Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

ファンタジック、メランコリックな音楽はいかが?

ご無沙汰しております。ミヨシでございます。

2017年のベストアルバム評は鋭意制作中で、今月末ぐらいを目処に頑張っておりますが、今回はそれに先立ち、予てよりイチオシのミュージシャンを紹介しようかと思います。

ファンタジックでメランコリックな浮遊感漂う素敵な作品を作る方なので、音楽に非現実的な体験を求める人には持ってこいかと思います。

 

 

「糸奇はな」という名前を知ったのは、ZABADAKの小峰さんのTwitterでした(ZABADAKも最高で、彼らの曲には幾度となく泣かされてきたんですが、その紹介はまたの機会に)。

昨年の暮れから放映中のアニメ「魔法使いの嫁」のEDで、ZABADAKの吉良さんが遺した曲に小峰さんの作詞とバンドメンバーの演奏を吹き込んで命を得た「環 -cycle-」がタイアップされる、というのがそのツイートの内容で、その曲でボーカルを務めていたのが「糸奇はな」さん。

透き通った声質で、ZABADAKやアニメの世界を噛み締めるように丁寧に歌う様は、この人以外にこの曲を歌うことは考えられないというぐらいにぴったりとはまっていてとても素晴らしく、吉良さんの弔いも兼ねて、シングルの購入を決意したわけです。

そこで気になったのが、B面曲は誰の曲なのか?

結果としてはB面は糸奇さんの作品で、恥ずかしながら、最初それを知ったときは、内心「もう一曲吉良さんの曲が聞きたかった」と少しがっかりした訳なんですが、聞かずにそんなこと言うのは失礼だし、あんなに澄みきった声の持ち主だからきっと作る曲も綺麗(ちなみに名前の「糸奇」は綺麗の「綺」が由来です)なのだろう、と思い、聞いてみたところ、

 

 

圧倒されました。

 

メランコリックなイントロから一気に空間が広がった後、そこは「糸奇はな」の作り出した世界で、メロディーがどうだとか、楽器の音がどうだとか、そういうことを考えることは全く頭から消え去り、僕は迷い込んだその世界に雷を打たれ、強烈な感情の高まりを覚えました。

 

(さすがに音楽的な話を全く書かないとあれなのでフォローすると、ダークでファンタジックなサウンドをシンセも積極的に用いた打ち込みで作る音楽性が特徴で、先ほどの「体内時計」ではEDMを思わせる派手なスネアが鳴りながらも、メランコリーな鍵盤のフレーズが上に重なり、そのミスマッチとも思える歪さが、ゲーム音楽ともまた違う独特の幻想性を生んでいるのです。ちなみに、彼女はキングクリムゾンなどのプログレバンドにも影響を受けているそうです)

 

その後、何十回と繰り返し聞き、興奮の最中にあった僕は「何としてもCDを手に入れなければならない」という使命感に駆られ、震える手(この時ばかりは比喩ではなく本当に震えていたと思います)で検索し、彼女のHPやCDショップのサイトを確認し、とりあえず先ほどの「体内時計」のシングルを即購入しました。

その後、「ROLE PLAY」は廃盤となってしまったこと(未だにそうなので、機会があればまた再版してくれないかと切に願ってます)、「四角い世界」という新しい音源が翌日東京での同人の即売会のイベントで発売されるということを知り、絶望しつつも一縷の望みにかけて、本人にTwitterで直接尋ねたところ、通販も考えているという丁寧なお返事をいただきまして、まさに天に舞い上がるような心地でした(その後、宣言通り本人のHPから「四角い世界」を無事購入しました)。

 

その後更に色々調べたところ、PVのアニメや刺繍などのハンドメイド、挙句にはHP、アプリ、モールス信号(!)など、「創作」の名のつくものは何でもやるクリエイターであること、毎月10日の23時にはツイキャスで背景映像付き(これが普通のライブハウスで流れてそうなクオリティー)のライブをやっていること、など、SNSの時代をフル活用した、実に非凡な人であることが分かり、「とんでもない人が出てきたな...」と半ば呆気にとられつつも、彼女の才能に魅せられていた中、「初めての(客の目の前での)ライブ開催」が発表されて、迷わず購入を決意(ソールドアウトしたので、この記事からハマってしまった人、ごめんなさい)したのですが、届いたチケットがまたすごくて、

 


f:id:Apollo96:20180218004135j:image

 


f:id:Apollo96:20180218004148j:image

 

なんだこれは〜〜!!

Twitterを見る限り、本人自ら手作業でロウで封をしていたようです。

こんなの反則ですぞ......

 

ただいま、アマゾンでは「環 -cycle-」を、タワレコではそれに加えて「体内時計」を、そして公式の通販サイトでは「四角い世界」を入手することができますし、YouTubeの本人のチャンネルでは今まで投稿してきた曲が彼女のPV付きで更にいっぱい聞けます。

もし、この記事を見てハマった方は是非お買い求めを~。

RIDE、過去が詰まっている音楽

 https://scontent.fbkk2-2.fna.fbcdn.net/v/t1.0-9/10356770_10152860438523664_5868796582468386098_n.jpg?oh=fd222cf9aea7c13ae0bc969e103ba8cd&oe=5B06709F

僕がRIDEをしっかり聴き始めたきっかけは、2014年11月の再結成のアナウンスだった。Twitterで周りは皆騒いでいたし、なんとなくお祭り的な気分で、せっかくだからこのブームに乗っかって僕もライドも聴いてみようと言う気持ちになった。そうやって大して構えずYouTubeでお馴染みの海のアートワークを見つけ、塾のパソコンで勉強の片手間とかにあの名盤を再生した。(進学塾では人生の大事な時期の心の育成の鍵を握るようなバンドが再結成したとしても「今でしょ」とは言ってくれない。そういう意味でもTwitterは素晴らしい場所だと言えるだろう。)

 

www.youtube.com

オアシスとビーディアイでベースとかギター弾いてたあの渋いグラサンの人の昔んっバンドねぇ…という程度の心構えでいたのだが、Seagullのイントロを聴いた瞬間に僕はグッと胸を掴まれていた。教材なんかそこらに放り出して椅子の背もたれに体重を全部のせて斜め上を見つめ、深い美しい青に包まれ心地よい気持ちになっていた。今まで知らずに生きて来られたことに驚いたほどだった。

My Bloody Valentineのジャンルだよね!という程度にしか思っていなかったシューゲイズは、夢を目を開けたまま見られるヤバい行為だったのだ、僕はまさに夢中になったのだ。

f:id:Apollo96:20180217023749j:plain

www.youtube.com

My Bloody Valentineを聴き始めたばかりの頃、僕は特別にシューゲイズに魅力を感じたわけではなかったのだが(My Bloody Valentineとの出会いもそのうち重い恋人の立場から書かせて頂きたい)、その一番の理由はあのバンドが特徴的すぎたからだと思う。今でもあのバンドだけシューゲイズと言われる音楽の中で異様な奇妙さをもっているという意識がある。あれらはシューゲイズ特有の浮遊感とか囁き声とか轟音とかそういう次元ではないのだ。

それに対し、ライドを聴いた時、僕はすんなりとシューゲイザーに惹かれ始めた。ライドの音楽が特にシューゲイズに似合うと感じたからということが一番の理由だろう。

シューゲイズはとても内向的で、若者の憧れとか見栄とか、日々を駆け抜けるような感覚とか、みずみずしい恋心(儚い)が凍結されている音楽というイメージが僕にはあって。短命なブームだったから、本当にどのバンドも、若いうちに解散するなり、シューゲイズというスタイルを捨てるなりになってしまったから、自ずとどのアルバムも若い。

ライドの音楽にはそんな感情がまさにそのまま添加物なしで詰まっているような気がするのだ。だから僕はあのアルバムを聴いて完全に90年代初頭イギリスの陰気な若者たちの吸っていた空気を感じることができたし、その後すんなりと他のシューゲイズバンドに手を出すようにもなった。もっともっと共感を求めたのだ。

ライドの音楽の素晴らしさは、素のまま飾られたリアルな等身大の少年たちのシルエット。それは誰もが自らを投影できるシルエットだ。そして、その形は究極的にシューゲイズという音楽にマッチしていると僕には思えた。

 

まさにレコードの中に時間がそのまま残されていて、

彼らの音楽を聴くと4人の青年時代の景色とか思い出とか考え事とかがじわじわと僕の身体に入って来るようにさえ感じた。

 

あの弾けんばかりの爽快感、鮮やかな心情の浮き沈み、まるで青い音楽。

(ちなみに僕の中ではMy Bloody Valentineは怪しく渦巻く深い紫のシューゲイズ、スロウダイヴは何もかもを映す透明のシューゲイズという感じです。)

寂しくなるくらい澄み切った空のような、吸い込まれそうになるくらい深い海のような青色。そして、彼らの音楽には青春という二文字がよく似合う。

 

www.youtube.com   元々はボックスセットにしか収録されてましたが、公式サイトからダウンロード配信もされてます。

これは僕がファーストアルバムで一番好きな曲であるIn A Different Placeの別バージョンだ。この音源を僕は本当に気に入っているので、知らない人はじっくり聴いて欲しいんだけど。

アルバムバージョンよりゆっくりで、音は粗いものの、全ての音が噛みしめるようにしっかりしっかりと発される。展開もじっくりゆっくりという感じなのだが、ギターの音はとてつもなく情熱的で、彼らの力強さをより近くに感じることができる。

この曲は別々の場所にいる二人について歌っていて、ライドの曲の歌詞で僕が一番気に入っているものだ。てっきり僕はずっと離れ離れの恋人たちのラヴソングなんだという風に解釈していたのだがひょっとすればそうとは限らないのかもしれない。

下は僕が大雑把に歌詞を和訳したものだ。

漂う泡は、雨が降るのを待っている。

雨が降って、空が冷たくなっても、僕はいい気分。

人々は何故いつも急いでいるのだろうか、決して歩みを緩めることはない。そんな彼らを見て僕は笑う。

稲妻は閃き、雷が轟いた。君と僕は離れ離れの場所にいる。

眠っている時、僕たちは笑っている。

目覚めている時、僕たちは笑っている。

プカプカと漂いながら、時を、空間を出入りしている。

今、誰も僕たちに触れることはできない。僕たちは離れ離れだ。

この曲、作詞はアンディで、ボーカルがマークだ。歌詞を読めば、ゆっくりのリズムに泡がプカプカと行ったり来たりしている情景を思い浮かべられるのではないだろうか。

 

昨年夏のHostess Club Weekender で、僕は運よく彼らのラジオの公開収録を見ることができたのだが、「二十年もの歳月を経てどうして今再結成することになったのか?」という話題で彼らの口から発された言葉を決して忘れることができない。

「僕たちは皆それぞれが泡の中にいるような感じなんだ。泡が割れてバラバラになって、それぞれの人生に戻って、色々経験して、また一緒になって。」

その言葉を聴いた時、胸がぎゅっと熱くなった。In A Different Place で歌われていたのは特定のカップルではなくて、あの歌詞に出てくる泡は世の中全ての人々を指しているのかもしれない。

それは、マークであり、アンディであり、スティーブであり、ロズでもあったのだ。

僕たちもきっと漂う泡の中にいるのだ。

90年代にライドというバンドが結成されたのも、

積み重ねられたシーンの上にあの素敵な音楽が生まれたのも、

2015年にライドが再結成されて運よく彼らがリアルタイムで活動するのを見ることができるのも、

色々考えると運命だったのかもしれない。アンディの夢の中にいるような歌詞を見ているとついそんなことまで考えてしまった。

ビーディアイが解散しライドが再結成しなかったら、僕はあの時期にライドを聴かないまま、そこそこ現状と違う人生を過ごしていただろう。

 

 

www.youtube.com

 

初めてライドを知りNowhereやSmile EPを貪るように聴いていたのはつい最近のように感じていたけれど、もう3、4年も前の話だ。僕はまだ10代だった。

今思えば、ライドを結成した当初の、メンバーたちの年がちょうどそのくらいだったはずだ。

僕の10代最後の日々は、四半世紀も前に、同じくらいの年頃の青年たちが作った音楽によって彩られていたのだ。その音楽はいつでもそばにいる、まるで仲のいい友人のように。

かつての僕は、ライドを聴くと90年代の若者たちの生きる風景を思い浮かべていた。

今、ライドの音楽を聴くと僕の脳裏には様々な思い出が鮮やかに蘇る。

NowhereやSmileを聴くと高校の終わり頃の日々が、Going Blank Again を聴けば北関東での短い大学生活が思い浮かぶ。初めて海外へきて生活を始めた時の僕はCarnival Of The Light やTarantulaを聴いていた。

ミューズを目当てに行った、初めてのフジロックで、一番心に残っている光景は、綺麗なオレンジの夕日もすっかり沈み暗くなったグリーンステージに鳴り響いたLeave Them All Behindのイントロだ。あの時のライドの演奏は、今までのフジロックで一番の思い出だ。

 

 

 

RIDEの音楽はこれからも僕の思い出に寄り添い、過去を呼び起こすきっかけであり続けるのだろう。

去年新しいアルバムがリリースされ、つい先日新しいEPもリリースされたなんて話を数年前の自分にするとどんな顔をするだろうか。まさか新曲まで聴けるとは思ってなかったもの。初めてRIDEを聴いたあの日から、僕はもう二度も彼らのライブを見て、一度はメンバーと会って話すことまでできたのだ。なんて幸せなんだろう。今年もう一度彼らを目にすることは叶わなさそうだけれど、十分素敵な思い出を作ってくれたのだから、前向きに今は満足して次を待っていることにする。

きっと今この瞬間も、僕の記憶はRIDEの音楽に刻まれ続けている。

 

 

by Merah

 

 

チョコレート<ss>

f:id:Apollo96:20180214213827j:image

 

その日ソレを目当てにやってくる5人目のお客は、ミネラルウォーターと乾電池をレジカウンターに置いた。

「これください、それと…54番を」

「はい、かしこまりました。…Cポイントカードはお持ちですか」

手早く一万円札を3枚出し、270円のお釣りを受け取り会計を済ますと、「54番」を受け取りそそくさと店を後にした。

 

「店長、今の人…もうやばそうでしたねぇ」

「うーん。いわゆる末期だろう…もう歯という歯が溶け切る寸前だった」

「まったくこれほどまでに恐ろしいものを何故いまだ売り続けるんです?」

「そうか、君は2032年生まれか…僕ら1996年に生まれたおじさんの子どもの頃のおやつといえば、この「54番」だったのさ。」

「なんですって?でも54番には恐ろしい中毒性、歯を蝕んだりあらゆる病気に繋がる糖度の高さが指摘される全く恐ろしい薬品です、学校でもずっとそう習ってきました。そんなものを本当におやつに…?」

「君たちは知らないのだろう、あの甘くほろ苦い美しい味わい!なんと可哀想なことだ、そうだ、僕らおじさんたちの若かりし頃、あれは生きる象徴だったんだ、チョコレート!」

「あぁ店長!そんなおぞましいものの名前口にしないでください!!」

「分かっているよ…だがもう時間がない、コンビニという名目でモグリの「54番」を世に売り渡してきた人生だったが…気付いていたかい、もう僕の歯はボロボロなんだ」

「!!店長まで…そんな…」

「チョコレートの精製技術を失った人間社会では最早虫歯など過去の病気、昔は美容室の数ほどあった歯医者も今や存在しない…それに僕はモグリの商人だし、チョコレート中毒者。まともな医療など最早受けられない。あぁ、このまま合併症を併発して死んでゆくんだ」

「店長…どうしてそこまでして54番、いえ、チョコレートを愛するのですか」

「愛…かな。思い出やおいしい、という感情には現代人が忘れた愛の感情が灯るのさ…ウッ!!」

「て、店長!!すごい熱だ、大変だ…店長しっかり!!」

「バイトくん…僕のことは忘れて…はやく、54番を…処分しないと…君まで薬事法で…裁かれ…」

「いいんです店長!店長の意思は!僕が次ぎます…!!」

 

 

「今年のバレンタインフェア、こんなもんでいいですかね」

「うーん、なかなか名演だったよ僕たち。なんか取り締まられてるって聞くと食べたくなるもんね」

「ほんとにチョコレートが取り締まられたら僕死んじゃいますよ」

店長とバイトくんは、レジに100円を入れて店先の商品の板チョコを半分こした。

 

by beshichan

Superorganismが、2018年を絶対圧巻します

 

やばいバンドが出てきた。
早耳な音楽リスナーなら既にご存知かもしれないが、筆者は恥ずかしながら来日公演が終わったほんの数時間後にこのバンドの存在を知ることになったのだ。
Superorganism、「超個体」の名を冠するこのバンドは日本、アメリカ、イギリス、ニュージーランドと各国からインターネットを介して多数の才能が集ったまさに「超個体」。(当ブログも実はそうなのでシンパシー感じますね。ごめんなさい)そんなスーパーバンドを率いて歌うは日本人のティーンエイジ、Orono嬢だ。若干17歳だというから驚きだ。
ポップでサイケデリック、それでいてダウナー。一緒に楽しもうよ!と呼びかけられているようで、踏み入っちゃ帰ってこれないような不思議な世界。粘っこいテクスチャを纏った色彩の洪水のようなこのサウンド、本当にグラグラくる。鮮烈だ。
これまでにGrouloveや夙川boysの記事を書いてきた筆者、要約するところマジでこのバンドがドストライクである。


かのArectic MonekysやFranz Ferdinandを擁するDomino recordsと契約を結んでおり、現在Apple Music等でセルフタイトルを冠したファーストアルバムの先行配信が開始されている。
というわけで思いっきりフライングだが、待てが出来ない筆者によるファーストアルバム「superorganism」の先行ディスクレビュー、行ってみよう。

 


01:It’s all good


後述2曲目のEverybody~と両A面シングルとして先行リリースされている。
Arcade Fire以来の「ガヤでいいから入れてほしいバンド」の登場だ。「なになに仲間に入れてよ!」と踊り出してしまいそうな、まさにアルバム1曲目にふさわしいキャッチーさを抱いている曲だ。
未だ大人になりきれずに大人になった私のような人間の、心の痒いところをチョチョイっと掻いてくれるような楽しげで怪しい音。1曲目からドストライクである。叶うことなら苗場の空で、それか幕張もしくは舞洲の海のほとりでイッツオールグッドと叫びたくなる曲である、欲目を出すならもう今年中には。

www.youtube.com

 

02:Everybody wants to be famous


先述1曲目と同じくしてシングルリリースされているトラック。ちなみにこのシングルも今作のアルバムアートワークもOrono嬢が手がけたもの。2000年代生まれがここまでの才能を抱え世界へ飛び出してしまう時代だ。妬けちゃうねほんと!
そんな彼女が皮肉を込めて’’Everybody wants to be famous’’とSNS時代をユーモラスなトラックに載せて揶揄をする。まさにインターネットを介して集まり破竹の勢いでシーンを爆進しつつある彼らが演るからカッコいい曲。ほんと敵いません。

www.youtube.com

 

03:Nobody cares


現在先行リリース中の本作で、公式にはここで初出しとなるのがこの曲。となるとこのアルバムは間違いない、間違いなく。Orono嬢の独特の魅力を放つ日曜の午後2時のごとくな気だるげなボーカルが映える曲。

www.youtube.com

 

06:Something for your M.I.N.D.


昨年1月に公開されたSuperorganismのデビューシングルであるこの曲。縦横無尽に駆け巡るサンプリングサウンド、イヤホンの不調を思わせるギリギリの攻めたエフェクト。1発目にして土壌が完璧に仕上がりすぎている。
これだけ1作目からバンドコンセプトを明確に打ち出しつつも、いきなりそのコンセプトに踏み入りすぎて自らその世界観を打破できず停滞、といった近年の新規勢力にありがちな状況に陥りそうもない。それだけ懐の広い音楽をやっているという印象を見受けた。

 

www.youtube.com


10年代も残す所あと2年、この多様性の時代においてこれぞ10年代の音だという概念を打ち出すことは野暮だ。
だがこのバンドが持つのバックグラウンドである「インターネット経由であること」「多国籍かつ年齢層の広さ」、それと制作スタイルである「メンバーそれぞれの好きなものと得意なことを詰めていく」、この3項が混ざり混ざってSuperorganismができていく。ソーシャルメディアが発達し、人と人の出会いが偶然のものから作為的なものになり、コンテンツの共有も過去名作と呼ばれたものを消費するのにも垣根が低くなってきている2010年代だからこそ、彼らがシーンに登場すべくして登場したと感じた。

 

そんな彼らのファーストアルバム「Superorganism」は2018年3月2日リリース。マジで待ちきれません。
この手のバンドがシーンを圧巻してナンボの2018年の世の中だと思っています。キリンのように首を長くして待ちましょう!ていうかほんとガヤでいいから加入したい!!ダメならフジで見たい!!!以上、本日のオペレーターはべしちゃんでした。

 

 

Superorganism

Superorganism

  • Superorganism
  • オルタナティブ

 

 

 

by beshichan

私の大好きなFlumeについて

大好きなFlumeというDJ・プロデューサーについてお話しします。(唐突)

自己紹介するのを忘れておりました。

Apollo96へ寄稿していきますマテです。

TwitterのIDは  @komachi_2333 です。

 

初投稿なので、ここ2年で一番グッときている

Flumeを時系列で紹介したいと思います。是非音楽聴きながら読んでね!

Never Be Like You feat. Kai - Flume

youtu.be

 

----

オリジナル2ndアルバム「Skin」が、

2016年5月にリリースされた。

Flumeは既に、本国オーストラリアではチャートに必ず登場するほどの活躍ぶりを見せているが、

「Skin」は豪州のミュージックアワード2016において七冠に輝き、

更にはグラミー最優秀ダンス・エレクトロ・アルバムを受賞、カナダの女性ボーカルKaiを迎えた

アルバムリード曲「Never Be Like You」は、ダンスレコーディング賞にノミネートされた。

アメリカにてプラチナムディスク認定された「Skin」は、まさに転機となるアルバムであった。

ここまで業界から高評価を受け、注目される理由は何なのか。

彼の現時点においての最新フルバムであり最高傑作である「Skin」は、

私たちに何を訴えようとしているのか?

 

----

FlumeはHarley Edward Stretenによるソロプロジェクト。

オーストラリア・シドニー出身。幼少からピアノやサックスなどの楽器に触れて育ち、

11歳にしてトランスミュージックに出会って以降は、

打ち込みによる音楽制作を始め、エレクトロミュージックに傾倒していったという。

その当時作られた楽曲群は今もyoutubeにあり、その作品群からも現在のflumeの楽曲の

特徴である浮遊感が聴きとれる。

2013年にはオーストラリアのレーベル「Future Classic」より、

デビューアルバム「Flume」をリリース。

満を持してのセルフタイトルであり、まさに自己紹介を込めた作品であった。

Sleepless feat. Jezzabell Doran - Flume

www.youtube.com

当時のダンスミュージックシーンでは、ダブステップや、あまりにも説明的なビルドイン~ドロップを

繰り返すEDMが00年代後半から流行しており、アンビエントを内包したドリーミングな彼のサウンドは、

目まぐるしい曲の展開がもて囃されたメインストリームの流れとは逆をいくものであった。

それらと比較すると単調に平凡に聴こえるかもしれない。

しかし、巨大な音楽市場から離れたオーストラリアに活動の拠点を置いていたからこそ、

彼はのびのびと好きなものを作り続けられたのかもしれない。

制作する者にとって、場所性とは切っても切れない要素である。

 

www.youtube.com

海の近くで生まれ育った彼は、サーフィンが得意らしい。

 

 

----

Tennis Court (Flume Remix) - Lorde

www.youtube.com

You & Me (Flume Remix) - Disclosure

www.youtube.com

 

Flumeは2013,14年と立て続けに、Lorde、Disclosureと言ったビッグネームの名曲のリミックスを発表した。

この2作品はいまだにフェスティバル等マスなクラブの現場でも流れており、

完全なオリジナルではないRemixでありながらも、2010年代のエレクトロニカにおいて決して無視する事の

出来ない重要な作品達である。

 

この作品群あたりで確立された潮の満ちひきの様な独特なシンセパッド・サウンドは、

その当時革新的であった。

周波数を制御するフィルターによって、こもった音色から明るく開けた音色まで、様々な音色を

一度のストローク中に一繋がりに生み出すことが出来る。

ビートの構造は、躍動的なヒップホップや、ポストダブステップ的な組まれ方をしており、

あえてクオンタイズ(レコーディングした音のタイミングを補正する機能)を使わず、音に若干のズレを残す

事で人肌を感じるエモーショナルなグルーヴを生んでおり、無機的な音像でありながらソウルフルである。

高解像度でエレガントなパッドサウンドは多くのプロデューサーの作品に多用された。

また、この頃からアナログシンセ、木質、金属質な音色、オリエンタルな楽器などの

有機的な音を使うエレクトロダンスミュージック作品が増えた。

 

 Firestone feat. Conrad Sewell

www.youtube.com

Love For That feat. Shura - Mura Masa

www.youtube.com

It's Strange feat. K.Flay - Louis The Child

youtu.be

Louis the childはロバート・ホールドレンとフレデリック・ケネットによるエレクトロユニット。

2人は今エレクトロニカの土俵に立っていながら、自分たちの曲を紐解くとロックミュージックだと言う。

そう言い切れる所以は、過去に2人共バンドを組んでいて(片方はブラスバンドをしていた)、

生演奏の経験が多分にあるからである。

彼らのように、流行と辻褄を合わせながら、自分のルーツに則って新しい価値を生み出すプロデューサーは少なくない。 

 

Dye - Lido

www.youtube.com

Lidoは元々クラシックを学んでいたピアニスト。楽曲を聴いてもピアノがリードする場面が多い。

 

The Vase - Seiho

www.youtube.com

Seihoの楽曲には、ルーツであるジャズと電気的なベースミュージックが混ざり合っていく印象を受ける。

以上に挙げた彼らの様に、表面的なサウンドプロダクションだけではないアプローチのエレクトロニカが

次々と誕生し、EDM以降のダンスミュージックに多様性を生んでいる。

 

 

----

(話が逸れた)

Flumeはセカンドアルバム「Skin」の制作にあたり、より多くのクリエイターと仕事が出来るようにと、

2015年後半から活動の拠点をオーストラリアからロサンゼルスに移した。

「You & Me」「Tennis Court」等のremix作品のヒットによって最重要人物となったFlumeは、

コンセプチュアルにアルバムを発展させていった。

以降は、その2ndアルバム「Skin」に収録されている楽曲を紹介する。

 

Smoke & Restribution  feat. Vince Staples , Kučka

www.youtube.com

「Skin」では、(強引に聴いていけば) たびたび二面性を垣間見ることが出来る。

Smoke & Retributionでは、暴力的に展開するVince Staplesのラップが跳ねるパートと、

Kučkaの繊細なバラッドパートで構成されており、非常に明確な対称性がある。

 

Numb & Getting Colder feat. Kučka

www.youtube.com

Flume曰く、音響的・実験的なアプローチと、ポップサウンドの融合がこの曲のコンセプトである。

 

Wall Fuck

www.youtube.com

壁ファ○ク・Wall Fuckにおいても、相反する2パートがある。

更に壁ファ○クでは、それらが組み合わさる3つ目のパートが用意されている。

サンプリングされたようなボイスが単調に続くパート、

低いベースを基調とした、地べたを這うような重いパート(本人曰く、宇宙の切れ目を意識したとの事)、

に分かれている。

そして、2つのパートの周波数帯が絶妙に同居し、混ざり合っていくクライマックス。

 

Pika 

www.youtube.com

アルバムの中盤に位置するインタールード「Pika」では

歪んだシンセサウンドと、クリアなシンセサウンドが1つの々メロディを奏でる。

前者の音が持つ迫力や存在感と、後者の音が持つ明瞭さ、

正反対な音像が重なりその上にFlume自身の歌声が軽やかに響く。

 

Take a Chance feat, Little Dragon

www.youtube.com

 

空間を埋め尽くすほどダイナミクスでありながら、

手で触れても つき抜けてしまう透明感と煌きがある。そして、

ふと目を凝らすと映るノイズは泡として、浮き沈みする動きは波として、

私たちの体内に染み渡り、いつの間にか聴き手の一つになるのである。

 

Like Water feat. MNDR

www.youtube.com

 

----

 

f:id:Apollo96:20180202002531j:plain

アルバムのヴィジュアルのモチーフはジギタリスという花である。

彩度の高いピンクと紫、表面に浮かぶ斑点模様という外見は毒々しい印象があるが、

実際にこの花は毒を持っている。そして、その毒には昔から呪術的な効果があると信じられており、

人の心を沈静化させる薬としてセラピーの界隈で用いられていた。

(今では、正式に化学薬品として医療現場で使われている)

しかし強い効果を発揮する分、幻覚症状、精神神経症状を引き起こすという。

目を引く美しい外見と、副作用を秘めている花の様に、

繊細かつ不安定な旋律やリズムは、危うい二面性を保ちながら私たちを魅惑する。

 

「私にとって肌(もしくは外皮を総じて)とは、一見不思議で奇妙だが、同時にパーソナルで親しい存在だ。」

Flumeは「Skin」リリース後のインタビューにて、今作「Skin」について言及している。

 

 

私たちの顔は一つではない。

多面性を持って日常を生き抜いている。

そして、不安定な自分も、虚弱で陰湿な自分も、

どの自分もただ一人の自分である。

美しさと同じぐらい、汚らしさも、いびつさも、いやらしさも全て受け入れよう。

その境目の真ん中で、今日も揺れ動くのだ。Flumeを聴きながら。

 

 Free

www.youtube.com

 

 

----

次回はもっとゆるいものを書いていきたいと思います。

よろしくお願いいたします。

 

by マテ

OVERTURE apollo2996-2

f:id:Apollo96:20180131004803j:plain

 

煙の匂いに気づいて起きると、ベッドの脇でライカが缶ピースを蒸していた。
忌々しいスモッグ除去ドローンの音は聞こえてこない。まだ夜だ。煙が目にしみて目を擦ると、スラムのバーのギークから聞いた地球のジャズの話を思い出した。そういえばトランペットの夢を見た気がする。
ライカはフードを目深に被り、ストローで水を飲んでいた。一言も発さなければニコリともしない彼のまつげは伏せられて、かすかに震えてるように見えた。
「何してんの人ん家で」
ライカは黙ったままだ。
「…やなことあったの?ていうかどうやって入ったの」
ライカはそっと窓を指差した。
「ふうん。コーヒー飲む?」
こくんと下に動いたライカの首はうなだれたまま上がってこなかった。古臭いガスボンベのスイッチを入れ、錆びたケトルに火をかけている間もフードの下の目は表情が読めないままだった。
天井に張り巡らされた汚いダクトが下品な音を立てている。錆びたケトルが鳴く。安物のコーヒーの匂いは炭鉱のにおいによく似ており、スラムですれ違う数多の汚い月面採掘労働者の酒臭い息を思い出した。
差し出したコーヒーをライカはゆっくりと受け取ると、ゆっくりと口をつけてそのままマグカップを抱え込みうずくまってしまった。僕はまずいコーヒーと静寂に耐えきれなくなりタバコに火をつけた。
天井で燻る煙を眺めていくらか時間が経った頃に、久々にライカの声を聞いた。
「ナナ、死んだよ」
不思議となんの気持ちも湧かず、彼の声を聞いたのはいつぶりだろうなんてことを考えていた。窓から金星は見えなかった。
「昨日。ナナがここ出てからすぐ。あいつコカインを買いに裏通りに入ったところでシャブ漬けの狂った奴にやられた」
まくしたてるようにライカは吐き捨てた。1年分を喋り尽くしたみたいに少し咳込み苦しそうな顔をして、また立てた膝に顔を埋め黙りこくった。
「…そう」
気持ちとは裏腹に思うように声が出ない。僕の発した声は泥水のようなコーヒーの水面をかすかに揺らし、淀みの底へと吸い込まれていった。


「Moon,Milk,Overtrip。こちら月面コロニー-ほ・187B、アポロ96、管制塔応答せよ。
…混線なのはわかってる。ごめん。…あんたがどこの人かは知ったこっちゃない。5本の指か8本の触手かは知らないけどさ、その手でボリュームを落としてくれたっていい。ごめんね、1本吸わせてもらうよ。
…さっき、昨日抱いた女の子が死んだんだ。悲しくはない。ほんとだよ、信じらんないけど。
ネオトキオには来たことある?綺麗なところだろ。月ってところはさ、ケーブルじゃああんなトコロしか映らないでしょ。あんなのクソだ。
彼女は名前もない路地裏で死んだ。さっき友達と公安に遺体を引き取りに行ったよ。クスリ漬けの売春婦が入れるような公営墓地なんてないんだって。
そんなことどうだっていいんだ。ただ、昨日、あの子はあったかかったんだ。
…もういいや。ごめんね。ログは消しといて。誰か知らないけどさよなら。」


次の日僕はあのキャバクラへ行かなかった。制服も窓から放り投げて捨てたし、その1時間後にはもう宿なしの連中が小銭に変えるためか寒さを凌ぐためかいそいそと持ち去るのを見た。
顔を洗いながら鎖骨のあたりに赤黒い鬱血の跡を見つけた。小さな歯型がうっすらと残っている。ナナは死んだ。昨日触れた舌も胸も歯も焼却炉でスクラップと一緒に燃えて消えて無くなった。
濡れた顔をTシャツで拭い、うっとおしく伸びた前髪に滴った水滴を払った。昨晩ライカが置いて行った飲みかけのコーヒーを一気に口へ流し込むと、胃液が溢れてくる感覚があった。小さな歯型はいつの間にやら薄くなっていた。


「バイト飛んだろ」
「もうやめた。文無し。家賃もタバコも払えない」
クン。大柄な火僑。火星生まれの先祖の代からがめつく営むジャンクショップの主。火星産の偽物のマーシャルアンプに腰掛けながら僕らはビールを飲んでいる。
「アポロ、いい若いもんがそんなんでどうするんだよ。あとタバコ吸うんじゃねえ」
「もう20になったよ。もう1本くれよ、地球産入ってるんでしょ」
「800ワン」
それが僕の全財産だったのでそこら辺のシケモクを拾い吸った。ドブの味がする。
「クン、僕雇ってよ」
「やだねお前ツケ払わねえんだもん。前の通信機、調子どうだ」
「混線しかしない」
「当たり前だろ、どんな機械も過去の電波は拾わねえよ」
「でもあれに喋ってると、心が落ち着く」
「どこの誰に混線電波が入ってるかわかんねえのに?お前今頃土星のネットで晒しもんだ」
クンは長い足を組み替え、丸メガネに息を吹きかけバカみたいな柄のシャツで汚れを拭いている。
火星人特有の大きなつり目を伏せて小さく呟いた。
「あの子のこと、災難だったな」
「別に。死んだのは僕じゃないし」
「強がっちゃってまだ若えなあ。クン兄ちゃんになんでも話しなさいな。機械に話してないで」
「何回かエッチしただけだよ。そんな子いくらでもいる」
「そんな言い方すんなって。おら餞別だ。チューナー。壊れてるけどお前なら直せるだろ」


本当にうんともすんとも言わないチューナーと小一時間ほどドライバー片手に戯れて、諦めてそのガラクタをベッドに放り投げた。もう夜だ。金星がちらついている。冷たくなった女が燃えていく姿を思い出した。あの子の故郷では大昔硫酸の雨が降ったらしい。
通信機のスイッチを入れた。クンに指摘された通り、確かに僕の日課は土星かどこかのオタクたちの間で晒し者にされてるのかも知れない。少し笑えてきた。
「Moon,Milk,Overtrip。管制塔応答せよ。
ああわかってる、混線だろ?あんたは土星人?インターネットは脳チップに組み込んでる?僕のことバカにしてんだろ?全部知ってるよ、僕は精神科医を探してる、土星に腕利きがいたらメッセージ飛ばしてくれよ。月のヤブ医者じゃ僕のことどうしようもないらしいんだ、クソ火星人がそう言ってた。笑えるよな、抱いた女が死んでも機械に独り言ぶつけてさ。笑ってくれよ、悲しくもなんともない、ただただヤッた女が死んだだけ。でも体温もおっぱいもキスも全部覚えてる、あの子はいつも寂しいって言ってた。気持ち悪い、気持ち悪いよ、助けてくれ、何者にもなれないまま次死んでいくのは僕かも知れないんだよ、気持ち悪い、怖いよ。助けてくれ、ああ、あんた土星人だっけ?間違えたよ、笑ってくれよ、笑えよ」
一息に言い切ると息が切れた。耳鳴りがする、昨日夢で見たトランペットの音のようだ。
「…ごめんね、馬鹿げてた。どこの誰だか知らないけど謝るよ。
申し遅れたね、こちら月面コロニー-ほ・187B、アポロ96。君は誰?念願の地球の人?…冗談、どうせノイズだろ。誰も受信すらしてない、そうでしょ?もう切るよ、どこの誰が聞いてるのか知らないけど、いい1日をね、バイバイ」
そう言って通信を切ろうとしたその時、ヘッドホンから返ってくるノイズが揺れた。
やがてホワイトノイズが僕の耳をつんざき、雑音の波をかき分けるようにかすかに、でも確かに人の声を聞いた。

「月面コロニー-ほ・187Bより音声通信を受信しましたが電波不明瞭。そちらのオペレーターさん、こちらからの信号を確認の上チューニングを再度お願いできる?」

 

 

http://moon-milk-overtrip.hatenablog.com/entry/overture2996/1 ←第一話へ 

by beshichan

Medicine、狂ったポップミュージック (色褪せないアメリカンシューゲイザーバンド、メディシンについて)

f:id:Apollo96:20180129063516j:plain

 

Medicineは超高音でノイジーなギターが特徴的な1990年に結成されたロサンゼルス出身のシューゲイズバンド。1995年に一度解散するも、2002年に再結成し現在も活動中だ。

Medicineのギターサウンドは、90年代前半ひしめき合っていた数多のシューゲイズバンドたちの中でもずば抜けてオリジナリティが高く、一度聞けば病みつきになることは間違いなしの依存性強のシューゲイジングだ。ギターの音だけで比べるとマイブラッディヴァレンタインの次くらいに驚異的だと個人的には感じている。

今回はMedicineを曲とともに紹介していきたいと思う。

 

 

 

結成から解散まで

1992年 Aruca  1stアルバム"Shot Forth Self Living"より

www.youtube.com

一音目から一瞬耳を覆ってしまうような限界レベルの超騒音高音で鳴り響くギター、90年代らしいポップでシンプルなリズムのドラム、シューゲイザーらしく囁き声で歌う女性ボーカル、これがMedicine である。1990年、Savage RepublicというバンドのドラマーであったBrad Laner という男によって作られた4トラック宅録デモが発端となり、このバンドは生まれた。

録音を聴いた音楽業界の人間に「このテープと同じような音をバンドで演奏できるなら契約しよう。」という風にブラッドは告げられ、彼がロサンゼルスの音楽シーンからバンドメンバーを集めたというのが結成の成り行きだそう。

その後、このArucaという混沌としたポップソングが1stシングルとしてリリースされた。ちなみに、この曲はアメリカから初めてクリエイションからリリースされた曲でもあるそう。

 

 

1992年 5ive  1stアルバム"Shot Forth Self Living"より

www.youtube.com

ドラムのビートと男女のツインボーカルが踊れ踊れと耳を促し、ノイズのうねりが身体中を刺すように駆け巡る、本来不快とされるべき騒音が爽やかで心地よくすら感じられるのが不思議になる。

このめちゃくちゃなサウンドを鳴らし続けるのは、バンドを結成した張本人ブラッドなのであるが、ウィキペディアによるとギタリストの彼がYAMAHAの4トラックレコーダーをエフェクターとして利用することであのサウンドが作られたそう。そのまんまかいな。

以前、米版スポティファイを闇利用していた時期はMedicineの全アルバムを聴くことができていたのだが、タイ版にはないようで、日本版スポティファイはどうなのだろうか。一応アルバムのリンクを貼っておきます。

open.spotify.com

 

 

1993年 The Pink  2ndアルバム"The Buried Life"より

www.youtube.com

この曲は2ndアルバムThe Buried Lifeのオープニングを飾る一曲だ。Slowdive、MVBにDrop Nineteenと多くのバンドにとって女性ボーカリストの可愛らしく神秘的な佇まいは印象的であるが、このバンドにおいても女性ボーカリスト、Beth Thompsonの存在感は圧倒的だ。この曲ではベスのボーカルが前面に押し出されている。声だけ聴いて可愛らしい女性の姿を想像していたのだが、写真を見て僕はだいぶ驚いた。

 

 

f:id:Apollo96:20180129063053j:plain

ベストンプソンはノイジーなギターに負けず劣らずパワフルなビジュアルの金髪長身女子で、どう見ても後ろにいるナードな男たちより頼りになりそう(服装もかなりパンキッシュで素敵)。ちなみに、再結成後のライブ写真から、ベスさんのカッコよさは現在も上昇中なのではないかと僕は踏んでいる。

f:id:Apollo96:20180129065908j:plain 

 

1993年 Never Click  2ndアルバム"The Buried Life"より

www.youtube.com

この曲はブラッドの優しいボーカルに、爽やかなベスのボーカルが絡んでかなりポップ、さらにキラキラしたギターが映えて典型的なシューゲイザー曲になっている。ミュージックビデオはベスさんの存在感が強い。

そういうことで、Medicineが音も見た目もマジでカッコいいバンドなのだということがだいたい分かって頂けたかと。

可愛らしいジャケットの2ndアルバム、日本版スポティファイにはあるのだろうか。ちなみにタイ版スポティファイにはない。

open.spotify.com

 

1994年 Time Baby Ⅲ  映画"The Crow"のサウンドトラックより

www.youtube.com

Time Baby Ⅲ は映画The Crowの劇中で使用された曲である。本人たちもカメオ出演しており、動画はその時の映像。

聴いてもらうとわかると思うのだが、この曲ではベスとは別の女性が歌っている。非常に特徴的な声なのでピンと来た人もいるだろう。

この曲は1stアルバム時期の5ive EPのカップリングであるTime Baby Ⅱ を、コクトーツインズのロビンガスリーが再編したもので、コクトーツインズのボーカルであるエリザベスフレイザーの声とガスリーのギターで曲がガラリと変わっているのだ。何とも豪華な仕上がりで、Medicineの曲の良さが別の形で浮かび上がった曲とも言える。

しかし、その次の年にMedicineは解散してしまった。理由は、

 

 

知りません。 

 

 

解散後のBrad Lanerの作品、一時的な再結成

1997年 Backworlds Luskのアルバム"Free Mars"より

www.youtube.com

95年にMedicine は3rdアルバムをリリースした後バンドは解散してしまうのだが、その後ブラッドは別のバンドに参加している。

そのブラッドの参加したバンドというのが元ToolのPaul D'Amourを中心に結成されたプログレサイケなスーパーグループであるLuskだ。

結局一枚アルバムを発表して解散することになるが、唯一のアルバムであるFree Marsはなかなかクォリティの高いポップソング揃いで聴いていて楽しい。もちろんブラッドのアイデンティティであるあのギターサウンドもいい味を出している。こういったプロジェクトがブラッドその後のキャリアに厚みを加えていったのだろう。

ちなみに当ブログにはTool(のメンバーによるサイドプロジェクト)に関する記事が既にあるので、これを読んでToolに興味を持ってくれた方は是非そちらも。→メイナードキーナン、プから聞くか オから聞くか - Apollo96

 

 

2003年 As You Do 4thアルバム"Mechanical Forces of Love"より

www.youtube.com

2002年にMedicineは一時的に再結成されるが、そこにブラッド以外のお馴染みのメンバーはおらず、ベスさんの代わりにマイクを握ったのはブルースリーの娘である女優シャノンリーさんだった。いやどないなっとんねん!と突っ込みたくなるが。

しかし、その二人体制のMedicineからリリースされた唯一のアルバムであるThe Mechanical Forces of Loveを聴いてみるとこれがめちゃくちゃ良い。シャノンリーのパワフルなボーカルも印象的だが、やはりところどころ姿を見せるブラッドの優しいボーカルに心が落ち着く。

エレクトロニカの影響も色濃いノイズポップで普通のMedicineに飽きた頃に聴くと腑に落ちるはず。

なんと辛口批評でお馴染みのPitchfork誌から8.02ndアルバムのThe Buried Life に次ぐ高得点をもらっていて、あぁなるほどねえという感じである。

open.spotify.com

 

 

オリジナルメンバーでの再結成〜現在

2013年にMedicineは、リーダーであるブラッド・レイナー、結成当初から解散までドラマーを務めたJim Goodall、そしてあの金髪長身の女性シンガーBeth Thompson、という馴染みのあるラインナップで再結成された。

Captured Tracks(DIIVやWild Nothings、マックデマルコなどが在籍するレーベル)と契約して本格的に活動を再開した彼らは、2ndアルバムを彷彿させる果物の静物画のアルバムアートに飾られた5thアルバム"To The Happy Few"をリリースした。

 

2013年 Long As The Sun  5thアルバム"To The Happy Few"より

www.youtube.com

 

この曲は、その5thアルバムからの先行シングルだ。1st、2nd時期のMedicineを再構築したかのような荒いブラッドのノイズギターはより洗練され、ベスのボーカルとジムのドラムは初期の曲と変わらぬまま。この曲を聴き、ジムの叩くシンプルなリズムがMedicineの音楽の輪郭をはっきりとさせ、ポップスたらしめているのだと再確認した。

5thアルバムは90年代のMedicineが大好きな人に是非聴いてもらいたいと感じた。録音技術の向上(?しらんけど)により、さらに洗練されたノイズが楽しめるようになったのではないか。

open.spotify.com

 

 

2014年 Turning  6thアルバム"Home Everywhere"より

www.youtube.com

全体に張り巡らされたノイズが四方八方から点滅する中を、エレクトリックなリズムに乗せられたベスの冷たいボーカルが聞こえる"Turning"は、再結成から数えて二枚目のこのアルバム"Home Everywhere"がMedicineの新境地であることを簡潔に示している。これまでの曲は、音の悪いイヤホンなんかでも何とか楽しめたのだが、これはできれば多少良い音質で聴きたい。

 

2014年 Move Along - Down The Road  6thアルバム"Home Everywhere"より

www.youtube.com

アルバムからもう一曲シングルカットされた曲があるのだが、こちらはビデオも作られている。曲はめちゃくちゃかっこいいのに、映像がめちゃくちゃダサイケ。

open.spotify.com

Medicine、ブラッドレイナーが参加した曲、アルバムなど

Wild Nothings - Life Of Pause

www.youtube.com

Wild Nothings の2016年のアルバムLife Of Pause にMedicineのボスことブラッドが参加しているらしい。ネットの情報によると、まずは1曲目のReichpop、次に4曲目のJapanese Alice、5曲目で表題曲のLife Of Pause、最後に7曲目のTo Know Youだ。えっめっちゃ参加してるやん。

5曲目Life Of Pauseのみバッキングボーカルとシンセ、あとは全部ギターだそうです。

一回聴いただけで「多分これそうなんだろうな…笑」ってすぐに分かるの凄い。

Life of Pause by Wild Nothing on Spotify

 

Caribou - Barnowl

www.youtube.com

カリブーの3rdアルバム、The Milk Of Human Kindnessのクロージング曲であるBarnowlでブラッドレイナーのギターが使われているらしい。

実は僕、カリブーがめちゃくちゃ好きで、このアルバムも相当大好きで、この間たまたま見つけてアナログ盤を購入したばかりだった。しかもこの曲、アルバムで一番好きな曲。今日、英語のウィキペディアを読んでて初めて知って驚きたまげた。

意識して聴いてみると確かにブラッドのギターが鳴っているのがわかる。動画だと、1分30秒から、3分40秒から。ジジジ〜って音がどう考えてもそれですよね。めちゃくちゃ良いところでがっつり使われててすごく興奮する。

(Medicineの日本語版のウィキによると、Medicineの1stの一曲目One More をサンプリングしているらしいですが、当のカリブーのアルバムの英ウィキにも載っておらず。出典は謎です。日本のネットにあるシューゲイザーの情報は下手したら本国のそれより詳しいかもしれないなぁと感動した。)

Barnowl, a song by Caribou on Spotify

 

 

M83 - Splendor

www.youtube.com

ブラッドレイナーってM83とも一緒にやってるんだ!知らなかったビックリだな…と思って聴いてみたら、まさか声での参加。どうやらSplendorとWaitの二曲で歌っているよう。ちなみにSplendorは作曲からブラッドが関わっているよう。この曲はライブでも一度共演しているようで、MCで直接的な影響を公言していた。M83は他のアルバムの全然関係ないアルバムが既に多少Medicineっぽいから、そういう面での共作を避けたのかな。それにしても現在のインディーロックシーンにおけるブラッドレイナーの影響力は思いの外大きいのだなと今回記事を書くためにいろいろ調べ物をしていて驚いた。

Splendor, a song by M83 on Spotify

 

おまけ

ということでここまでがMedicineについての紹介になります。とにかくMedicineはギターのブラッドがすごく特徴的な音を鳴らすというのが全てですね。それが好きか嫌いかで好みがバッサリ分かれると思います。

とにかくまず、1stの"Shot Forth Self Living"と2ndの"The Buried Life"から聴いてもらうのが一番だと思います。

そこでハマってもっと聴きたくなったらたら、再結成後の2枚、5thの"To the Happy Few"と6thの"Home Everywhere"を聴いて、真ん中の2枚、3rdと4thは個人的に後回しでいいかなと。

あまり聴いていないので3rdアルバムについて本文中では全く触れませんでしたが、ノイズ控えめな感じです。

このバンドってシューゲイザーの中でも珍しいくらいストレートに騒音、掃除機の音というより鉄工所の音みたいで面白い。

 

ちなみにおまけですけど、最近知った日本のバンドで、こういうキンキンした感じありで、もっとやばいノイズを鳴らす人たちがいるので興味がある人は聴いてみてください。↓

open.spotify.com

 

 

 

by Merah