Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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DYGLのMVを監督したToto Vivianのバンド、Splashhは活動休止前に人知れず完成形を記録していた 。

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このMVめちゃくちゃカッコよくないですか?80年代から90年代前半のイギリスのライブハウスっぽい感じ、まさに!って感じがする。

今日はこんなカッコいいバンドDYGLの音楽について、ではなくこのビデオを監督した人のバンドについて紹介します。このビデオ監督は例えば他に、2018年秋冬のPRETTY GREENのBlack Labelコレクションの動画なんかも手がけている個人的に注目の選手だ。

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このビデオを監督しているToto Vivian さん、現在は映像の方面で活躍を見せているのですが、元々はSplashhという結構凄いバンドのギタリスト。DYGLのMVを手がけたのも、きっとNYのインディーロックシーンで交流があったことが発端なのかなと僕は推測している。DYGLとの関連からもわかる通りSplashhは、その知名度とは裏腹に現在のインディーロックシーンの交差点の様な場所にあった非常に大切なバンドだ。一体どういうバンドなのか、見過ごされがちな彼らの素晴らしい音楽を今日は紹介していきたい。

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Splashhは、トト・ヴィヴィアン(Toto Vivian)、サーシャ・カールソン(Sasha Carlson)、二人の青年を中心に2012年、ロンドンで結成されたバンドだ。定期的に懐かしくなる、PeaceやSwim Deep、JAWSなどバーミンガムのバンド中心に広がった2012年〜2014年頃(?)のあのインディロックシーンの一部と同列に語られる様なバンドでもあるだろう。サイケとシューゲイザーの雰囲気を纏った軽快なロック、あの感じのバンドだ。

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『All I Wanna Do』は2013年にリリースされたファーストアルバム『Comfort』からの一曲。どこからか太陽の香りと、波のリズムが漂ってくる様。ペットサウンズのようなのんびり白昼夢的な雰囲気がファーストアルバムの一番の魅力と言えるだろう。

Splashh自体はロンドンで結成されたバンドだが、トトはイタリア生まれオーストラリア育ち、サーシャは生まれも育ちもニュージーランド、他のメンバーに関してもロンドンっ子は一人もいない。

ちなみにベーシストのThomas Beal はSplashh加入前にはRipchord(クークスやカイザーチーフス、ベイビーシャンブルズのサポーティングアクトも務めていたバンド)のメンバーとして活動していた。また、結成時のドラマーJacob Moore は2014年にSplashhを脱退し、スーパーオーガニズムの全身バンドの一つとも言えるThe Eversons で活動していた。

Splashhの1stが出たあの頃に僕が好きだったバンドに、二枚目のアルバムを出すのが遅かったバンド(テンプルズ)、解散するバンド(パーマヴァイオレッツ)が目立っている気がするのだが、実のところSplashhに関しては両方ともをしっかり踏んでしまっている。彼らは昨年やっと二枚目のアルバムをリリースし、今年ついこの前6月に無期限の活動休止に入ったところだ。昨年はアジアツアーで中国と東南アジアには行っていたが、日本には結局来ないままだった。

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昨年出た2ndアルバム『Waiting A Lifetime』は僕の中では圧倒的な傑作で、2017年新譜のランキングでは上位5枚に入るほど気に入っていた。しかし、親しい友人たちにすらSplashhの素晴らしさを伝えきれていなかった、挙句にアジアツアー日本すっ飛ばしからの活動休止だ。解散ではなく活動休止、いつか活動が再開された時には間違いなく来日してもらいたい。その為にも、今のうちに僕がSplashhの良さを語っておくべきなのだろうと勝手に責任の様なものを感じている。

やはり、1stアルバムの新鮮味で一気にファンを増やし、四年ものブランクを経て忘れられてしまったバンド、そんな風潮があるSplashhだが、彼らの音楽の一番美味しいところは1st以降だというのが僕の意見だ。転換期のいくつかのシングル、そしてギチっと締まったクールなバンドとして再出発した2ndアルバムには目を見張るもの、唯一無二の素晴らしさを感じる。

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例えば、上にリンクを貼ったPure Blue は『Honey + Salt』と題された2ndアルバムに収録されることを予定されていた曲で、エレクトロニカからの影響を色濃く受けているシューゲイズ。NMEのインタビュー記事によれば彼ら自身、1stアルバム『Comfort』の様な音楽に嫌気が差して(サーシャは自分のiTunesからComfortを消したらしい)、全く違う方向性のシンセベースのダンスロックを作りたいと言っていた。Air、コクトーツインズ、caribou、プライマルスクリームのスクリーマデリカなどの音楽を2ndアルバムの方向性の例にあげていた。

結局2ndアルバムとして予定されていた『Honey + Salt』はレコーディング途中(?)でスクラップされて、エレクトロニカ路線アルバムには収録されなかったが、僕の周りにいるSplashh好きの中で一番評価が高いのはこの『Pure Blue』のシングルだと思う。ちなみに『Pure Blue』のレコーディング時にはもうドラマーのJacobは脱退しており、この曲のみPeace のドラマーであるドミニクが参加している。

『Pure Blue』のシングルには、Pure Blue の他にもう一曲、Nobody Loves You Like I Do という曲が入っている。この曲は、昨年晴れてリリースされた2ndアルバム『Waiting A Lifetime』ツアーのセットオープナーほぼ固定曲になっていた。そしてセットクローザーはPure Blue だ。いかにこの2曲入りのシングルがバンドにとって大切だったかが想像できる。

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昨年、『Honey + Salt』改め『Waiting A Lifetime』という名前で遂にリリースされた2ndアルバムは、4年間の努力の結晶と呼べる様な素晴らしいアルバムだ。ボツになってしまった録音は聴けなかったものの、シンセベースのダンスミュージックを経由していることが曲の雰囲気から容易に想像できる。ちなみに『Honey + Salt』の直接的な名残はアルバム7曲目の『Look Down to Turn Away』などで顕著だ。かと言って1stアルバム『Comfort』の頃の彼らを象徴していた白昼夢のようなぼんやりと浮遊するシューゲイザーが失われた訳ではない。ゆらゆらと揺れる浜辺のような音は依然として背景を支配している上に、より高い解像度で楽しむことができる。

サウンド自体はシューゲイズ〜ガレージロックリバイバルという枠に入るが、明らかに他のインディーロックバンドとは違う曲の骨組みが感じられる、とても不思議な音楽だ。

Splashhは4年かけてアバンギャルドで挑戦的、そんな素敵なバンドに変貌した。そう言っていいだろう。

 

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上の動画はToto Vivian 自身が監督したSplashhの2ndアルバムの表題曲Waiting A lifetime のMVだ。結成から2ndアルバムが出るまでのSplashhの思い出を早送りにしたかのようなこのビデオ、発表された当時は4年も長い間、待った甲斐があった戻ってきてくれてありがとうと胸が熱くなった。

活動を休止されてしまった今このビデオを見せられると、本当に言葉が出ない、素晴らしい音楽をいくつもありがとう?ご苦労様でした?うーん、違う。いくらでも待つからこれからも期待してる、そう言うことにする。

無期限の活動休止という報告本当に寂しくなるニュースだけれど、確かにSplashhの音楽は『Waiting A Lifetime』で一つ完成形になったと言えるし、このタイミングで各々の活動に集中するのも間違っていないのかもしれない。冒頭にあげた通りToto Vivian の映像関係の露出で、今も音楽シーンと密接に関わって、それぞれの道で腕を磨いているとわかったし、気長にまたSplashhが動き出すのを待とうと思う。

バンドの公式インスタグラムによれば、近々『2ndアルバム制作時のelectronic influencedデモ音源』、要するに幻のアルバム『Honey + Salt』のデモ音源を無料公開する予定だそうで、当分はそれをおかずに飯が食えそうでもある。あまり悲観的にならず、不在の間に彼らが忘れられないよう、これからも積極的に素晴らしさを唐突にゴリ押ししていこう、皆で。

 

by Merah