Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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「ソナチネ」の凄み

「北野武」と言われてあなたは何を思い浮かべるだろうか?

 

活動歴の長い人物であるため、人によってイメージはまちまちだろうが、概ねビートたけしとしての破天荒な人物像を想定するところではないだろうか?

自分もその一人で、ふとした気まぐれで彼の監督作品「ソナチネ」を見るまでは芸人としての彼を認識していた。しかし、「ソナチネ」によって彼への印象はガラリと姿を変え、カミソリのような感性を持った強烈な個性の持ち主として彼を見るようになった。

以降、彼の作品を見ていくにつれ、日本人の多くは彼を誤解しているのではないかという疑惑が確信へと変わっていった。間違いなく彼は一流の映画監督であり、そしてパブリックイメージでは想像もつかないレベルの暗愁の持ち主である。彼の死生観は「自殺はもってのほか。命を大切にしよう」「人の命は皆平等」といった綺麗事とは真っ向からぶつかる劇薬で、そんな人間がスタジオでバカやって周りの若い芸能人を困惑させているのである。

 

今回は、自他共に認める最高傑作である「ソナチネ」の解説を中心に、彼がいかに特異な才能の持ち主であるかを浮き彫りにし、欧米志向のサブカル好きからはやや等閑視された現状へ異議を唱えていこうと思う。

 

 

 

 

 

まずは「世界のキタノ」という称号の説明に遡ろう。

実は、「世界のキタノ」と呼称されている「世界」とはハリウッドのことではない。ヨーロッパである。ヴェネツィア国際映画祭では金獅子賞を獲得し、カンヌにも出品はしているが、アメリカの方向での売り込みはあまりなされていない。

「「世界のキタノ」と言っても、少し海外で受けたのを日本のマスコミが大げさに取り立ててやいのやいの言ってるだけで、ハリウッドにまでは受け入れられなかっただけだ」と言ってしまったらそれまでだが、北野武自身、ハリウッドの分業体制=監督の権力の弱さをあまり良く思っていないことを度々明言しており、そしてなにより、作風がヨーロッパのアート気質なものに近い。一々やたらと長いシークエンス、時折挟まる抑揚のない会話、断片的にしか何が起こったのか示さない演出。

作品を重ねるにつれてアート要素は薄まり、「アウトレイジ」サーガに至ってはもはやただのヤクザ抗争映画に成り下がった(僕は好きです)が、初期の彼の映画は尖りすぎていて、興業的に失敗しながらも、評論家内で絶賛されるという、芸能人のアーティスト気取りの産物とは正反対の結果を生み出している。そんな彼の最高傑作が「ソナチネ」である。

 

 

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この画像だけで、なんとなく非商業的な香りを覚える方もいるのでは

引用元:cinematerial.com

 

あらすじ

北島組傘下の村川組組長の村川(ビートたけし)は北島組幹部の高橋(矢島健一)の命の元、沖縄の阿南組と抗争している友好組織の中松組への手助けを命ぜられ、子分のケン(寺島進)や片桐(大杉漣)を引き連れて石垣島へと向かう。到着早々阿南組に襲撃され、一行は用意された隠れ家へと身を潜める。手助けといっても出て行けば襲われるので特にすることもなく、村川は近くの浜辺で男に襲われていた女、幸(国舞亜矢)をチンピラから救ったのを機に交流を深め、ケンは阿南組の良二(勝村政信)と意気投合し、退屈な時間を浜辺で潰し、一夏を過ごすのだが、そこにも殺しの手は迫り……

 

…これだけ読んで心が惹かれるだろうか? びっくりするぐらいありきたりである。実はここまでフツーな話を用いるのはキタノ作品では結構あるあるで、彼の強みはシナリオそのものの独自性ではなく、いかに普通の話を再構築するかというところにある。

そんな彼の再構築の特異性を見ていこう。

 

 

徹底的なミニマリズム

 

 これはキタノ映画のほぼ全般に言える特徴だが、彼の映画は最小限の事実で最大限の情報量を語る。

以下の動画にあるが、彼は映画の撮り方について、対局後の駒の配置を見ればそれまでの戦いがどういうものだったか分かる将棋を引き合いに出し、1つの絵でそこまでの過程が見えてくるようにを撮るべきだと主張している。商業映画にありがちな、「黒幕が主人公の見えないところでほくそ笑む」「頼んでもないのにやたらと解説する敵役」といった分かりやすい演出はなく、いきなりズバッ、あるいは間接的な行動で全てを伝える。

そういうわけで、キタノ映画はぼーっと見ているだけでは話が大して進まないので地味だな、と思っていると一気に展開が変わる。その手の映画に慣れていないと不親切な演出なのは確かだが、長閑なシーンから一瞬で血の海に変わる様は見ものである。

また、シークエンスに限らず俳優の演技も同様にミニマムであり、ヤクザ映画の売り言葉に買い言葉な展開はこの時期のキタノ映画ではほとんど見られない。組への上がりの支払いを渋る雀荘店主を村川が恫喝する冒頭のシーンが例として分かりやすいが、「テメェ殺すぞ」だとか「バカはテメェじゃねえか」だとか不穏な言葉が飛び出てくる割に口調は淡々としていて、怒声でとりあえず観客の気を惹くという意図はゼロである(この喋り方は彼のヤクザ稼業への倦怠感を示す演出でもある)。そもそもセリフ量自体、初期のキタノ映画ではかなり少ないが、演技に関しても大根演技かと思うぐらいに抑揚のないfセリフなりアクションなりが特色である。それも全ては映画全体の濃淡のために仕組まれた演出の1つである。

更に言うならば、彼の決め台詞「バカ野郎」の使い方もうまい。バラエティー番組でビートたけしとして使っている以上に、キタノ映画では「バカ野郎」が連発されるが、場面場面でそのニュアンスは異なる。本当に相手を罵倒する「バカ野郎」だったり、相手に親しみを込めての「バカ野郎」だったり、非常に感動的な「バカ野郎」だったりとその意味合いは多岐に渡る。これも彼のミニマリズムが活かされている好例だ。

 

 

「キタノブルー」と色彩感覚

 

「キタノブルー」はキタノ映画に触れたことがない人でも聞いたことがある人は多いだろう。 ソナチネは夜の場面が続いているため、他のキタノ映画よりもかなり暗いのだが、他の作品でも彼の用いる青は従来の青より暗い。「夏の空」「海」などの生き生きとした「陽」を表す方の青ではなく、どちらかというと「静脈」「血の気の引いた顔」といった、静謐で「」を表す方の青である。

それを象徴するかのように、キタノブルーの炸裂するシーンではよく殺人が行われる(全てのシーンでではないが、本作ではとりわけ顕著である)。夜明け前のようでいてどこか非現実的な明るさは、此岸と彼岸を繋ぐ生死の境目の世界を思わせる。

また、どこかを歩く長回しのシーンでもキタノブルーはよく見られるが、彼の徒歩シーンは大概場面と場面の繋ぎ、つまりは緊張と緊張の合間の弛緩を促す境界的役割を果たす。そこにどこか醒めた色合いのキタノブルーが差し込まれることで、彼らがどこか遠い世界にいることを匂わせ、映画の中では比較的現実世界に近いシーンであるにも関わらず、幻想的で退廃的な空気を漂わせる。

まさにミニマムかつマキシマムな情報量を有した演出技法である。色彩を演出に用いるのはゴダールなどにも見られるテクニックではあるため、彼なりのオマージュの一環とも言えるが、固有名詞を産み出すほどの絶妙な青みは、彼オリジナルの演出方法と言っていいだろう。

 

この予告編でも一瞬だがキタノブルーを確認することが出来るが、闇へと飲み込まれそうな色合いの青である。

 

劇的な演出

 

前述した二つの特徴を更に展開して言うと、本作ソナチネはとりわけ強烈な演出が目立つ。

下に貼った動画で抜粋されているのは、村川たちに堂々と歩み寄ってきた殺し屋が村川の子分のケンを殺して悠然と去っていく一部始終を、なんら装飾的な演出をすることもなく淡々と映しただけのシーンだが、ここでも彼のミニマリズム、色彩感覚は縦横無尽に駆使されている。

それまでの流れを解説すると、阿南組からの襲撃以降、村川たちは隠れ家に案内され、近くの浜辺で「ぼくのなつやすみ」よろしく子供じみた遊びを延々とやっている。ヤクザであることを忘れたかのように遊ぶ彼らを淡々と映す映像が続き、間延びしまくりにしまくった挙句、この突然の銃声が常夏の浜辺の空気を切り裂く。

キタノブルーとは違い、石垣島の空と海という生の源である「」を背景に、子供から大人への順当な成長に失敗したヤクザたちが、現実逃避の歪な「」の空間で遊んでいる。そこに前触れもなく殺し屋が侵入し、一筋の「」とともに「」がもたらされる。

この動画だけだと不可解なまでに動かないケンと村川のリアクションに疑問を持つかもしれないが、本編をここまで見てきた人間は、ほのぼのとした遊びに長々と興じてきた彼らと同様に突然の死の香りに対処できない。無邪気に遊びに興じる中盤のシーンは、間延びと見せかけて実はここでのインパクトを強めるための伏線だったのである。

他にも、全編で活躍する久石譲の音楽がここぞという山場で霧散消失したり、バイオレンスの中に笑いを仕込んだりと、急激な変化、強烈な対比を示す演出によってキタノ作品はトラウマ級のインパクトをわれわれに植え付ける。

 

 

 

 

虚無的な死生観

 

これこそが「芸人がカメラ持ってる」という認識を打ち砕く決定打だと思うのだが、彼の初期作品、特にソナチネまで=バイク事故で生死の境を彷徨うまでで見られる死生観は、思わず唸ってしまうぐらいにニヒルで醒めている。

劇中で、村川が幸に向かって「あんまり死ぬの怖がってるとな、死にたくなっちゃうんだ」と表面的には矛盾した発言をしているが、まさに初期キタノ作品を象徴するセリフだ。彼らは誰かを殺せば殺すほど、自分も死の側に引き摺りこまられていることを自覚し、恐怖を覚えるのだが、あまりにもグッと近寄ったせいで、逆にその暗がりに魅了されている。どす黒く汚れた人間である自分をも包み込むことができる暗黒の「死」。

 

フロイトでいうエロスとタナトスの構造がぴたっと収まる。人は生に対する欲望を持っている一方で、死に対しても積極的な姿勢を心のどこかでは持っている。

死にたくないけど、死にたい

圧倒的な矛盾が、赤と青、綺麗な青と薄暗い青、幼児性と死といった対比の中でグロテスクなまでに鮮やかに描き出される。否、「死」の強大さの中では全ては帰納されるのだ。

彼はこの映画に対して「死を通して生を描こうとした」と説明しているが、主人公の死に向かって生き続ける様は決して命の尊さだとかそういうものを語るのではなく、死をすぐ隣にただ存在するものとして物語る。キタノ映画は大体主人公のビートたけしが自殺にしろ他殺にしろ死を迎えて終わるが、それは信賞必罰や死刑論者のような「殺したのだから死ぬべき」というような単純な話ではなく、「あまりにも死に近づいた生者は死者と紙一重」というメッセージを有しているように思えるのだ。

言葉にするとどうにもまだるっこいが、このニヒルな死生観を彼はわずかなセリフと研ぎ澄まされた演出で表現する。このセンスたるや、日本人監督が珍しく海外でウケたとかそういう次元の話ではない。

 

 

 

以上でソナチネをメインとしたキタノ映画の素晴らしさのプレゼンはおしまいである。

ちなみに本作はそれまで作ってきたキタノ作品があまりにもアート気質で、業界人以外からは黙殺されてしまい、最後にやりたいようにやってそれで売れなかったら映画業は終わりにしようという気持ちで作っただけあって、全く客が入らなかった。

その後、バイク事故で死にかけたのを境に作風が生に近寄るのだが、事故直前は、プライベートな問題に加え、映画が世間的に認められないことへの鬱憤で一種の鬱状態になっていたらしく、この「ソナチネ」を作っていた頃、主人公の村川と同じく、北野武自身もかなり死に取り憑かれていたのではないかと思うと、ゾッとしたものがある。

言わば逃亡に近い石垣島ロケでの楽しそうなメイキング映像を見ていると、歪な「生」とは当時の北野自身を取り巻く状況のことだったのかもしれない。そう考えると、撮影後のバイク事故から生還したのは奇跡と言っても過言ではないだろう。

退廃の匂いが漂う「ソナチネ」は、撮影者自身の幻影でもあり、撮影者を蝕む恐るべき死への誘いでもあった。その上でこの作品を見ると、我々が対峙するものは、1文化作品が提示するものとしては手に負えないぐらいに強大で深遠なる闇であることに気がつくだろう。

2018年のよく響いた音楽、まとめ by merah

前の記事

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この記事では今年のよかった新譜、曲をざっくりジャンル?、聴く層ごとにコメントなどつけつつ紹介していきます。

曲ごとにごんごん羅列してゆきます、ジャンルは僕がはっきり自信をもって話せるものと、ジャンルどうすればよいかわからないがとにかく勧めたいもの、とかなりジャンルのわけ具合に問題があるかもしれませんが、ホントにジャンル分類のあれこれに疎く、今回は堪忍な~

 

open.spotify.com

 

シューゲイズ好き必聴アルバム

文句なしに今年一番凄かった。

 

レジスタンス、感情の叫びである。破壊的と一言に済ませるのは何か足りない気がしてしまう。超常現象のようなノイズです(ダサ)

 

ポストパンク要素あり、お気に入りなので多少ひいき目かもですが、シューゲイズにしては相当シュッとしててカッコいいですね。主観ありきで話すなら一番お気に入り。シューゲイズ好き以外には、対して価値がない気もして、ランキングから蹴り出してしまいました。ごめんなさい。本当に好きなんですけど。

 

異端、相当カッコいい。デフヘブン、DIIVからお墨付き。

 

凡庸と紙一重な、一番難しいところで天才として成立しているからすごい。

 

スリーベースヒット。メガ・ロマンチック・ブラックゲイズ。

 

21世紀シューゲイズの黒幕、現代のジョイディヴィジョン、現代のソニックユース兼任。APTBSの一番いいアルバムはまた軽々と塗り替えられました。

 

かなり良い曲揃い、一聴の価値あり、アルバム通しては聴くと飽きます、そういうバンドではないので仕方がない気がします。何度も再生してしまう。

 

ロシア、シューゲイズ、相変わらず素晴らしい。Pinkshinyultrablastを知っているシューゲイズ好きにとって真新しいものはないかもしれないが、Pinkshinyultrablast大好き人間には美味しすぎるアルバムですし、着実に進化してるのがありありとわかる。来日公演もよかった~

 

日本のシューゲイザー、かなりしっかりと本当にシューゲイザー。

 

急激に成長し続けている。ポストパンク、ガレージロック、多少ゴスい。またソニックマニアで観られる日も、遠くないのではないか。 

 

エレクトロニカ

ジャズなど、民族音楽など、ルークアボット主催のプロジェクト。

 

2018年宇宙の旅。

 

イキイキとおどってしまう。

 

言わずもがな

 

来日公演いきたかった。安定の良。

 

ちょけてるのとまっすぐかっこいいの半々。

 

これ誰すか?めっちゃええやん。ビビる。調べます。凄い、びっくり良い。

Huerco S. って人の変名らしい。NYのプロデューサーだそうです。良い。

 

おサイケデリア

 

天才。7という数字を再定義した一曲。

 

多分ふざけてる。

 

尖ってる、カッコいい。これからロックが進んで行く道というのはいくつかあるが、僕がついていく方角は彼らの眼差しの照らす方角でもある。

 

ドサイケ、ストーンナー。ブリブリのサイケが好きかもと言う方は踏み込んでみると面白い世界があるかもしれない。

 

ライド的ネオサイケデリア。

 

ドイツのバンド。カッコいい。ちょっとプログレ、ポストロック感もあり。このアルバムを機に来年以降追っかけて行こうと思う。

 

日本のクラウト新鋭、南ドイツ、カッコええ。サイケシーンを盛り立てていくであらうバンド。

 

フォーク、ポップス、シンガーソングライター系(なんていうかわからん)

ただただ曲の良さで気に入るもの、歌詞が良いものなどごちゃっと羅列。マジでジャンル分けが難しく分からずあきらめたものたちです。

 

みんなが聴いてほしい、そしてみんなで幸せになろう。

 

勇気がめっちゃすごい。どこへともなく踏み出してしまう。元スーパーグラスのギャズクームス、スーパーグラス時代より今の方が作曲者として素晴らしいのではないか。

 

ステルス名盤でした。ナードな見た目なのにアーティストからもメディアからも気に入られ、幅広くファンを持つジャズグループってだけじゃなく、キーボーディストはインディロック的才能にも恵まれておりますのは流石に怖いもの何もないのでは。

 

まだそこまで聴き込めておりませぬが、これはかなり好き。これはちょうど一か月前に、フォーテットの公開しているプレイリストから見つけてきたのですが。あのプレイリストには、どうやら良いと思ったものをとりあえず突っ込み続けているようです。かなり選曲の趣味が合います。

僕には、フォーテットのプレイリストが新譜漁りに最も効率的な場所かもしれません。ちなみにこれです↓

🎄🌏🎄🦑🎄⏣🎄☉⦁🎄 ☉⦁🎄 ⏣🎄 ͞ ͞🎄 ⃝ ͘🎄 ͞ ͡⃝ 🎄 ཀ༼ༀ༽🎄ཫ་῍̩̖̬ ̎ ̎✧🐝🎄💽🐝💽🐝 OO🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄 on Spotify

 

ジャケも可愛いよね。

 

元マイクロフォンズ、フィルエルヴラムのソロプロジェクト、Mount Eerieのアルバム、相変わらず音楽の水準は高い。

また、この作品のコンセプトには、彼の奥さんの死の事実がある。しかも、その感情は、つらいつらいと泣いているようなものではなく、幸せな過去を思い出す暖かい悲しみである。The Microphones の Glow Pt.2 は後ろ向きな人間に寄り添い共感するような音楽だったが、この作品はそのような人に細やかな希望を教えてくれる。彼の姿をみて、勇気づけられる聴者僕自身を見て、亡くなった奥さんが如何に素敵な人だったかが想像できる。

 

かなり明るく、快活になったけど、尚近くにいる。心強くなった気がする。

 

北欧のどこかの女性、フォーテットがリミックスしてて知った。良い。あと、憧れちゃいがちな青春映画系の世界観も良い。

 

何年も待たせた挙句、この出来ですか?と初めはあまり刺さらなかったが、何度か聴くうちにすごく凄いアルバムだということに気づいた。やは、好きすぎるバンドに違いなかった。ありがとうございました。

 

ビーチハウス未だ全然ハマれず、この機会にと思い幾度目かの挑戦だった。初めて少し好きになれた。この曲が好き。嬉しい。これからも挑戦は続く。

 

良い、ライ。またライブ観たい。

 

ロックとして今年の名盤を見た時、

インディーロック/オルタナティブロック(死語)など、とにかく全体として見た場合の必聴アルバム、どうやら僕にとってアツい場所が他とズレている可能性について今年はよく考えました。アンテナの張っている向きがみんなとずれていただけだと思います。受信の強さはかなり感じた一年でした。

 

今年、絶対見逃しちゃいかん一枚なのに、完全にステルス名盤と化している、誰にも気づかれていない。意味わからん。頭おかしい。絶対聴いてくれ。マジで今年のインディロックシーンで一番刺さったアルバム。

 

これまたインディロックの新しい顔ですね。裏USインディという言葉の生まれつつある気配、またこのバンドが勢力を広げていくのではないかとの期待もあり。

 

今年で会った良いバンド、

 

最初、正直全くピンとこなかったんですけど、多分その時デカい耳クソでも詰まってたんだと思う。何度も聴くうちに良さが染み出して、厚い空気をノコギリのように削るギターがくせになった。シューゲイズ要素あり。ヘッドホンで聴くとモグワイなみに気持ち良い。

 

日本のシガーロス枠というと、安っぽいが、静かで凶暴で、アポカリプスが匂う、危ない音。

 

The National のSleep Well Beast、Muse のDrones が中途半端にやり切れなかったことを完成させた。

 

ジャズ、フュージョン(厳密には違うらしい)、デヴィッドボウイの最後のアルバムのバンドに居た人の作ったアルバムなので、あのアルバムに漂うどこかピリついた空気感なんかを共通に持っております。ミヨシ君から長い文あり↓

★を継ぐもの - Apollo96

 

2018年の顔。

 

ちょっと良。

 

ストロークス感かなり強め、全体的に楽しめ、ライブも最高だった

 

コンテンポラリぃ。ニューヨーク出身若手。シーンの今後にワクワクする。関連バンドとかだとOughtとかが出てくる。APTBSの前座を多分していた。

 

DIIV、Day Wave 参加、LAの新人。

 

聴いといた方がいいです。

 

ポストロック好きに聴いて欲しい

映画を観るまで手を付けない習慣が最高な映画体験を導いたと言っても過言ではありませんでした。今年観た映画で最も素晴らしかったものはCall Me By Your Name、その次がKINでした。どちらのサウンドトラックも素晴らしかったのですが、KINにおいてはサントラが完全な書下ろしであり、そのお陰で映画のストーリーの新しい冒険の感触は強調されました。KINはただのSF映画ではなく青春群像劇である、サントラがなくとも素晴らしい作品だったでしょう。しかしモグワイのサントラが加わることで、そのストーリーは語られない物語、見えない世界設定への想像をも補完されたように思われました。

 

全然聴き込めてない。ピンときたのでメモしていた、忘れないようにここに書いておいてメモは消します。

 

そもそもこのバンドとの出会いがポストロック談義の延長にありました。タイで、デスクトップエラーというシューゲイズ/ポストロックバンドがございますが、そのメンバーの一人と会話した際に知ったバンドでした。「日本にはいいポストロック系のバンドがたくさんいるじゃないか、素晴らしい。Toe や、MONO、Boris、Envy、あとはコーネリアスも素晴らしい。そうだ、最近だとRoth Bart Baronも素敵だ」僕はタイ人のロックミュージシャンに日本のバンドであるコーネリアスとRoth Bart Baronを紹介され初めて知ったのか、と感慨深かった思い出があります。Roth Bart Baron を何故彼が知っていたのかは分かりません。ポストロックという観点から聴き始めた場合、コーネリアスにはあまりハマれず、Roth Bart Baronには衝撃を受けました。前よりはポストロックらしさが薄いかもしれないですが、そう思って聞けば、おぉお!!となるはず。

 

この曲に特にハマりでした。

 

好きなバンド、このアルバムはまあまあ好きけど前作の方がまだ好きかも

 

 

誰?ってなるかもしれないですけど、マジでググってもインスタグラムしか出てこないです。めっちゃ良いけど、無名の兄さんが黙ってやってるだけで、ツアーとかもなさそう。かなりいいけど。

 

 

 

じわりじわりとドラマチックに広がっていく、大作。

 

羊文学 Fear Satan

ポストロックは良いアルバムがたくさん出てるなぁと思いつつも、普段の日常にあまりポストロックを聴きたくなる瞬間がなく、幾度となく再生されたのはモグワイのKIN(それもサントラとして)のみでした。気分とは大事ですな、やはり。紹介はしたものの、正直熱く語るほどに聴き込めていないとも言えます。

 

 

 

 

 

 

 

以上です。長々と読んで下さってありがとうございました。

 

今年は、蓋を開けてみれば、周囲が年間ベストアルバムと列挙しているものがほとんどわからないという状況になっていたという年でした。マジで一度も聴いてないってのかなりあった気がします。

理由はいくつか考えられます。

まずロック流行ってないという事実です。

二つ目はTwitterを変に使っていたことか。やはり、音楽というものに勝ち負けというものはないはずで、優劣に関してもほとんど考えたくはない。個人的には、好きか嫌いか、合うか合わないか、くらいの指標で聴いていたいという思想があり、とにかくバカになって聴きたいと思っていた年でした。

そう考えてると年末の各誌のランキング競争、ジャンルごしに優劣を示したがる傾向に意味があるとは思えないし、挙句に知識量チャンバラ界隈なども現れ始め、度々一歩引いてしまう。人それぞれなので文句をいう訳ではないが、自分とは合わないななんて、そういうことを良く感じる一年で、聴く者同士で競う状況は、なんとなく滑稽であるようにも思えて。

それで周囲と何となく距離を感じがちになっていたのでしょう。ずれが生じた最大の原因です。

意識的に、Twitterなどから音楽の情報を得ることができない環境を作っていたと言えます、そうなればこう、知らないうちに周りからどんどんズレて行ってしまうのは当たり前でした。気づいたら感性までずれていたかもしれないと思います。

どうやって聴いてたかって言うと、好きなバンドが属してるシーンをやんわり追ってみたり、KEXPとかKCRWの外国のラジオや雑誌で好きなアーティストの今年ハマっていると言ってたものを調べて流してみたり、スポティファイがくれるおすすめプレイリストにすすめられるまま聴いたり、口伝えに友人に勧められたものを聴いたりって感じでした。

まあ、しかし、年間ベスト、ランキング発表の流行りに乗らないことには、自分がせっかくハマったもの、推したものがスル―され、来日ノーチャンバンド認定されてしまうだけですし、最終的にはこの時期気になる人のランキングを参考にするだけして終わりなのは食い逃げのようでよろしくない気もする。

慌てて客観批評比較モードになってランキングを制作しました。寝込んでいる時期にたっぷり時間を取って作りました。やって見れば、やはりそうするのも楽しいことではあります。共感したいものを聴いていただけるなら何でも良いですし、ランキングを嫌がらないのはそういうことです。八方美人の亜種みたいな立ち振る舞いです。

このブログのもう一人は、かたくなにランキングをつけませんが、その潔さに憧れたりもしながらこの記事が完成されましたので、このようにランキングに対する意見も自分なりに述べたわけでした。

 

 

まあ、それでは、よいお年をね。

来年も頑張りましょう。

 

 

 

by ㍻最後のmerah

2018年のよく響いた音楽、厳選ベスト16、他  by merah

絶対に聴いてもらいたい音楽を厳選して選びました。

今年もやっぱりトレンディでもファッショナブルでもない。ただ、素晴らしいものをたくさん見つけた一年だった。

去年も同じような記事を作ったが、その反響が予想以上だったのもあり、今年はそれなりに気合いを入れて書いた。(長い)

 

まず初めに、紹介する順に曲が並んでいるプレイリストのリンクを貼っておきます。

これを再生しながら、スキップしたりして良い感じに聴きながら読んでもらえると幸いです。 

 

前もってツイートした四十枚全て、決して聞き逃してほしくない重要アルバムと思っているのだが、忙しい人に「寝る間を惜しんで聴くからもう少し減らしてもらえないか」と頼まれたらと考え、まず16枚にまで熱心に泣く泣く厳選した。

この16枚に限っては、読者の要望に沿いランク付けした。基準は「どれだけ心に響いたか」だ。 レビュー付きです。

ベスト16以下は、もう一つの記事にジャンルごとに分けて短いコメント付きでまとめているのでもっと気になる人はじっくり読んでもらえたらと思う。40枚のまとめ画像は気にせずたくさん良かったものを並べてみたけれど、読みづらくなかったら良いですけど。

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僕からは多分、これが今年最後の記事になりますかね。それでは、ぼちぼち行きましょう。

 

 

よいしょ、

 

 

 

16〜9位

今年は新譜を意識して聞こうとしていなかったが結局聴いたもの全てを数えてみるとそれなりの数になった、その中でのベスト十六である。結果的に去年より多くの良い作品に出会えていて、この16枚はマジで全部死ぬほどよかったです。。

 

16位 LOVE / ADOY

www.youtube.com

このバンドは2018年だなぁって感じがすごくある。韓国のインディーロックだ。カッコいいし、可愛いし、力の抜け具合も完璧、その上オシャレと来ている。最近の日本のインディロックの傾向に近いものもあるので、流行りそうだ。そのうち来日もあるかもしれない。良いインディーロックだ。流行らなかったらごめんなさい、でも流行ると思います。これはだって良いんですから。

 

 

15位 Song For Alpha / Daniel Avery

www.youtube.com

エレクトロニカ、テクノ、アンビエント、その辺りにまたがってDjによりプレイされる音楽は夜にフェスやクラブで聴くだけものでもないのかなと、このダニエルエイブリーのセカンドアルバムを聴いて思った。

というのも、今まで聴いていたものはアルバムというストーリー前提でライブを楽しむもの、あるいは逆に生で聴いて踊る楽しみはどうしても再現できないがイメージで補完しながら録音を楽しむもの、そのどちらかだった。要するにアルバムがアルバムとして成立しているものか、どうしようもなくライブありきの録音か。

で、本作品『Song For Alpha』はどちらなのかというと、明らかに前者ではない。

しかし後者でもない、実際にセットを見たことがあるわけではないが確かに後者のものでもない。

何かというと録音されているものなに、すぐそこで今プレイされている音楽を聴いているような作品だ。生き物のようにテクノが、アンビエントに絡まりあって、手に取れる距離で鼓動蠕動しているような、ライブ感のあるアルバムとは待ったく違うが生きているアルバム。音の中に歩いて行っている感じで。もう上手く言えないけど良い。

DJセットならどのような感覚がするのだろうか、永遠に聴いていたいことはまず間違いないだろうし、より催眠的なにかが期待される。彼のロングセットの評判を聴く限り、絶対ヤバイ。

 

14位 >>> / Beak>

www.youtube.com

ネジが全部外れているので聴いていてふらつく。このアイロニックなサイケポップはポーティスヘッドのJeff Barrowが率いるBeak>のアルバムだ。

ファーストアルバム『Beak>』は完全なクラウトロックだった。前作『>>(Beak2)』は何かと聞かれれば電子音楽だと説明できた。前作でBeak>を好きになった自分は、今回『>>>』の路線に度肝を抜かれることになった。今までやっていたよく分からないアングラな何かぐにゃぐにゃした奴を、まずインディロックの体裁を取った上で表現してきたのだ。かつてのようなテクノ的な要素が前面に出ている曲も確かに存在しているが、それもあるせいでどこにBeak>の本体があるのかが完全に分からなくなってしまった。

どうなっているんだ?としか言えないが、いいアルバムだ。いいアルバムだが、いつ聴けばいいかは分からない。ポップ風でインディロック風だが、それは形だけで、聴き心地は全くそれではないからだ。本当に気持ちが悪い前衛音頭。気持ち悪いが傑作だ。

ちなみに上にリンクを貼っている曲は、ちゃんとそれなりに聴きやすい。こういうちゃんとマトモにいい曲にだけMVを作るのってズルいと思う。エロDVDのパッケージ詐欺と一緒。

 

 

13位 Singularity / Jon Hopkins

www.youtube.com

これはコンセプトアルバム、2018年宇宙の旅かもしれない。

シンギュラリティとは特異性を意味する言葉だ。

エメラルドスプラッシュはジョジョの奇妙な冒険 第3部に登場する花京院典明のスタンド、ハイエロファントグリーンの必殺技だ。

とにかく、曲名をみるだけでも脳内に物語が広がるだろう。無機質な世界に広がる鼓動がやがて繋がり、宇宙に最初の生命が生まれ、やがて光る生命体が登場する。この物語は聴いてみるともっとハッキリと、とても美しく繋がる。映画の様である。

ブライアンイーノやコールドプレイの様な、現代の音楽シーンにおいて特別コンセプチュアルな人間たちと関わり続けている彼だからこそ作ることのできた作品なのかもしれない。ここまで具体的なイメージの湧くエレクトロニカはなかなかない。

 

 

12位  Felt / Suuns

www.youtube.com

インディロックにしては尖りすぎたカナダはモントリオール出身のバンド、Suuns。アートパンク、クラウトロック、ネオサイケデリア、彼らを形容するジャンルは余りにも幅広い。そしてそのアイデンディティがこれまで方々に散らかっていたのも確かだ。

今作でしっかりと、分かりやすいSuunsの姿が明示されたと言えるだろう。シンセサイザーの音がバンドのドロドロとした脆い世界をまとめ上げている。一番マシな入門編にして、文句なしの最高傑作だ。

個人的にはポストレディオヘッドと言ってレディオヘッドファンが嫌な顔をしない唯一のバンドであり得るかもしれないと、強く感じている。そして、この壮大さを目の当たりにしたのは今作が初めてだった。気づいた日にはついハッとしてしまって。

何を隠そう僕は圧倒的に最も好きなバンドはレディオヘッドである。

ちなみにだが、レディオヘッド信徒であると同時に、僕はかなりイタめのThe 1975のファンボーイでもある。こんな自分でもレディオヘッド信教の自我が勝ってしまい今年のThe 1975 の新譜の感想を読んだら「レディオヘッドの真似をやってんのは分かるし共感するけど、現代のレディオヘッドだとか、21世紀のOKコンピュータと称されるにはさすがに遠く及ばないんじゃないかな。あるいは21世紀のOKコンピュータがあったとしても、それが20世紀のOKコンピュータに比較されうるものになるはずはないよね。好きだけど」と思ってしまう。(この記事ににThe 1975の新譜が入っていないのはこれとは関係なく、一か月弱ではアルバムが自分にとって実際どの程度を意味するのかを測り切ることができないからである。その為にわざわざ一つ単独で記事を書いた)

まあ、とにかくそれだけレディオヘッド云々の話には斜に構えて向かってしまう自分でもこのバンドにはそれを感じずにいられないのです。「Suuns本人たちにとってレディオヘッドは眼中にないだろう、自分たちの世界がもっと壮大に彼らの前に広がっているのだから、レディオヘッドを引き合いに出して語ろうとする自分がすごく安っぽく思えてしまうな」なんて思ってしまうその感覚が新鮮に思えるし、だからこそ僕は比べてしまったのだろう。あと間違えないでほしいのだが、あくまでポストレディオヘッド、必ずしもレディオヘッドに似たものがあるという意味ではない。

また今年はアルバムリリースのみならず、中国、東南アジアを中心に回ったアジアツアー(初めてではない)での盛況が驚きだった。彼らがインディロックバンドとして確固たる地位を築きつつあることがはっきりと感じられる。このバンドもこれからますます大きくなっていのかもしれない。

今年、実は初の来日も果たしたのだが、公演数、動員、共にイマイチな寂しい状況だった様(金欠で見逃した僕自身も偉そうには言えない、かなり後悔を感じている。もしタイにいる時期にツアーがあったら値段的にも絶対行っていた、誓っていい)

こんな動員の感じも最近のインディロックバンドの傾向にしっかり則っていて少しヒヤッとした。このままでは、雑誌で話題になるバンドと金持ちのバンドだけが来日し、必ずしも流行のど真ん中ではないバンドは完全に日本以外のアジアでだけライブをするようになってしまうんじゃないだろうか。半現実化しているだけに怖すぎる。

 

 

11位 I Am Not __ __ / Xinlisupreme

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当初このアルバムを取り上げるのは控えようと思っていた。アルバムタイトルを見ればわかるよう、Godspeed You! Black Empelor 並み(以上)に思想強めの人が作ったアルバムだからである。不自然な事に、ピッチフォークのベストシューゲイズアルバム50選にも名を連ねているような人の作品なのにメディアでの紹介はほぼ皆無だった。そうなると、こちらも多少は怖気付く。ただボイコットされているのではなく、悪の組織に情報操作されているのではないのかと怖気づいた。

悩んだが、どうしても、これだけ素晴らしいアルバムを紹介しないわけにはいかない。胸を張って素晴らしいと言わなければ。

このアルバムに含まれる政治的な考えに関しては、ここが共同ブログでもあることもあって、責任も取れないしノーコメントとさせてもらいたい。ただ、音楽に政治的なメッセージが込められる事を僕は全く悪いことと思わない。

この作品がどうかという話ではなく、仮に政治思想の強い作品があって、その作品に込められた思いが自分のものと合わないかったとしても、自分は少なくとも好きであることをやめたりはしない、出来ればそこだけを無視して触れるかもしれないし、対抗心を燃やすかもしれないし、また自らの意思が揺るがされるということになるかもしれない。逆にもし、そのメッセージに共感できれば、より強く気にいるだろうと思う。どちらにせよ、悪い影響は今のところ僕にはない。

音楽の話をしよう。これはシューゲイザーとも言えるが、まあノイズの満ちたポップスだ。

表題曲の『Seaside Voice Guitar』 は間違いなく歴史に残るような曲で、シューゲイズの一つの到達点であるかもしれない。また、『I am not 誰か』、『Act 2』などを聴けばXinlisupremeの描く感情が、世に群れている無差別的な悪意とはかけ離れた、切望であることもわかる。

また、悶えるような強い怒りの叫びだけでな、過ぎ去った時間、青春や幼い記憶の集積に手を伸ばすような叫びも聞こえないでしょうか。

とにかく美しすぎる。いくら音楽に政治思想を持ち込まないで欲しいとあなたが言っても、ここまで素晴らしい音楽を聴かされたら許せてしまうのではないだろうか。

Xinlisupremeがアレコレ言いながらでも人を唸らせる存在になって欲しいと僕は思う。

ちなみに、このアルバムは確かに今年リリースされたものではあるが、厳密には収録曲のほぼ全てが既出である。色んな理由で廃盤になった『4 Bombs』と『始発列車』という二枚のEPに収録されていた楽曲を収録している。

収録されている楽曲はほぼ同じであるが、出来上がりが多少異なっていたり、曲順が違うせいで聴いた時に受ける印象が違っていたりする。EPにはEPの良さがあるし、今作のバージョンにも違った良さがある。

ただ、完全な新作であるとは言いづらいという点でこの位置で紹介させてもらう事にした。

もちろんこれは順位づけには作用していない要素ではあるが、一度どうしようもなく廃盤になってしまった音源を自分の力でもう一度世に送り出した、その姿勢や態度に感じるものも多い。芸術はもう誰にも邪魔されない次元に到達しようとしているのかもしれない。次のアルバムが出たら多分、一位としてもっと大袈裟に騒ぐと思う。

 

 

10位 若者たちへ / 羊文学

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去年のランキングでベスト8になっていたメンツはちなみに、Wolf Alice、Slowdive辺りだった。『若者たちへ』というアルバムが一般的にシューゲイズに分類されること、またボーカルが女性であることなどから、それらと並べて語られるべきシューゲイズの名盤かもしれない、あるいはそれら以上か。

羊文学は、上述の二つと比べた時、どちらかと言えばWolf Aice と似た様な立場にあるバンドかもしれない。それはもうハッキリ、彼女らの音楽を聴いて、シューゲイザーだな、と言うだけでは足りない新時代のバンドだということでもある。

10年代のロックバンド、羊文学。

時代の終わる間際にようやく形をつかむことができた、これは10年代のインディロックの一つの形である。10年代というのは伝説だったシューゲイズバンドが多数再結成し新しいアルバムを出した時代でもあったし、やはりシューゲイズファンにとっては嬉しい時代だっただろう。下火になっているとは言え、ロックにも新しい時代がある。

イギリスで生まれたロックミュージックは日本でも熱心に模倣・再構築されてきた。日本においてそれは常に進化し続けてきた。しかし、僕がこれまで海外志向系の日本のインディロックバンドに常に惹かれ続けていたとは言い難い。

ジャンルを比較的最初に取り入れ再構築した先駆者たちに素晴らしいものを見ることは少なくないが、特に最近の、中堅弱の辺りにいる方々、メジャーではなければアングラでもない類のバンドとなると、どこかしらの簡易版に感じられたり、一曲通して聴けないほどハマらないことも少なくなく、堪能できるまで聴くことはまずなかった。結局、元ネタと微妙な距離を取っただけの場所でぐるぐる回っているようにしか見えなかったのだ。

しかし、羊文学という特異点で、その文脈の最先端の音楽はもはや、何かの日本的解釈でも、先輩バンドの模倣でもなくなる。そう強く感じられた。今まで反りの合わなかったシーンから好みのものに出会えた喜びで今も跳ね踊りだしてしまいそうだ。

二番煎じだと感じないようになるにはまず聴きこまないといけない、こんな飽きやすい僕でも聴き込めたってことも羊文学の凄さの一つか。

また、『若者たちへ』に散りばめられた既存のジャンルへの愛は、イギリスや日本のシューゲイズ、00年代の日本のポップ・ミュージック、アメリカのインディロックのみにとどまらない。

例えば、僕の一番好きな曲は一曲目のエンディングで。フッと浮き上がりそうになる切実なボーカルに押し倒されてぼんやりとしてしまうこの曲。聴いてすぐの頃にはピンと来なかったけど、これはもうほとんどモグワイのオマージュと言っていいくらいにやってくれている曲で。当然あの轟音パートだけではなく、全てあの方向性に気持ちいい。

このバンド、意図しているのかどうか、めちゃくちゃにポストロック的であり、それでいて凄くポップで楽しいのだ。両方の良さが満点で共存しているバンドを僕はあまり知らない。

これこそは今年の僕にとって聴きたい気分になることの多かったアルバムだった。アルバムのタイトルは何だ、『若者たちへ』というのも『Mogwai Young Team』を意識しているのではないかと勘ぐってしまう。

Young Team のエンディングってことは実質、一曲目、『羊文学 Fear Satan』なのでは? は? 曲解、もういいです。

とにかく素敵なアルバムです。

 

 

9位 New Hymn To Freedom / Szun Waves

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この飛んでいってしまいそうになるアンビエントなモダンジャズは、ルークアボット率いるプロジェクトSzun Waves から。

二枚目のアルバムだそう。トリップです、宇宙です、去年アニマルスピリッツにも同じようなことを言ったような気がしないでもないけれど、宇宙的です。不気味な円がゆっくり広がったり、波紋になったり、別れたりする様な、感じで、トリップ出来ます。

ルークアボット自体は、ジェームズホールデンのレーベルに所属するそれなりに名の知れた良いDJ、電子音楽家なのだけれど、このプロジェクトでは生の楽器が前面にフューチャーされている。ドローンやテクノ、アンビエントだけでなく、ジャズ、ミニマルミュージック、ポストロック、サイケ、などの影響の中にある作品だと言える。

実はルークアボットのプロジェクトだと初めは知らず、ていうか、このレビューを書こうとする時まで知らず、変なミュージシャンがいるんだなぁ、とだけ思っていた。ツイッターでちゃんと情報を追っていないと知らぬことばかりになっている。

そりゃルークアボットが大好きな人間なのだからハマるのは当たり前でした。や、でも僕が一人ですごいすごいと言ってるわけでもないのです。

確か、BBCでトムヨークが流したミックステープにもこのアルバムから一曲入っていたはず。記憶が正しければ、Lowとか坂本龍一と並んでいた気がする。

 

 

8〜5位

8位 Virtue / The Voidz

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前作より取っ付きやすい。変とカッコいいの共存という分野における、現時点でのピークをジュリアンカサブランカスはまた更新してしまった。良すぎた、カッコよすぎたな、完全にお手上げだった、ハレルーヤ。

まあ、これは何も説明しないでも良いくらい有名でしょうが。一応長い文章もあります↓

結局、本人たちですらThe Strokes を越えられない件 - Apollo96

あと、今年はストロークスの消滅をかなり危惧しておりましたが、来年ライブあるようで超安心しました。

 

 

7位  Death Lust / Chastity

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Chastity はDIIV、 Wild Nothingsが在籍し、Beach Fossilsやマックデマルコがかつて在籍したレーベル、キャプチャードトラックスの新人だ。

逃げ水で視界のぼやける夏の、孤独な昼下がりに聴くべきだという印象があった音楽だが、今冬になっても情熱的に響く。これを聴いてカラダを動かせば、叫びだしたくなる気持ちも少し良くなる。

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これまた新しいパンクなのかもしれないし、グランジの成長かもしれないし、裏シューゲイズなのかもしれないし、ハードコアのなんかかもしれないし、ただインディロックと言っておくだけが無難かもしれない。

聴く人によってどのジャンルに属すると感じるか、様々だろうし、どこかの枠に入れようとしてもそれはしっくりこないだろう。このオンタリオ出身のキレッキレの青年、ブランドンウィリアムズのプロジェクト、Chastityは絶妙に孤立した感情をもたらす音楽だからである。

オンタリオ州ウィットビーに生まれた労働者階級の彼の青年時代を背景に、激しく展開される世界。とにかくカッコいい彼の音楽、数年ぶりにファーストアルバムを聴いた瞬間に「一生ついていきます」という決意が起こった。Chastityの血潮に酔いしれない選択肢はない。最強。ベスト新人賞です。

 

 

6位 The Whole Thing Is Just There / Young Jesus 

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今年のインディロック系のアルバムで一番良かった。Young Jesus はシカゴで結成され、LAで再結成されたらしいバンドで、今作は再結成後二枚目のアルバムらしい。せっかくなので色々調べてみたが、とりあえずはアートロックというジャンルになるらしい。音楽って全部アートなんじゃないんスカ?って人なのでアートロックというジャンルが、どういうものなのかいまだにつかめていないのね。誰か教えてください。

サイケ、プログ、ポストロック、シューゲイズにジャンル幅広くスカしてまたがってるので誰もが好きかと思われる。即興中心に曲を作ってくバンドらしく、それは聴いてすぐに想像のつくことでもある。絶対ライブ楽しいだろうなと、聴くたびに唸る。遠くない未来ロサンゼルスに全部集まるのではないかこの世の素晴らしい音楽。

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ライブ映像があったのだけれど、やっぱりこれは見たすぎる。絶対にみたい。ロサンゼルス、いかせて。

僕の場合は去年に出たアルバムで知って、今年のアルバムがめちゃくちゃに良いので正式にハマったという感じなのだけれど、自分も聴いたことなければ、周りに聴いている人もいないし、どんなバンドなんだよと調べてみた。ら、ピッチフォークで8点以上取ってたのでびっくり。ピッチフォークやるやん。たまには見る目あるやんけ。てか、なんで名前見なかったんだ。

まあ、これは良いですよ本当に。聴かずに年越すのは罪。

 

 

5位 Path / Kraus

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伝統的シューゲイズの現代的解釈、ウィルクラウスのPathは今年リリースされたシューゲイズで最も素晴らしい作品であり、アンビエントな電子音楽としても素晴らしい作品と言える。仮にあなたがシューゲイザーでなくても聴く価値はあります。

上の動画は知らない人が聴きながら踊っている動画で、音質は悪いけどなんかエモぉい感じがあるのでMVの代わりに貼っつけました。

長い文もあります↓

ついに姿を見せた現代シューゲイザーの頂上、KRAUS - Apollo96

 

 

 

4〜1位

4位 Déjàvu / Matty

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ヒップホップ界隈を中心に注目を浴びている若手ジャズバンドBADBADNOTGOODのキーボーディストMattyのソロ作、流石としか言いようのない出来上がりで、良い以外の言葉が出てこない。ただわかるのは、これ絶対飽きないぞ!ということで、来年からも時々聴きたくなるんだろうなと初めて瞬間にわかった。

エレクトロニカとビーチフォッシルズの融合とも取れる。ジャズからの影響はもちろん、最後の一曲に関してはクラウトロックで、何度も言うがアルバムを通して、飽きない。

劇的な音楽かと聴かれれば頷きにくいが、ずっとこれからも聴いていくくらい良いということは劇的な感動と同等に価値がある。

 

 

3位 World's Strongest Man / Gaz Coombes

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元スーパーグラスのフロントマンギャズのソロアルバムはスーパーグラスと同じようにいつも聴くものを慰め、勇気付けてくれる。いや、むしろ人を元気にさせる効果に関してはスーパーグラスの音楽に比べても秀でているかもしれない。

前作マタドールがグッと拳を握ってガッツポーズでこちらに頷きながら勇気づけてくるよう音楽であったのに対し、今度のギャズはしっかり握手をするように勇気付けてくれて、強くなれたような気持になる。

どんどんレディオヘッドぽくなってくね、と言う人も多い、僕も思う。同郷オックスフォードの後輩でもあるギャズがレディオヘッドに強く影響を受けるのは当然のことだろう。

ただ、今回ただ真似してるだけではない。あら!なんと今作では、7曲目のOxygen Mask にレディオヘッドのコリングリーンウッド本人が参加しておりまして、ベースを弾いている。

ちなみに、同郷オックスフォード関係でいくと、前作マタドールでは多くの曲にドラムで参加していたライドのロズコルバートもライドでの活動が忙しかったせいか、今作でドラムを叩いていない。ただ、一曲目のWorld's Strongest Man でロズのコーラスは聴ける。ライドのオタク以外は正直聴いてもわからんでしょうけど。

しかし、こうゲストが豪華だと、アルバム自体まあ霞んで聞こえることも多い。それがギャズのソロともなれば全くそんなことがないのだからすごい。ギャズクームスの作曲の才能は、これからもたくさんの人の生命を維持していくのでしょう。

 

 

2位 Masana Temples / 幾何学模様

www.youtube.com この曲は1stの収録曲のライブ動画

日本の宝、幾何学模様様の最新アルバムである。最後の様は偉い人につける様で、最後から二つ目の様はバンド名の一部だ。Kikagaku Moyo、外国っぽい発音だと「キィカガク?モォヨ」になる。

このアルバムに収録されているほとんどの曲が、今年この宇宙で発表されたもので最も素晴らしい曲である。このサイケデリックボーイズfrom Tokyo, Japan はメキメキ凄くなっていって、今作でついに、マトモめの人が聴いても喜べるような曲揃いにして、目玉が高速回転し始めてしまうくらいぶりぶりで、実際に叫んじゃう、最高のアルバムを作ってしまった。

発売日から今日まで、ずっと白目を向いたままです。(聴いているときは高速回転します)

言葉にできない。逃げます。

KEXPのライブ映像に寄せられたコメントが面白かったで引用:

 日本人のヒッピーがパジャマを着て、シタールを下げて、アメリカにやって来た。そしてドラマーにトークをさせている。こいつらは青年男女に退廃をもたらす。

 この動画を見た後、髪が40センチ伸びた。

 キングギザードとジャムって欲しい。

 ーEarthlessとはジャムってたけど見てない? 

 今晩は絶対寿司を食べにいく。

 サムライがパジャマでサイケを演る、だから俺は日本が好きだ。

 (ドイツ語の曲名を見て)Canも誇りに思うはず。

 こいつら人間か? いや、日本人か。

 ダモ鈴木チルドレンだ....

 

日本でイマイチハマらず海外に出たらウケた系のバンドが、今やんわりと世界のクールジャパン像をめちゃくちゃにしていく様は、見ていて気持ちいいものがある。

この人らだったり、Bo Ningen だったり、Monoだったり、外国でめちゃくちゃなことをするロン毛軍団によって音楽鎖国は終焉に導かれる。

 

 

1位 Superhero's / のん

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可愛い、俺たちの生きる希望、心が喜んでおりました。

 

 ベスト16は以上です。後編はランキングからは漏れたもののすごく良かったアルバムなんかをまとめております。

 

 

 続き、後編

 (重すぎて読めなかったという人らほんまにすまんかった)

 

2018年トップアルバム13選

去年と相変わらずランキングには断固として戦う方針ですが、5段階評価でダラダラと続く、貧弱なレビューの羅列はやめます。

順列はつけずに、「これは素晴らしい」と思ったアルバムをとりあえず13枚上げました。

それもただ聞いてて素晴らしいと思ったかどうかではなく、どういった文脈で生み落とされたのかという背景もしっかり踏まえた上で選びました。

裏に隠されたドラマだとか関係なくただ感動して選出したようなアルバムもありますし、一方で様々な物語が裏にあるアルバムは、下駄を履かせなくても素晴らしい完成度を誇る作品であるように思います。

100%自分の完成で選んだ結果、雑誌や他の市井のベストランキングとほとんど被らないものとなりましたが、個人的にはこれ以外にはあり得ない選出内容なので、オススメできないものなど1枚もないです。

 

BUCK-TICK/No.0

00年代以前のV系バンドの音楽には、世界のどの音楽シーンにも類を見ない、偏執的完成度の世界がある。ノイズ民族音楽過激思想なんでもござれなニューウェイブを聞いて育った世代だからというのもあるだろうが、市民権を獲得する前のV系という世界を生き抜くには、作り手に相当ドープな文化的蓄積がないと厳しかっただろう。ヴィレバンに行けば簡単にニッチな趣味を開拓出来る昨今とはまるで在り方が違う。

今更ブロステップとハウスミュージックを掛け合わせたような「Gustave」を聞けばその片鱗が伺える。ひたすらCatを連呼するサビの異様な中毒性と周回遅れの流行サウンドとの合わせの妙が光り、既に消費し尽くされたと思われていた流行のエレクトロサウンドに新たな命を吹き込んでいる。小説家稲垣足穂など音楽以外の文化作品をモチーフにした楽曲も散見され、ロックがロックの内部だけで再生産され、矮小化している今日の流れなどどこ吹く風な態度には頼もしさを覚える。

歌と音に真剣に向き合った世代を代表する鬼才の珠玉の名曲集が本作であり、ベテランとなっても創作スピードもレベルも衰えない数少ない稀有なバンドの最新作でもあり、ポスト「V系」なアルバムとも言えよう。

 

David Bowie/Glastonbury 2000

Queenにおける復活劇がバンドエイドであったならば、David Bowieの場合は本公演がそれに該当するだろう。80年代の低迷期(バンドエイドに至ってはしばらくライブをやっていなかった状況での急造バンドによる迷演であったのは嘆かわしい限り)を抜け、90年代に創作力を復活させるもドラムンベースやインダストリアルなど時代に迎合した作風に「若作り」と叩かれ、世間的には「過去の人」となっていた頃合い。そんな時期に勇敢なプロモーターが掛け合い、出演が決定した。

久々の祖国での公演であること、10万人を越した大観衆を相手にすること、風邪気味で喉の調子がすぐれないことなどの不安要因が重なり、ブックレットに転載された日記や前半のMCではかなりナーバスになっている様が現れている。しかし結果は大成功、Bowieの完全なるカムバックがこの日をもって世間の間でも知れ渡ることとなった。

入場の時点でのBowieは素人ののど自慢大会のようにぎこちなく笑みを浮かべているが、3曲目の「Changes」で空気は一変。サビで観客が映るのだが、前方だけでなく後方の客も数万人が一斉に飛び跳ねている。30年前に同会場で最初に演奏した曲で観客の心を鷲掴みにしたということもあったのだろう、バンドのボルテージは本曲を境に一気に上がっていくこととなる。

ソウル期に在籍したEarl Slickのバンド復帰を祝うかのように披露される「Stay」や「Golden Years」を初めとした70年代の代表曲が矢継ぎ早に繰り出される一方で、「子守唄でもやろう」と冗談交じりに挟み込む90年代のデジタル路線の楽曲が並存する素晴らしい選曲だ(日記によると当初はどれぐらいの演奏時間なのかよく分からずに30曲超のセットリストを組もうとしていたらしい)。「Under Pressure」や「Starman」から大作「Station To Station」までも網羅した内容にかつてのファンは大いに満足したことだろう。バンドメンバーも素晴らしく、人気の高いReality Tourバンドのプロトタイプといった顔ぶれだが、この時点でその真価はすでに現れている。

アンコールでの「Let's Dance」後には、「We Just Made It」と自らライブの成功を無邪気に喜ぶBowieにはニッコリ。だが、本当に評価すべきは最後の曲の選曲。誰もが知ってる代表曲ではなく、NINがRemixやPVでの共演を果たしたインダストリアルナンバー「I'm Afraid Of Americans」を持ってきているのだ。あくまでも現役であることに拘りつつもヒット曲を惜しげも無く披露した名演。亡き後もその影響力の大きさを示している今こそ、そのカリスマ性を体感すべきであろう。

 

Donny McCaslin/Blow.

詳しくは過去記事を読んでいただきたいが、David Bowieの「★」時の編成で制作された第2弾アルバムである本作こそが、真にBowieの遺伝子を引いた継承作と言いたい。レコーディング時の「ジャンルを気にするな。出てくるものを楽しめ」というBowieのモットーに感化され、「★」とは逆にジャズメンなりの他ジャンルへのアプローチがなされている。ガンズ風のリフから始まる「What About the Body」やBjorkのような怪しげなボーカルラインとベースリフが導く「Tiny Kingdom」、はたまたインディーポップな「Great Destroyer」など、今まで固定観念で制限されていたサックスの演奏スタイルを広げ、新たなる可能性を広げた作品である。

何よりも面白いのがBowie風の楽曲はないことである。プレス文では本作がいかに彼の影響を受けて作られたかを公言しているにも関わらず。

つまり、表面的に彼をなぞるのではなく、信念や価値観、行動規範など抽象的なレイヤーでBowieのことを慕い、参考にすることで本作は制作されたのだ。

作風だけで評価するならば、散漫であったり誰かの模倣であったりと粗はいくらでもある作品である。ただし、真に何を目指して作られた作品なのかを考えた時、あなたのコレクションの中で珠玉の1枚になるだろう。

 

ENDRECHERI/Hybrid Funk

やっぱりこれを無視して今年を終わらせるわけにはいかない1枚。

突発性難聴がもたらした波瀾はよその風とばかりに、今まで以上によりドス黒いファンクを突き詰めた彼。かつてのエキセントリックな作風は鳴りを潜め、よりフィジカルな音楽にシフトしたことでかつての聞きやすさは後退したが、結果的には進歩である。

彼の声質は決してゴリゴリのブラックミュージック向けではないのだが、それでもこれをやりたい!という意志がバンドと一丸になって貫かれており、表面的な音の調和とは別に、このアルバムはこの路線であったからうまくいったのだ、という確信を持つことが出来る。

アルバムに付随したジャニーズとしては珍しい一部試聴の解放や夏フェスへの出演といった攻めの姿勢を見せながらも、インタビューでは「別に聞かなくても良いです」と話の腰を折ってくるあたり、本気でありながらもどこか掴み所のない、自然体の彼を感じることが出来るアルバムだ。

 

Gleb Kolyadin/Gleb Kolyadin

ロシアのチェンバーポップ/モダンプログレのデュオiamthemorningの鍵盤奏者Gleb Kolyadinの初ソロ作品。上原ひろみやTigran Hamasyanのようにクラシックやジャズが影響を与えたジャンルを通って再び原点に戻ってくるという手法を取った音楽スタイルに近く、一応はロックに分類するにしても、収録曲の多くはアコースティックな楽器だけで緩急や表情などの彩りをつけている。

と言ってもまだ何のことやらという人もいるだろうから、身も蓋もないが「ヨーロッパが舞台の雰囲気良い感じの2010年代のゲームのサントラ」っぽいと評しておこう。

全体が1つの組曲のような構成でありながら、個々で聞いても優れた楽曲が並び、時折挟まれる歌についても、耽美な性質のボーカルを招聘しただけあって、全体の流れを変えることなく、適切なアクセントとなってアルバムの展開に膨らみを持たせている。そして、「ここではないどこか」に誘ってくれるようなピアノの美しい旋律は、88個の鍵盤の音の重ね方に新たな可能性を感じさせてくれる。

ちなみにKing CrimsonのドラマーGavin Harrisonが参加しているのでそれ目当てで聞くのもあり。

 

Jason Becker/Triumphant Hearts

Marty Friedmanと結成したバンドCacophonyで評価を得、期待の新人ギタリストとしてキャリアを踏み出した途端にALSの発覚によって状況は一変。もはやギターはおろか、日常生活を送ることすらままならなくなり、悲劇の主人公として一部の人間にその名前を記憶に留められるだけに終わったかのように思われた...

が、本作を手土産に彼は四半世紀ぶりに帰ってきた。無論楽器も何も出来ない寝たきり状態だが、父親が会話と同様に音楽制作を行えるシステムを作り上げ、それをもって執念で作り上げたのだ。旧友のMarty Friedmanはもちろん、Steve Vai、Joe Satriani、Paul Gilbertなどのメタル界の大物ギタリストだけでなく、Neal Schon、Joe Bonamassa、はたまた、ジェイク島袋といった様々なジャンルのソロイストが集結し、彼のヴィジョンの具現化のために一肌脱いだのである。

作風は前作「Perspective」での脱メタル路線を引き継いでおり、悟りでも開いたかのように穏やかな曲調の楽曲が続く。ストリングスがメロディーを奏で、その土台の上で各ゲストが出しゃばることなく、それでも己が個性を余すところなく出し切ったソロを弾く。

目玉は「Valley of Fire」。The Magnificent 13と名付けられた、先述のゲストも含めた13人のギタリストが、西部劇の劇伴のようなオケに乗せて最高のソロ回しを聞かせてくれる。その音から溢れる、Jason Beckerへの尊敬と愛情の念は、楽曲の素晴らしさも相まって涙腺を刺激する。「こうなる運命だった」とALSとなった自分を悲観しない本人の弁も、この素晴らしい音楽を聞くと、決して痩せ我慢や周囲へのフォローではなく、心の底から湧いてきた思いだったのだろうと納得である。

皆に愛され、皆を愛して生まれたアルバム。その背景にある物語も素晴らしいが、この1時間の音楽の旅は飛び抜けて素晴らしいものであることを保証しよう。

 

Justin Timberlake/Man of the Woods

R&B界に革新を起こしてきた男の最新作はR&B×ファンク×アメリカーナというこれまた奇妙な取り合わせとなった。と言えども、テネシー育ちの彼としてはR&Rやブルースなど雑多に渡る音楽が彼のルーツなわけで、今回はあくまでも本来の自分を解き放ったというわけであろう。

ぶっちゃけ彼やR&B全般に関して疎いのであんまり大したことは言えないが、アコースティックとエレクトロの融合によって今のアメリカのポピュラー音楽を総括する試みは、目新しさこそないものの、豪勢にプロダクションに労力を投じてやるだけのことはある、素晴らしい取り組みだと思う。1時間に渡る長丁場を一気に聞かせる名盤だ。

 

King Crimson/Meltdown

間違いなく現行King Crimsonは、半世紀の歴史の中で再び全盛期を迎えており、更には年々進化している。「トリプルドラム」という難易度の高いコンセプトに当初は真価を発揮できていなかったところがあったが、今となっては最高の音楽体験をするのにその編成は必要不可欠な要素であったことがはっきりと分かる。特にこのメキシコ公演では。

熱狂的なメキシコの観客に感化されて非常に攻めた姿勢の演奏となった本作では、ドラムの重層的な圧が聞き手の耳を襲い、ベースのTony Levinもそれに負けじと縁の下の力持ちのポジションをやや弱め、いつになく動き回るベースラインをぶりぶり唸らせ、Rober Frippのヒステリックなギターフレーズは脳の血管がぱっくり裂けそうな勢いである。その一方でバンド史上最難関曲である「Fracture」の半世紀近く経っての再演は一切危うさを感じさせない圧巻の出来であり、アドリブも多い3人のドラマーが互いに干渉して音が団子になってしまうこともない。

気がついたら食い入るように見てしまう引力に満ち溢れたライブであり、そこに「老人の割には」などといった弁明は一切ない。「若い世代よ、よく聞け。これが我々の本気だ」とばかりに出し惜しみなく全てを出し切る演奏は、同世代の老人会のようなライブと同列に語るだけ失礼であろう。「プログレッシブロック」とは一体何だったのか、全然興味のない人も含めて是非本作を見て聞いて考えてみてほしい。

 

※2019年1月からサブスク参入らしいです!!

 

Muse/Simulation Theory

作曲レベルに関しては4th辺りが頂点であったと言うと、一部のファンには怒られそうだが、多くのファンは渋々認めるところではないだろうか。以後のアルバムはいかに前作の焼き増しに終わらないかという鬼ごっこを演じていた感すら覚えてしまう。そのため、これが「Drones」や「The 2nd Law」だったら間違いなくトップアルバムには入ってなかった。

その道のりからやっと、外れることに成功したのが本作だ。サブスクによる視聴形態が一般化した音楽業界に合わせ、シングル主体のレコーディング方式を採用し、その中から生まれてきたアイデアを元にアルバムを作り上げるという極めて行き当たりばったりな方法論ではあったが、皮肉にも今まで以上にコンセプチュアルなアルバムに仕上がっている。

新旧のアメリカのヒットチャートを巡る音楽巡礼に、シミュレーション仮説やポストトゥルースなどのコンセプトに基づいた歌詞、そして80年代中心のSF映画のオマージュで構成された一貫性のある映画仕立てのMV集...詳しくは以前の記事にあるが、これらのバラバラのピースがしっかり一体性を持って構築され、しかもMVをどんどん公開してファンの考察を促して盛り上げていく試みは意外と今までなされていなかったものであり、この点だけでも本作は評価されるべきであろう。今後の技術革新で、より一層のコンセプトを伴った新しい音楽作品を作ってくれるのではないかというワクワクが本作には、ある。

 

Orphaned Land/Unsung Prophets And Dead Messiahs

 一神教同士の融和を唱え、本国イスラエルのみならず世界で寛容の心を訴え続けたきたメタルバンド、とうとうキレた。

何故世界は悪化の一途を辿るのか。彼らなりに考えた結果導き出した結果が、「救世主が世のために立ち上がっても民衆は現状に満足して応援しようとしないから」というもの。確かに人々は不満を垂れるものの、いざ実際に改善に向けて努力しようとする人がどれだけいるかという話だ。

そんな民衆をプラトンの「洞窟の比喩」を持ち出して揶揄する冒頭の「The Cave」。前作ではほとんど用いなかったデスボイスによる咆哮を復活させ、近年は歌ものバンドとなっていた路線を再びメタルバンドにシフトさせ、世界に向けて歌いかける。

攻めの姿勢はアルバム全体を通して顕著であり、「We Do Not Resist」では皮肉の効いた曲名も耳が痛いが、歌の途中で検閲音が入り、権益を犯して世直しを図る人間の末路をそれとなく暗示する。「Like Orpheus」に出てくるオルフェウスは、妻を冥界に取り戻しに行ったものの、振り返ってはいけないという警告を破ってしまったがために目的を果たせなかった話で有名だが、一方で新しく宗教を立ち上げたがために怒りを買ってディオニソスの命で八つ裂きにされたという、本作のコンセプトに重なるところのある死に際を迎えている。

その一方で彼らが希望を捨て切ったわけではない。大作「Chains Fall To Gravity」では隷属から逃れようとする人間が自由へと闘争するドラマが壮大なコーラスを交えつつ描かれている。GenesisのSteve Hackettもゲスト参加している本曲は、今年を代表する1曲と言っても遜色のないプロテストアンセムだろう。

 

Wilko Johnson/Blow Your Mind

末期ガン騒動から5年。結局誤診からの生還を果たした彼の真の復活アルバムはタイトルからして活力に溢れたロックンロールアルバムである。Wilko節のキレの効いたギターカッティングにNorman Watt Royのドライブ感溢れるベース。そこに脱力気味なWilko自身のボーカルが乗っかり、唯一無二のバンドサウンドを作り上げている。

アルバムタイトルに関しては「死んだと思ってたら生き返ってびっくりしただろう」という意味もあるだろうが、「70歳の人間による最高にクールなロックンロールで脳天吹き飛ばしてやる」という意図でつけられたのだろう。もはや説明いらずと言ってしまうと投げやりだが、伴奏とリードをカッティングで同時に鳴らしてしまうWilkoワールドに良いも悪いもない。ただ「ロック」している。

 

江沼郁弥/#1

今日び昔のロックスターのように退廃的なライフスタイルで太く短く生きようとしても、社会や価値観が変容しきってしまっており、作為的にやらずして完遂することは不可能である。それ以前に21世紀社会の体質が個々人にも染み付いており、旧世代の生き様をカッコいいと思いこむことすら難しい。

Plentyにおける江沼郁弥という人は、そんな我々世代の代弁者であり、自分たちが「ゆとり」と呼ばれることへの反発や、そうは言っても「ゆとり」に他ならない軟弱な自分たちへの苛立ち、様々な葛藤の中で本気で生きようとしている人であった。

迷いながらも少しずつ答えを見出していった彼が、少しずつポジティブな歌詞を書き出し、音楽性の幅を広げることに興味を見出し、バンドを辞め、チルウェイブなどのエレクトロ路線にシフトしたのは想定の範囲内であった。

今彼が歌うのは人間としてのあり方が分からずにもがく話ではない。具体的な物語は出てこずに、より詩的な心象風景が描かれている。かつての江沼郁弥に救済を求めていた人にはほとんど重なることのない、どこかの誰かの音楽かもしれない。

それでも彼から離れられない人はたくさんいるだろう。彼がより裸に近い状態でで歌うことは何なのか。「光源」では、自らを人々がインスピレーションを受け、1つの目標とするような高みで有りたいと歌う。今までリスナー同じ高さでいた彼もここにはいるけど、そこにはいない。そんな、第2章の幕開けだ。

 

武田理沙/Pandora

昼は臨床検査技師、夜はドラムと鍵盤からノイズを吐き出す、新進気鋭のプログレ/クラシック/ジャズ/ノイズミュージシャンのデビュー作。溢れるパッションをたったの2時間に収めたとでも言わんばかりの情報量の洪水にノックアウトされること間違いない。

印象派風のクラシックピアノの旋律の導入曲「at daybreak,」、ドラムとの熱気に満ちた1人セッションが熱狂の渦に誘い込むジャズナンバー「island」、和風な旋律にAphex Twinレベルの変態ノイズが絡みつく「Pagoda 2018」。冒頭の3曲だけでもお腹いっぱいだが、18分超の大作「Cursed destiny」の、D社のダークサイドとも言うべき不穏ながらも可愛げの溢れる曲運びには、まるで架空のアニメ映画を一編見終えたかのような達成感すら感じる。

ここまではあくまでも1枚目の内容。2枚目は更に別の人格が降臨する。音割れしたドラムが爆発音のように破裂し、人をバカにしたかのようにオルガンのチープな音色が聞き手の心を逆なでする「鳴」で分かるように、1枚目が綺麗に着飾った貴族たちのポートレイトだとしたら、2枚目は心が千々に線切れた芸術家の苦悶する内心を元に、べっとりと油絵具でキャンバスに叩きつけた自画像である。そのノイズに差し込まれる束の間の平穏である「涅槃」でも最後には混沌とした支離滅裂な音の塊になってしまうし、「弟切草」「孤高の厭世家」といった曲名はまるで現代芸術の作品名のような底知れぬ示唆性を感じ取ってしまう。

「綺麗な音楽を奏でる自分を見て賞賛してほしい」という欲望と「偽りの仮面の裏にある本当の自分を見ろ!!」という衝動を等しく大事にし、それをアルバム全体のコンセプトにしてしまうデビュー作。21世紀のミュージシャンが草食化しただとか軟弱になったとか、そう言う言説はここには通用しない。

 

以上の13枚が今年の個人的お気に入りだ。その半分がバックグラウンドストーリーに惹かれて聞いているようなものだが、いずれにせよ、アルバムから得た感動の度合いは優劣つけがたいものだった。

古いロックを好き好んでる自分だが、こうしたアルバムを聞くと新しいものも聞いてみるもんだなとしみじみ思う年の暮れであった。

 

P.S.辛くも選出外となった、めっちゃいいんだけどな…ってなった新譜を今年発売したミュージシャンが以下になります。参考までに。なお、黙って新譜を聴いてくれで取り上げた新譜は省いております。

 


The 1975/ A Brief Inquiry into Online Relationships

Alice In Chains/Rainier Fog

Annal Nathrakh/A New Kind of Horror

Animal Collective/Tangerine Reef

Aphex Twin/Collapse EP

Art-School/In Colors

Bird Bear Hare and Fish/Moon Boots

Black Rebel Motorcycle Club/Wrong Creatures

Cloud Nothings/Last Building Burning

David Byrne/American Utopia

Dir En Grey/The Insulated World

Dorian Concept/The Nature of Imitation

Father John Misty/God's Favorite Customer

Florence + The Machine/High As Hope

Judas Priest/FIREPOWER

Kamasi Washington/Heaven and Earth

mouse on the keys/tres

Nine Inch Nails/Bad Witch

People In The Box/Kodomo Rengou

The Sea Within/The Sea Within

Sting with Shaggy/44/876

Unknown Mortal Orchestra/Sex & Food

The Vaccines/Combat Sports

糸奇はな/PRAY

宇多田ヒカル/初恋