Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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Medicine、狂ったポップミュージック (色褪せないアメリカンシューゲイザーバンド、メディシンについて)

Medicineは超高音でノイジーなギターが特徴的な1990年に結成されたロサンゼルス出身のシューゲイズバンド。1995年に一度解散するも、2002年に再結成し現在も活動中だ。

Medicineのギターサウンドは、90年代前半ひしめき合っていた数多のシューゲイズバンドたちの中でもずば抜けてオリジナリティが高く、一度聞けば病みつきになることは間違いなしの依存性強のシューゲイジングだ。ギターの音だけで比べるとマイブラッディヴァレンタインの次くらいに驚異的だと個人的には感じている。

今回はMedicineを曲とともに紹介していきたいと思う。

 

 

 

結成から解散まで

1992年 Aruca  1stアルバム"Shot Forth Self Living"より

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一音目から一瞬耳を覆ってしまうような限界レベルの超騒音高音で鳴り響くギター、90年代らしいポップでシンプルなリズムのドラム、シューゲイザーらしく囁き声で歌う女性ボーカル、これがMedicine である。1990年、Savage RepublicというバンドのドラマーであったBrad Laner という男によって作られた4トラック宅録デモが発端となり、このバンドは生まれた。

録音を聴いた音楽業界の人間に「このテープと同じような音をバンドで演奏できるなら契約しよう。」という風にブラッドは告げられ、彼がロサンゼルスの音楽シーンからバンドメンバーを集めたというのが結成の成り行きだそう。

その後、このArucaという混沌としたポップソングが1stシングルとしてリリースされた。ちなみに、この曲は初めてクリエイションからリリースされたアメリカ人バンドの曲でもあるそう。

 

 

1992年 5ive  1stアルバム"Shot Forth Self Living"より

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ドラムのビートと男女のツインボーカルが踊れ踊れと耳を促し、ノイズのうねりが身体中を刺すように駆け巡る、本来不快とされるべき騒音が爽やかで心地よくすら感じられるのが不思議になる。

このめちゃくちゃなサウンドを鳴らし続けるのは、バンドを結成した張本人ブラッドなのであるが、ウィキペディアによるとギタリストの彼がYAMAHAの4トラックレコーダーをエフェクターとして利用することであのサウンドが作られたそう。そのまんまかいな。

以前、米版スポティファイを闇利用していた時期はMedicineの全アルバムを聴くことができていたのだが、タイ版にはないようで、日本版スポティファイはどうなのだろうか。一応アルバムのリンクを貼っておきます。

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1993年 The Pink  2ndアルバム"The Buried Life"より

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この曲は2ndアルバムThe Buried Lifeのオープニングを飾る一曲だ。Slowdive、MVBにDrop Nineteenと多くのバンドにとって女性ボーカリストの可愛らしく神秘的な佇まいは印象的であるが、このバンドにおいても女性ボーカリスト、Beth Thompsonの存在感は圧倒的だ。この曲ではベスのボーカルが前面に押し出されている。声だけ聴いて可愛らしい女性の姿を想像していたのだが、写真を見て僕はだいぶ驚いた。

 

 

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ベストンプソンはノイジーなギターに負けず劣らずパワフルなビジュアルの金髪長身女子で、どう見ても後ろにいるナードな男たちより頼りになりそう(服装もかなりパンキッシュで素敵)。ちなみに、再結成後のライブ写真から、ベスさんのカッコよさは現在も上昇中なのではないかと僕は踏んでいる。

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1993年 Never Click  2ndアルバム"The Buried Life"より

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この曲はブラッドの優しいボーカルに、爽やかなベスのボーカルが絡んでかなりポップ、さらにキラキラしたギターが映えて典型的なシューゲイザー曲になっている。ミュージックビデオはベスさんの存在感が強い。

そういうことで、Medicineが音も見た目もマジでカッコいいバンドなのだということがだいたい分かって頂けたかと。

可愛らしいジャケットの2ndアルバム、日本版スポティファイにはあるのだろうか。ちなみにタイ版スポティファイにはない。

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1994年 Time Baby Ⅲ  映画"The Crow"のサウンドトラックより

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Time Baby Ⅲ は映画The Crowの劇中で使用された曲である。本人たちもカメオ出演しており、動画はその時の映像。

聴いてもらうとわかると思うのだが、この曲ではベスとは別の女性が歌っている。非常に特徴的な声なのでピンと来た人もいるだろう。

この曲は1stアルバム時期の5ive EPのカップリングであるTime Baby Ⅱ を、コクトーツインズのロビンガスリーが再編したもので、コクトーツインズのボーカルであるエリザベスフレイザーの声とガスリーのギターで曲がガラリと変わっているのだ。何とも豪華な仕上がりで、Medicineの曲の良さが別の形で浮かび上がった曲とも言える。

しかし、その次の年にMedicineは解散してしまった。理由は、

 

 

知りません。 

 

 

解散後のBrad Lanerの作品、一時的な再結成

1997年 Backworlds Luskのアルバム"Free Mars"より

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95年にMedicine は3rdアルバムをリリースした後バンドは解散してしまうのだが、その後ブラッドは別のバンドに参加している。

そのブラッドの参加したバンドというのが元ToolのPaul D'Amourを中心に結成されたプログレサイケなスーパーグループであるLuskだ。

結局一枚アルバムを発表して解散することになるが、唯一のアルバムであるFree Marsはなかなかクォリティの高いポップソング揃いで聴いていて楽しい。もちろんブラッドのアイデンティティであるあのギターサウンドもいい味を出している。こういったプロジェクトがブラッドその後のキャリアに厚みを加えていったのだろう。

ちなみに当ブログにはTool(のメンバーによるサイドプロジェクト)に関する記事が既にあるので、これを読んでToolに興味を持ってくれた方は是非そちらも。→メイナードキーナン、プから聞くか オから聞くか - Apollo96

 

 

2003年 As You Do 4thアルバム"Mechanical Forces of Love"より

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2002年にMedicineは一時的に再結成されるが、そこにブラッド以外のお馴染みのメンバーはおらず、ベスさんの代わりにマイクを握ったのはブルースリーの娘である女優シャノンリーさんだった。いやどないなっとんねん!と突っ込みたくなるが。

しかし、その二人体制のMedicineからリリースされた唯一のアルバムであるThe Mechanical Forces of Loveを聴いてみるとこれがめちゃくちゃ良い。シャノンリーのパワフルなボーカルも印象的だが、やはりところどころ姿を見せるブラッドの優しいボーカルに心が落ち着く。

エレクトロニカの影響も色濃いノイズポップで普通のMedicineに飽きた頃に聴くと腑に落ちるはず。

なんと辛口批評でお馴染みのPitchfork誌から8.02ndアルバムのThe Buried Life に次ぐ高得点をもらっていて、あぁなるほどねえという感じである。

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オリジナルメンバーでの再結成〜現在

2013年にMedicineは、リーダーであるブラッド・レイナー、結成当初から解散までドラマーを務めたJim Goodall、そしてあの金髪長身の女性シンガーBeth Thompson、という馴染みのあるラインナップで再結成された。

Captured Tracks(DIIVやWild Nothings、マックデマルコなどが在籍するレーベル)と契約して本格的に活動を再開した彼らは、2ndアルバムを彷彿させる果物の静物画のアルバムアートに飾られた5thアルバム"To The Happy Few"をリリースした。

 

2013年 Long As The Sun  5thアルバム"To The Happy Few"より

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この曲は、その5thアルバムからの先行シングルだ。1st、2nd時期のMedicineを再構築したかのような荒いブラッドのノイズギターはより洗練され、ベスのボーカルとジムのドラムは初期の曲と変わらぬまま。この曲を聴き、ジムの叩くシンプルなリズムがMedicineの音楽の輪郭をはっきりとさせ、ポップスたらしめているのだと再確認した。

5thアルバムは90年代のMedicineが大好きな人に是非聴いてもらいたいと感じた。録音技術の向上(?しらんけど)により、さらに洗練されたノイズが楽しめるようになったのではないか。

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2014年 Turning  6thアルバム"Home Everywhere"より

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全体に張り巡らされたノイズが四方八方から点滅する中を、エレクトリックなリズムに乗せられたベスの冷たいボーカルが聞こえる"Turning"は、再結成から数えて二枚目のこのアルバム"Home Everywhere"がMedicineの新境地であることを簡潔に示している。これまでの曲は、音の悪いイヤホンなんかでも何とか楽しめたのだが、これはできれば多少良い音質で聴きたい。

 

2014年 Move Along - Down The Road  6thアルバム"Home Everywhere"より

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アルバムからもう一曲シングルカットされた曲があるのだが、こちらはビデオも作られている。曲はめちゃくちゃかっこいいのに、映像がめちゃくちゃダサイケ。

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Medicine、ブラッドレイナーが参加した曲、アルバムなど

Wild Nothings - Life Of Pause

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Wild Nothings の2016年のアルバムLife Of Pause にMedicineのボスことブラッドが参加しているらしい。ネットの情報によると、まずは1曲目のReichpop、次に4曲目のJapanese Alice、5曲目で表題曲のLife Of Pause、最後に7曲目のTo Know Youだ。えっめっちゃ参加してるやん。

5曲目Life Of Pauseのみバッキングボーカルとシンセ、あとは全部ギターだそうです。

一回聴いただけで「多分これそうなんだろうな…笑」ってすぐに分かるの凄い。

Life of Pause by Wild Nothing on Spotify

 

Caribou - Barnowl

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カリブーの3rdアルバム、The Milk Of Human Kindnessのクロージング曲であるBarnowlでブラッドレイナーのギターが使われているらしい。

実は僕、カリブーがめちゃくちゃ好きで、このアルバムも相当大好きで、この間たまたま見つけてアナログ盤を購入したばかりだった。しかもこの曲、アルバムで一番好きな曲。今日、英語のウィキペディアを読んでて初めて知って驚きたまげた。

意識して聴いてみると確かにブラッドのギターが鳴っているのがわかる。動画だと、1分30秒から、3分40秒から。ジジジ〜って音がどう考えてもそれですよね。めちゃくちゃ良いところでがっつり使われててすごく興奮する。

(Medicineの日本語版のウィキによると、Medicineの1stの一曲目One More をサンプリングしているらしいですが、当のカリブーのアルバムの英ウィキにも載っておらず。出典は謎です。日本のネットにあるシューゲイザーの情報は下手したら本国のそれより詳しいかもしれないなぁと感動した。)

Barnowl, a song by Caribou on Spotify

 

 

M83 - Splendor

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ブラッドレイナーってM83とも一緒にやってるんだ!知らなかったビックリだな…と思って聴いてみたら、まさか声での参加。どうやらSplendorとWaitの二曲で歌っているよう。ちなみにSplendorは作曲からブラッドが関わっているよう。この曲はライブでも一度共演しているようで、MCで直接的な影響を公言していた。M83は他のアルバムの全然関係ないアルバムが既に多少Medicineっぽいから、そういう面での共作を避けたのかな。それにしても現在のインディーロックシーンにおけるブラッドレイナーの影響力は思いの外大きいのだなと今回記事を書くためにいろいろ調べ物をしていて驚いた。

Splendor, a song by M83 on Spotify

 

おまけ

ということでここまでがMedicineについての紹介になります。とにかくMedicineはギターのブラッドがすごく特徴的な音を鳴らすというのが全てですね。それが好きか嫌いかで好みがバッサリ分かれると思います。

とにかくまず、1stの"Shot Forth Self Living"と2ndの"The Buried Life"から聴いてもらうのが一番だと思います。

そこでハマってもっと聴きたくなったらたら、再結成後の2枚、5thの"To the Happy Few"と6thの"Home Everywhere"を聴いて、真ん中の2枚、3rdと4thは個人的に後回しでいいかなと。

あまり聴いていないので3rdアルバムについて本文中では全く触れませんでしたが、ノイズ控えめな感じです。

このバンドってシューゲイザーの中でも珍しいくらいストレートに騒音、掃除機の音というより鉄工所の音みたいで面白い。

 

ちなみにおまけですけど、最近知った日本のバンドで、こういうキンキンした感じありで、もっとやばいノイズを鳴らす人たちがいるので興味がある人は聴いてみてください。↓

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by Merah aka 鈴木レイヤ