある。

 

 

 

と、ここまで貼ってきた動画を少しずつでも見てくれたなら分かるだろうだろうが、Maynardの歌い方はそれほどメタルらしいものではない。囁くように歌うかと思ったら叫んだりもするが、その叫び方も耳障りではなく、どこか感傷的である。

いきなりToolを押し付けて、おおぅ!とどハマりする人はそれほど多くはないだろうが、それがダメでも先にオルタナのボーカルとしてのMaynardを聞いていたなら、おそらくToolのサウンドも以前ほどとっつきにくいとは思わなくなっているだろう。再び繰り返すが、Toolというバンドはサウンドこそメタルであるが、UKロックと同じく繊細な表現に長けたバンドであるのだ。だからこそ、普段はこういうジャンルには疎いロック好きにも広まって欲しい、そういった思いでこの記事を執筆した。

 

Toolが狭い界隈で圧倒的支持を受けながらも他の界隈に侵食しないのはある程度仕方ないと思うところはあるが、この記事を見て、「苦手だけどA Perfect Circleなら聞けるかな」「いい声してるよね」とか、ちょっとでも好意的な意見が生まれたら自分は満足だ。

 

最後にMaynardの幽玄さここに極めり!!という曲があるので、それを貼り付けてこの長文を終わらせることにしよう。

ミヨシでした。