Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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今のGrouploveを聴いてくれ-tongue tiedとwelcome to your life-

 

youtu.be

 

Tongue tiedを覚えているだろうか。ロス出身の5人組バンド、Grouploveのファーストアルバム収録のシングルカット曲で、iPod touchのCMソングに抜擢され、彼らが一躍インディーロックシーンの第一線に躍り出るきっかけとなった曲だ。

この曲をはじめとして、彼らのファーストは大人になりきれない我々世代のティーネイジャーゴコロを大いにくすぐる「エモい」1枚だ。

 

そんな彼ら、去年の今頃にサードを出している。

正直セールス的にも動画視聴回数的にも彼らが業界において一定の地位を得ていないこと、ていうかぶっちゃけファースト一発だったことは認めざるを得ない。だが、Grouploveはこんなところで終わるタマではない、絶対に今、聴くべきなのだ。

 

 

まず1枚目、「Never trust a happy song」の話をしよう。

全編ゴキゲンな…と言ってしまえばバカっぽい総評だが、このゴキゲンの塩梅が絶妙だ。夕暮れの海帰りのような、「今日は楽しかった、この一瞬が永遠に続けばいいのに(だけど続かないのは知ってるから、余計にさみしい)」。そんな一瞬一瞬をスナップのように切り取り、鮮やかな絵の具でキャンバスを埋めていく。そうして生まれた音楽という印象を抱く。

「この一瞬が永遠でないこと」を認めてしまえば、大人になった証拠だ。と思う。だが彼らの音楽はそれを認めない。「この一瞬を永遠に変えるため」に音楽をやっているように思うような、みずみずしい音楽だ。

 

では何故今、そのファーストじゃなく、サードを聴くべきか?いやもちろんファーストも聴いてほしい。セカンドも聴いてほしい。EPも全部聴けよ。

それはさておいて、ボーカル/ギターのセバスチャンとボーカル/キーボードのハナは夫婦なのである。

夫妻には、このサードが出る少し前、娘が生まれたのだ。

(まあなんとも玉のように可愛らしいお子さんである。しかも夫婦のインスタに彼女が載るときは、「grouplove」という人物タグが彼女に引っ付いている。なんともカワイイ。)

大人になることを拒んでtongue tiedを歌った彼らは人の親となり、取り巻く環境も変化した。ここで聴いてほしい、サードアルバム「BIG MESS」のリードシングル「welcome to your life」。

 

youtu.be

 

めっちゃいいだろ…?

 

この曲は、セバスチャン・ハナ夫妻が娘に捧げた曲だ。陽だまりのようなハナの声は本当に優しく、なんとも暖かさに満ちている。

「さよならなんて言わないで、おやすみなんて言わないでよ」tongue tiedでそう叫んだ彼らが、子供という存在を経て、変化することを肯定した。ビデオを見ても感じるように、彼らが彼らの音楽で切り取るものが「美しい一瞬」そのものではなく、本当ならば切り取りようもない「未来」に変わった瞬間なのだ。

またサウンド面も、色鮮やかな音を鳴らす前作までの流れを汲んでいるのは変わりない。だが、ヒリヒリとしたティーネイジャーっぽさの熱量は身を潜め、優しさに満ちたさらに表情豊かな音楽へ変貌を遂げたように思う。

 

 

そんなwelcome to your lifeをリードシングルに提げたサードアルバム「BIG MESS」。

もちろん他の曲もそんな背景を持ち、ファーストよりもさらに含みを持たせた素晴らしいアルバムとなっており、まさに今これを聴くことで、彼らにとっての重要な過渡期をリアルタイムで体感できることとなる。

 

彼らが持つ極彩色かつ繊細なパレットに、ドカンと大きなキャンバス。次はそれで一体何を切り取って描くのかな。私は来たるフォースアルバムがものすごく楽しみだ。さあ、今こそGrouploveを聴こうぜ。