Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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快進撃が止まらないD.A.N.の新譜「Sonatine」

みなさんどうも、ミヨシです。

フジロック、いかがでしたか?

僕は...

 

 

 

 

 

 

 

 

ベンチャー企業のオフィスで代表の飼い犬に吠えられながら編集アルバイトをしておりました。。。

 

いいですね、フジロック...この文章を書いているのは日曜の深夜なのですが、こちらは台風の直撃で風が吹き荒れ、ラマー旋風と負けず劣らずの久々の嵐の模様です。

と言っても今回はラマーの話ではなく、MGMTの前にレッドマーキーで素晴らしいライブを見せてくれた(らしいですね、僕はそう聞いております)D.A.N.の新譜について話そうと思います。

1stEPないし1stアルバムでクラブサウンドをバンド形式で解釈した音楽によって日本中のインディー好きを唸らせた後、昨年のEP「Tempest」で10分超の反復から生まれる陶酔感(それもクラウトロックのような胡散臭さはなく、洒落てクールだがアツい、不思議な感覚)を提示し、単純に音が洋楽っぽいだとかそういう次元ではない音楽を提示した彼ら。最新作も今までとはまた違った音をかましてくれています。

 

 

Sonatine/D.A.N.

 

 

ミニマムなジャケットなのは相変わらずだが、今まではサウンドのクールさを視覚化させるかのように寒色を前面に出した色彩だったのに対して、今回は真っ赤なジャケットである。実際、今までよりアグレッシブなクラブサウンドの要素が本作には現れている。

 

SEである1曲目の後に配置されたリードシングル「Chance」から、今までにない変化球に我々を驚かせる。出だしこそ従来のD.A.N.なら5分ほど経った時点であっさり終わらせるような曲のようだが、曲全体がクレッシェンドのように機能し、テンションが高まった瞬間、静寂の後に再び楽器が鳴り響く。EDMのドロップとは全然違うが、ここまで盛り上げに盛り上げるD.A.N.は斬新極まりない。

 

 

その後、「Chance」の新機軸はお試しとばかりに、3曲目の「Sundance」ではディスコサウンド風のベースのハネが我々を躍らすように煽り立てる。今までもベースリフが曲を組み立てている楽曲はD.A.N.ではお馴染みだったが、ここまでハネのリズムが強調された曲はなかった。しかし、ベースの路線変化はそれどころではない。曲名が彼ららしくない「Cyberphunk」では、SFチックな音作りの上にファンキーなベースが前面に出てきて、確信犯的に踊ることを強いてくる。今まではたゆたう音と心地の良い無機質なグルーヴが彼らの代名詞であったはずが、今回は間違いなくダンスアルバムなのだ。

 

しかし、決してそれはD.A.N.のアイデンティティーを捨て去ったわけではない。リズム隊の演奏を、冷たい音のシンセや誰かの声、SEが包み込んでいるのは今までのD.A.N.のそれであり、ただ踊れる素材を、はいどうぞ、と提示しているわけではない。クールだけど踊れる。

 

サカナクションのボーカル山口氏はD.A.N.との会話で「染みながら踊る」という言い回しが出てきたことに触れているが、まさにこのD.A.N.の新譜は「染みながら踊る」だ。パリピだけのものではない「踊る」ということ。曲に酔いしれながらも踊り明かす。そういった感覚がこのアルバムでは詰め込まれている。

 

www.cinra.net

 

上記だけでなく、「Pendulum」が従来のD.A.N.の曲のようで不穏なボーカルラインと歌詞が聞き手の心をかき乱したり、「Borderland」で突然山下達郎風の歌い方をしたり、他にも新要素はあるが、全体で特に印象に残ったのは、今まで以上にアグレッシブなサウンドであること、クールでありながら踊れるということの二点だ。

 

ところで、The fin.の新譜「There」が以前よりもビートや音像が明瞭化され、ライブバンド要素が強く出たことに僕の周りでは賛否が分かれている(僕は良い変化だと思うし、彼らの海外でのライブ活動へのハングリー精神を考えると必然的帰結だろう)。一方でD.A.N.は昨年末にミニマムな「Tempest」を出した後に、曲調豊かな「Sonatine」 を出すという振り幅のある路線転換を行いながらも、今の時点では目立った批判は見られない。洋楽志向のバンドとしてのブレイクの順番で新譜への期待の熱量の違いもあるとは思うが、D.A.N.の場合評価されるのは、デビュー初期の段階で、自分の音というものを固定させずにずらせ続けているからだろう。

 

元々スティールパンなども加えたサポートメンバーを含めた4人編成だったのが3人編成に、しかし音はかつてなく濃厚に。この妙こそが、D.A.N.が短期間でここまで上り詰めた理由だとして筆を置きたい。