Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

メイナードキーナン、プから聞くか オから聞くか

どうも。

 

それは侵入せんとするいかなる猛者をもはねのける強靭な要塞のようであり、百戦錬磨の武将の巨大な体躯のごとき揺るぎなさ、その所作からにじみ出る禍々しさのような、あまりにも近寄りがたい存在であった...

 

何のことを言ってるかお分かりでしょうか。はい、あれです。Toolです。

 

f:id:Apollo96:20170912173929j:plain

 

21世紀を代表するプログレバンド(プログレ入門の記事も機会があればいつか!)として圧倒的な評価を得、大御所プログレバンドKing Crimsonともツアーを回ったことがあるほどの押しも押されぬ大物バンドであり、ボーカルのMaynard James Keenan(画像の一番右)はRATMやdeftonesなどにも客演をし、同世代のバンドからもリスペクトを勝ち取っている(前回に引き続きMuseのMatthew Bellamyも同世代のバンドにはあまり興味がないと言いつつ数少ない引き合いにToolを出している)。

 

元々Maynardが客としてライブハウスであるバンドを見ていて「やめろやめろ下手くそ」という野次を飛ばし、激昂したバンド側が「じゃあてめぇがやってみろよ」という喧嘩を売り、「やってやろうじゃないか」と挑発に乗ってメンバーをかきあつめたところが契機らしい、破天荒なバンドであるが、その後も数回のライブをしただけで契約のオファーが殺到したが、メンバーはそれぞれちゃんと生計を立てていたので、ただ事ではない金額が提示されるまで断り続けたという余りにも出来すぎたオチが続き、異形じみたエピソードには終わりがない。

 

来日時に「自分自身に問いかけろ…」と日本語でMCをしたり、興奮してステージに上がってきた客をMaynardが柔道の技で床に叩きつけ、ホールドしてそのまま歌い続けるなど尋常ならざる話は尽きず、その一方で知性の欠片もないふざけたアー写(下を参照)を出したり、2006年以降、定期的に新しいアルバムの進捗の報告をしつつも一切進んでるようではなく、BlurのDemon Albarnによる「やめるやめる詐欺」と同様「出す出す詐欺」のバンドとして、ネットの洋ロック界隈の一部では大変親しまれている存在ではある。

  

f:id:Apollo96:20170912180334j:plain

 

だからToolの楽曲の魅力を紹介したらみんな聞いてくれて気に入って、はいめでたしめでたし、とはいかないのがこのバンドの難点である。

 

 

何がこうToolを近寄りづらい存在にさせているのか。

 

 

一般的にはおどろおどろしさが主要因だと言われているが、自分が考えるには「プログレ×メタル」というジャンル的呪縛が、ナードな音楽を好む洋楽界隈では受けが悪いというのが大変大きく、やっていることはRadiohead並みのストイックな音楽構築ではあるものの、変態チックなメタルをdigる人と、ミクスチャーロックからある程度ヘヴィーさに耐性を持った人、そしてモダンプログレも聞くレッシャーにしか広まっていない、というのが実情ではないだろうか。

 

実際、やっていることはUKロック以上に繊細で幽玄であるが、アンサンブルを全体で聞くとメタルであり、しかも難解なことは否めない。

  

 

ファンの撮影で恐縮だが、バンドはデビュー時以外はいっさいプロショットを認めておらず、フェスに出演した時でさえ自分たちが用意した映像をモニターに写すため、このようなライブ映像しか存在していない。

それはさておき、これでもかなり聞きやすい部類の曲だが、音は間違いなくメタルであり、リズムパターンはいまいち掴めないプログレ要素がムンムンである。おそらくナードなロック好きは嫌忌する部類の音楽であろう。

 

更には先述のようにおどろおどろしさを前面に出したヴィジュアル面でも絶句しかねない特色があり、例えば自分が初めて見たPVが以下であるが、

 

 

イントロまでちゃんとたどり着いた人はどこまでいるか、リンクを貼った張本人が不安になるぐらいにしんどい絵面が続く。

グロテスクで意味不明なヴィジュアル面はギタリストのAdam Jonesが前職のハリウッドでのスキルを活かして作り上げており、完成度がそこらのセルフメイキングPVと比べるべくもなく高いのは間違いないが、メタル×プログレ×難解×グロという初見殺しカルテットがここにチョモランマの如く屹立している。

 

 

と、ファンでありながらも散々Toolをディスりまくったが、実際聞きにくいのは誰がどう言おうと間違いなく、近年の二作はアルバムチャート全米一位獲得と言われても「マジ? アメリカ病みすぎやろ」と返さざるをえない。(もし今の時点でハマった人は速やかにブラウザバックして、YouTubeの検索窓にToolと打ち込もう)

 

でもメイナードの歌声は素晴らしいし、メタルだからって聞かれないのはもったいない!!

そういうわけで、私は考えた。

 

派生バンドのオルタナ色強いのから聞けばいけるんじゃないか??

 

というわけで今回はMaynard James Keenanの歌声を堪能できる二バンドを紹介し、「メタルもプログレもダメだけど、メイナードキーナンはいいよね」と言ってもらえることを目指そうと思う。話の枕長すぎ。プログレかよ。

 

まず紹介するのはA Perfect Circle(以下APC)

 

f:id:Apollo96:20170912195141j:plain

 

見れば分かる通り、元スマパンのJames Ihaがいる。

これだけでセールスポイントは抜群であろう。

実はまだスタジオのレコーディングでは参加していないが、6年間の活動休止の前後を通して今日まで参加し続けている立派なメンバーである。

 

このバンド、実はMaynardの別バンドというよりは、スキンヘッドのギタリストで、ToolやSmashing Pumpkins、Nine Inch NailsのギターテクをしていたBilly Howerdelが主体となって立ち上げたバンドで、二人以外のメンバーは流動的であり、結成時のメンバーは二人の他に他に現行PixiesのベーシストPaz LenchantinとQOTSAのギタリストTroy Van Leeuwen、PrimusのドラマーTim Alexanderがおり、他にもUSオルタナの大物バンドのメンバーが入れ替わり参加している。

 

肝心のサウンドについてだが、ソングライティングはBillyが主体となっているため、Toolのとっつきにくさは薄れ、繊細ながらも力強いMaynardのボーカルスタイルの、「静」の部分を味わうことができる王道オルタナロックが基盤となっている。(Billyがリードボーカルをとることもある)

 

 

NINのTrent Reznorも作曲クレジットに記載されてる話題性十分なこの曲は、Keanu Reeves主演の映画「コンスタンティン」の挿入歌でPVも映画の映像を使っており、Toolとはかなり毛色が違う。

それでもMaynardの歌声にこもるカリスマ性は全く消え去っておらず、USオルタナも嫌いじゃないよ〜という人はUKロック派でも是非聞いてもらいたい。

TV出演やライブ映像のリリースなど、Toolとは打って変わってメンバーの露出も多く、ここからToolを知ったというケースもあるのだそう。

 

なんせ、デビュー直後の来日はチケットが売れなさ過ぎて中止になったToolに対して、APCは話題性十分のメンバーにオルタナの王道を行くサウンドだったために、Toolがレーベルとの訴訟などで新作が遅れに遅れている間にちゃかり先に来日してしまうという珍事すら起きているのである。

 

 

 

今年はオリジナルアルバムとしては13年ぶり(前作は12曲中10曲がカバーだったので、厳密には14年ぶり)の新作がアナウンスされており、Ihaが初めて作曲の時点からサウンドに貢献しているのが楽しみなのはもちろん、それに伴うツアーも発表されており、今までのアルバムツアーで来日していることを考えると、この一年はオルタナ界隈ではAPCが一番アツいバンドになるかもしれない。(レーベルと新しく契約してライブでは新曲をやってるので、てっきり出すものと思い込んでいたんですが今年アルバムが出ることはないと公式が否定していました…ライブで新曲を二曲披露しているので近々何かしらの動きはあるかと思います。)

 

f:id:Apollo96:20170912234023j:plain

 

個人的にはImagineの短調カバーが好きなので、上の一曲でなんとなく気に入った人は是非聞いてみてください。

 

 

 

 

 

そしてお次はMaynardのソロプロジェクト。

みなさん、お口に牛乳を含んでお読みください。

 

その名も...!!

 

 

 

 

 

Puscifer!!

 

f:id:Apollo96:20170912221301j:plain

 

 そうです、下ネタのアレです。

デビューアルバムは「マはマ◯◯のマ!!」といった有様で、Toolのイメージから180°ずれた、最低な脱力プロジェクト、でした。

でした、と過去形になるのはワケがある。

Maynardのいまいち掴めない独特なユーモアがこの名義でのメインにあるのは変わりないが、段々とより真面目な曲作りがなされるようになっており、APCよりも更にメタル色が弱く、三バンドの中で一番聞きやすいオルタナティブロックサウンドとなっている。

 

 

これは2015年のアルバム「Money Shot」の一曲だが、ここまでくるとメタル×プログレ×難解×グロのカルテットは一つも見当たらない。いたって普通のオルタナの良曲だ。

そうは言ってもライブではメンバーの後ろで延々とプロレスをやっている珍妙な光景が観れるのでやはり変なバンドではある。

 

 

 

 

 

ここまで貼ってきた動画を少しずつでも見てくれたなら分かるだろうだろうが、Maynardの歌い方はそれほどメタルらしいものではない。囁くように歌うかと思ったら叫んだりもするが、その叫び方も耳障りではなく、どこか感傷的である。

いきなりToolを押し付けて、おおぅ!とドツボにはまる人はそれほど多くはないだろうが、そういう人でも、先にオルタナのボーカルとしてのMaynardを聞いていたなら、おそらくToolのサウンドも以前よりはとっつきにくいとは思わなくなっているだろう。再び繰り返すが、実はToolというバンドは、サウンドこそメタルであるが、UKロックと同じく繊細な表現に長けたバンドであるのだ。だからこそ、メタル好きだけでなくもっとヨーロッパよりのロックリスナーにも広まって欲しい、そういった思いでこの記事を執筆した。

 

Toolが狭い界隈で圧倒的支持を受けながらも他の界隈に侵食しないのはある程度仕方ないと思うところはあるが、この記事を見て、「苦手だけどA Perfect Circleなら聞けるかな」「いい声してるよね」とか、ちょっとでも好意的な意見が生まれたら自分は満足だ。

 

最後にMaynardの幽玄さここに極めり!!という曲があるので、それを貼り付けてこの長文を終わらせることにしよう。

ミヨシでした。