ついに姿を見せた現代シューゲイザーの頂上、KRAUS
夏ももうすぐ終わりですね。フジロックもサマソニも終わり、何となくハリのない日々をお過ごしの方も多いのでは。
クーラーの空気ばっかり吸って、本当のクールが何かわかんなくなっちゃってる人は、是非この曲を聴いてみてほしい。スッと身体が醒めるはず。
これは2018年の新譜で僕が今のところ一番気に入っているマジで一番聞いて欲しいアルバム、
Kraus の『Path』からの一曲。(配色は悪いブログの書き方の見本を示しているわけではない。魂のゴリ押しの表れだ。)
巨大な白いカーテン、あるいは大きな滝のような轟音の向こうに聞こえるノイズ。脳に音として響く歌声、パワフルなドラム、圧倒的に最高なシューゲイズではないですか?醒める音。こんな美しい音楽、久しぶりに出会ったよと、聴いてはその都度言葉を失ってしまう。
ちょうどマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの来日公演もだんだんと過去になりつつあるこの時期に、もちろん彼らの音を超えるものと言うわけではないのだが、2018年にリリースされた最も素晴らしいシューゲイザーとして僕は是非ともKrausをオススメしたい。
こんなに素敵なシューゲイザー、それこそマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの3rdアルバム『m b v』以来だと僕は思う。こんなにヤバイ奴を皆さんに紹介しないわけにはいかない。
最近のシューゲイズ再ブームとは一際色が違うこのシューゲイザー、実はバンドじゃない。ウィル・クラウスという一人の若者のソロプロジェクトだ。パッと聴いただけではわからないと思う。ラップトップとかギターを使って寝室でごそごそ作られる類の音楽が、この方向性で素晴らしさを発揮することは多くないと思っていたから、僕もこのシューゲイズが一人の青年によって織りなされていると知った時衝撃を受けた。
今作の『Path』をSpotifyのリリースレーダーに勧められて聴くまでクラウスの名前すら聴いたこともなかったが、このアルバム実はボーナストラック付きで日本盤まで出ているらしい。『Path』はクラウスの二枚目のアルバムになる。2年前にリリースされたファーストアルバム『End Tomorrow』が耳の良い人の目にとまり、去年の時点でもうPitchforkで特集が組まれていたよう。前作は『Path』の数倍ローファイだ。ノイズと言って世の中が思い浮かべる音の中に細い呻き声が溺れていて、ただドラムだけは楽しいというような感じ。相変わらず気持ち良いのだが、これを毎日聴いていたら耳をダメにしてしまっていただろうし、『Path』のリリースを機にクラウスに出会えたのは幸運だった。
Krausの音楽はドラマチックな強弱のコントラストに頼らない、ほとんど強、基本的にずっと轟音、しかしどこか静けさというか寂しさのようなものを感じ美しい、そういう良さを持つ音楽だ。その辺もやはりマイ・ブラッディ・ヴァレンタインと繋がるのではないだろうか。モグワイやスロウダイヴとは違い、展開の張り具合の差、静と動のコントラストにはほとんど頼らずに聴者を非日常へいざなう。一気にL.C.L.に浸すような迫力と安心感、包み込むような素晴らしさだ。こんなことができるシューゲイザーはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインを除いて滅多にない。二十そこらのお兄ちゃんのソロプロジェクトにどうしてそんなことが可能なのか、これからが楽しみで楽しみで仕方ない。
シューゲイズムーブメント当時のライブ音源とか映像に触れるたび、僕はいつも「ドラマーの人、走り気味になってまで無理してギターの音に張り合おうとしてない?ドラムなんか別にメインじゃないんだから聞こえていなくても構わないのに」って思っていた。しかし最近、僕は自分の考えが間違っていたことに気づいた。シューゲイズという音楽にとって、気合が入りすぎたくらいの強いドラムは、エフェクター越しのギターと同等に大切であるべきだ。生のRIDEを、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインを見てますますそう思うようになった。
以下はクラウスのライブ映像だ。
クラウスのライブ映像でもやはり、くっきりしているわけではないノイズの中を、ドラムだけが鋭く突進するように響いている。やけに素敵な目立ち方をしながらドラムをめちゃくちゃに叩いている若い男性はウィル・クラウス本人。
このドラムが、クラウスという独りミュージックを最高の物に仕上げている。彼はまさに理想中の理想と言えるシューゲイザーだ。
ピッチフォークのインタビューで、クラウスは「あなたにとってドラムを叩くことはカタルシスなのか?」という質問にこう答えている。
もちろん。だからこそ僕はドラムが大好きなんだ。どちらかというと僕はドラマーというよりは作曲家って感じだけど、僕が一番コネクトできる楽器はドラムだ。自分の内側を表現する手段として、著しく制限された方法を用いるのは何となく素敵だよね。
音楽はとてもセンチメンタルなものだけれど、同時に荒々しい力も備えている。僕にとってライブ演奏の良さはそこにあると思う。人はただ「Fuck It !」と僕に求めるだろう、ドラムはその声に応えられる偉大な道具だ。
最近はギターを弾きながら歌う曲が半分くらいを占めるようにはなってはきたものの、未だに曲ごとにはドラムを叩きながら歌っている。いくらネットで検索しても、音の良い動画がほとんど出てこないない現状だ。しかし、視覚から伝わってくる勢いと、どうしても音が悪くならざるをえない会場での音量を考えると、僕は早くクラウスをライブで見てみたいと思う。
確か、『Path』がリリースされてしばらく経った頃に、DIIVのコールとその彼女、Launder、Deafheavenのジョージという面子がKrausのライブに行ってる動画をインスタストーリーで見たし、その直後にコールがこのアルバムめっちゃ良い!と珍しく『Path』のジャケをスクショしてストーリーに投稿していた。もちろん、僕は近い将来に「Deafheaven / DIIV Japan Tour with special guest KRAUS」があればなあと期待してる。実際にそんなイベントが決まったら、必ず諸君は「マジ前座なんかいらねえよう!」と口々にツイートするだろうし、今のうちにKrausをとにかくゴリ押ししておきたい。本当にシューゲイズ好きな人みんな聴いてください。日本盤五枚ずつくらい買ってください。
by merah aka 鈴木レイヤ