Apollo96

地球の月から文化共有。音楽、映画、文学、旅、幅広い分野を紹介します。時々創作活動も。

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フォーテットの原曲食いなリミックス選集

前回はフォーテットがアホな別名義で発表している楽曲たちの紹介をさせてもらった。そこでもちらっと触れたが彼はオリジナルの音楽を作るのと同じくらいリミックスでも有名で、時には原曲に勝るほど素晴らしいようなリミックスをやってしまう。そこで今日は彼のリミックスワークの中から僕のお気に入りを選りすぐって紹介したいと思う。

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基本的に好きなバンドの日本盤ボーナストラックがリミックスだって聴くと、それなりに気分を落としてしまうし、聴いてもあんまり良いなと思うことが少ないというのが世の常で、ボートラは未発表曲かシングルB面曲であれ!と実際僕も言ってしまうことが多い。

しかし、フォーテットがリミックスをしているとなると「どれどれ、今回は多少お金を払って輸入盤ではなく日本盤を買おうかな」という気分になる。それほどに彼のリミックスは素晴らしいのだ。

何て言うか、彼のリミックスはまるで既存の曲を使って自分のオリジナルの曲を作っているようで、ただのリミックスには聴こえない。だから、フォーテットを好きな人が聴くと、時に原曲よりも良いじゃないかという感想を抱くことさえあるということである。原曲を知らない人はなるべく聴いてほしくない、おかしなイメージがついてしまい原曲が入ってこなくなる。なんと言ってもリミックスは原曲ありきだ。

とにかくここから僕のお気に入りフォーテットミックスを羅列してそれぞれに感想をつけていく。

Skttrbrain - Radiohead

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これは言わずと知れたレディオヘッドの名曲Scatterbrainのリミックスだ。僕の中でフォーテットのリミックスといえばまずこれが頭に浮かぶ。

フィルのドラムとジョニーのギターが醸す静かな雰囲気、トムヨークのはっきり美しい歌、エドの奏でる雫のような音が素晴らしくて本当に素晴らしいというのが原曲。終わりに近づくにつれ絡まり合うジョニーとエドのギターが心をギュッギュと締め上げエコーのかかったトムヨークの声が空気を貫いてという調子で、もうこんなのいくらリミックスしてもこれ以上は良くならないよとしか思えなかった。

しかしまあ聴いてみれば、換骨奪胎という四字熟語はこのためにあったかというような豹変具合。全く違うパーカッション、改造されたギター、その上でとりあえずトムのボーカルだけは元のまま、まるで別テイクである。とりあえずボーカルにだけでも安心して聴いていると、後半はトムのボーカルさえもリズム隊の一部になってしまっており、一番の見どころもフォーテットが取ってきてつけた音に乗っ取られているという有様だ。しかしそれでいて惹き込まれる。

The Motion Makes Me Last - Eluvium

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Eluvium はポストロック方面にいるポストクラシカル系のアンビエントミュージシャンで、昨年僕のポストロック年間ベストの一枚にもあげさせてもらったので聴いてくれた方もいるかと。癒し全振りのミュージシャンであることは Explosions In The Skyのハゲ担当と一緒にサイドプロジェクトをやっていることからも察せられる事実だ。(サイドプロジェクトのInventions のリンク置いておきます。スポティファイInventions by Inventions on Spotify、ユーチューブInventions - Entity - YouTube)

はて本題のリミックスに関してだが、これだけは原曲を聴いたことない人でも聴いていただいて問題ないと思う。その理由の一つに、このリミックス音源がEluviumの音楽に一歩踏み入れるきっかけになり得る方向性に仕上がっているからだ。

Elvium自身のボーカルは取り去られ、フォーテットらしい女声のパターンが乗っているものの、Eluviumの取柄である美しい空気はまだ残っている。ベクトルの向きも長さも同じ、ただ矢印の色が違うだけなので是非聴いて頂きたい。

VCR - The xx / The Violent Noise - The xx

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VCR、これぞまさに原曲を知らずに聴いたらしっかりいかれてしまういい例だと思う。ジャンル的には近いものの、The xx の特徴である最低限での世界づくりが完全に無視されているのでこれを聴いて良いと思って原曲を聴けば確実に拍子抜けしてしまうだろう。このリミックス音源の良さと、The xx の良さは一見かけ離れていると僕は思う。The xx 好きでフォーテットを知らない人にとってのきっかけとなってくれるとなれば素敵だろう。僕とてThe xx を聴きたい時にこの音源を聴いたりはしない。フォーテットを聴きたい時に聴くものなのだ。しかし最後のオリヴァーのボーカルまで聴くとやはりThe xx 最高!!とうめいてしまう。見どころだ。本当によく出来ている、The xx ファンにとっても。

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同じくThe xxでThe Violent Noise のフォーテットリミックスもお気に入りだ。個人的な話にはなるのだけれど、元々The xxの大ファンだったくせに、僕は去年のI See You に際してのThe xxの方向性転換に振り落とされてしまい非常に肩身の狭い思いをした。もう最後まで聴き通せないほどあのアルバムが苦手で、なのに周りはめちゃくちゃ褒めているから本当に寂しかった覚えがある。しかしそんな時フォーテットのリミックス(当然いつもの通り良い)を聴くと、あんまり耳に残っていないパートが前面に打ち出されていた。その時に元来僕がThe xxに求めていた音が鳴っていないわけではなくただ埋もれてしまっていただけなのだと気づきアルバムを聴きなおすきっかけになった。だからある意味では好きな人のリミックスを聴くことは、楽曲を新しい方向から見直す行為でもあるのだろう。

(Angelsのリミックスもあるのだが流石にThe xxから三つも紹介しては読み手もかなわんと思うのでとばしです。)

The First Big Weekend - Arab Strap

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原曲は『世の中のニヒルなカッコよさを持つ曲ランキング』が仮にあるなら、間違いなくベスト4以内に入るような代物で、アラブストラップの中で一番有名な曲でもあるだろう。知らない人はまず必ず先に聴いて一連のアラブストラップやべぇを行うことが推奨されます。本当にカッコよすぎて、夜のデートに出掛ける前にはキリッとした顔をして聴いてしまいがちだ。アラブストラップは初期のモグワイの作品にも大いなる貢献を残している。残念ながらダークさだけでカッコよさは遺伝しなかったようだけれど。

リミックス音源でもこの曲のカッコよさは一切減退していない、そしてエロさが加えられている。そんなことされたらもうお手上げ祭りだ。

Leave A Trace - CHVRCHES

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ローレンのボーカルの素晴らしさを再確認するためだけの曲で、もうフォーテットの曲にローレン嬢の声の相性が良いこと良いこと。久しぶりにCHVRCHES聴くぞというモチベーションになること間違いなしの名リミックスです。

Catastroph And The Cure - Explosions In The Sky

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EITSの曲でこの曲が特別好きだという人は少なくない。そんな名曲をまさかフォーテットがリミックスしていると知ったときは、痒い所にまで手を伸ばしてくれているんだねぇと凄く嬉しかった。焦らし、ぶち壊しすることでExplosions In The Skyの素敵を強調してくれているようなリミックスで、曲としてもコラボ作品のような趣、両方の良さがいい具合に出ていて最高。強いて言うなら轟音パートの代わりの音は素敵だけど少しはうるさうるさなの残しておいて欲しかったという感じ。

Atoms For Peace - Thom Yorke

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これが僕が胸を張って言える一番好きなフォーテットリミックスだ。なんとトムヨークソロ曲であるアトムスフォーピースはフォーテットのリミックスでわかりやすいポップソングへ進化している。トムのソロはどこか単調で盛り上がりどころがすぐにはつかみづらいと言って好まない人もいるのだが、このリミックスではトムヨークソロの音多いバージョンで、そういう方にもオススメできる仕様になっている。歌メロのキュンと来る感じも素晴らしく強調されている。あの鉄琴リフとか、3分25秒からのギターなんてものはもうレディオヘッドみたいなもので、まあそれもフォーテットのキエランヘブデンがCreepのMVに出演しているほど筋金入りのレディオヘッドファンだということを考えれば当然かもしれない。

Something To Talk About - Badly Drawn Boy

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この曲は知る人ぞ知る英シンガーソングライターBadly Drawn Boy が手掛けたAbout A Boy のサウンドトラックからの一曲。

Badly Drawn Boy を聴いたことない方は是非一聴していただけたらと思う。フォークでオルタナな美しすぎるファーストアルバムThe Hour Of Bewilderbeast は死ぬまでに絶対聴くべきアルバムの一枚だと胸を張って言える。気に入ったら是非About A Boy のサントラも聴いて欲しい。そこまで聴いたら満を持してフォーテットリミックスを。

「のんびりゆったりだったあの曲が踊れるようになっとるやん⁉」と悲鳴を上げることになる。おぉこれぞリミックスの骨頂と言いたくなるはず。

 

おまけ

ここで触れられたものはごく一部、他にもたくさんいいリミックスが存在しているのに紹介しきれないのが残念ですが、他のも聴きたい人のために探しやすいリンクを貼っておきます。

こちらのスポティファイのフォーテット公式プレイリストがリミックスを一気に聴くには手っ取り早いかと。

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こちらのウィキペディアのページにはより詳しいリミックスの一覧があります。

https://en.wikipedia.org/wiki/Four_Tet_discography#Remixes

 

ここまで読んでくれて人ありがとうございます。

最後に、2005年に作られ、2015年まで公開されていなかった秘蔵曲のリンクを。コールドプレイFix Youのフォーテットリミックスです。ストリーミングとかにはなくて、多分ユーチューブで公開されているだけです。リリースは今後もなさそう。これ、ある意味原曲より泣けます。シガーロスがFix You を演奏したような出来だから。

それでは!来週の来日公演、たくさん楽しみましょう‼

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by Merah

フォーテットがアホみたいな別名義で出している楽曲まとめ

今月末に来日を控えたフォーテットについて記事を書こうと思って、どのアルバムを紹介すべきかなど色々考えたのだが、フォーテットのアルバムは全て完璧でどこから聴き始めてもおかしなことにはならない。また、仮に感想を述べるにしてもヤバいとか天才とか完璧としか言えないと思う。だから今回はなかなか全貌をつかみづらいフォーテットことキエランヘブデンの別名義での楽曲たちについて紹介したいと思う。

でもまあ、「フォーテットとは誰ぞ?キエランヘブデンは何?」という方もいるだろうしせめて簡単な彼についての説明もここにしておきます。

フォーテット(Four Tet)はキエラン・ヘブデン(Kieran Hebden)という人のソロプロジェクトで、その音楽はIDMとかフォークトロニカとかの電子系のジャンルに分類されることが多い。たくさんアルバムを発表しているがどれもなかなか良くて、一個ハマったら全部聴きたくなるタイプのアーティストではないかなと思う。

僕が彼を知ったきっかけは確かレディオヘッドのトムの発言か何かだとぼんやり記憶している。とにかくトムはめちゃくちゃフォーテットを気に入ってるし、RIDEの面々も去年SNSでフォーテットの新譜についてあれこれ言っていたり、どうもロック界隈からのリスペクトもごつい電子系のアーティストのようだ。

ちなみに彼はリミックスも得意な口で、手掛けるアーティストはなかなかの強者揃い。しかし、その顔ぶれよりも出来上がったリミックス曲のほうが数倍イカついときているので原曲を知らずにリミックス音源を聴いてしまうことはオススメできない。天才の類である彼が、そもそも素晴らしい曲を弄って自分の曲にしてしまっているのだから見る方向次第では原作超えともなってしまうから。

下はフォーテットことキエランヘブデンの写真だ。パッと見て何歳くらいか検討がつくだろうか、僕は実は今日調べてみるまで全然知らなかったから多少驚いた。年齢の概念を弾き飛ばしているというか、不思議な雰囲気の人だ。

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とにかく、そんな彼がちょうど去年頃から各種ストリーミング媒体で小出しに別名義で楽曲を発表していて、現時点でアルバム二枚分くらい集まっているのでこれを機に一箇所にまとめておこうと思う。

フォーテットが情報を解禁するごとに随時この記事も更新していくつもりだが、いち早く知りたい方は是非、(ラリっちょな文面な平気なら)彼のTwitterもフォローしてくれたらと思う。

twitter.com

 

 ※大見出しが名義、次の見出しがアルバム名です。アルバム名の横の括弧書き漢数字は発表された日付です。(一部に文字化けをおこす記号が含まれておりやむなく日付表記は漢数字になりました)

 

別名義1:00110100 0101010

0181 (二千十七年八月十八日)

この作品だけは概要もはっきりわかっている。0181は元々はちゃんとフォーテット名義でサウンドクラウドにて2013年にフリーリリースされたコンピレーションアルバムで、収録されている楽曲たちは1997年から2001年の未発表曲だ。

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ミックステープ的な性質が強く、サウンドクラウドで公開されたものは38分一切区切られていなかった。でも昨年八月にSpotifyでトラックが分けられたものが公開されたのでだいぶ聴きやすくなったかと思う。僕は0005がお気に入り。

このアルバムに関してはよそで日本語でのレビュー記事も書かれているので是非お読みになって↓

RA Reviews: Four Tet - 0181 on Text Records (Album)

 

別名義2:⣎⡇ꉺლ༽இ•̛)ྀ◞ ༎ຶ ༽ৣৢ؞ৢ؞ؖ ꉺლ

ここからが本番。さっきのはまだ数字、まだ読めた。これに関してはもう一切読めない。ლはグルジアアルファベットでL、இはタミルアルファベットでIだそう。よくもまあこんなアホなことを。

世間ではフォーテットの楽曲であると言われてはいるものの、本人は何も言っていないので、もしかしたら別の人の作品をフォーテットが黙ってシェアしているだけということもありうる(が聞いた感じほぼ間違いなくフォーテットの作曲)。とにかく、このグチャグチャ名義が一番活発で、今年三月にも新曲を発表している。

 

.·.·* ́ ̈.·*:・✧๑ඕั ҉,  (二千十七年八月四日)

グチャグチャ名義での最初の曲は川のアートワーク。どうも2016年のコンピRandomsに入っているThe Reservoirのいち部分かなと。Randoms自体が過去にどこかしらでリリースされた曲たちをごった混ぜにしたようなよく分からないコンピで、それぞれ曲の出所も気合い入れて調べないとわからないような有様。The Reservoirの初出は気合いを入れて調べはしたもののよくわからずです。

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・✧(๑ඕัළ*.。 * ̈°。 (二千十七年九月十二日)

こちらのクラゲのやつは二曲収録。どちらの曲もThere Is Love In You にありそうな音のイメージ。これもそうですが、この名義のアーティストの音源は川のやつ以外はバンドキャンプにて投げ銭方式でダウンロードできます。

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 )✧⃛* (二千十七年十一月一日)

この三曲入りのEPがグチャグチャ名義での一番のお気に入りだ。このEPは昨年リリースの最新作であるNew Energy のリリース翌日に公開されている。大概New Energy の没曲だろう。有機的でロックな最新作と同じ方向性の曲が揃っている。最新作が気に入った方はカップリング曲のようなノリで是非聴いてほしい。

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̸ ̡ ҉ ҉.·๑ඕั ҉ ̸ ̡ ҉ ҉.·๑ඕั ҉ ̸ ̡ ҉ ҉.·๑ඕั ҉ ̸ ̡ ҉ ҉.·๑ඕั ҉ ̸ ̡ ҉ ҉.·๑ඕั ҉ ̸ ̡ ҉ ҉.·๑ඕั ҉ ̸ ̡ ҉ ҉.·๑ඕั ҉,  (二千十八年三月十五日)

 曲の感じはNew Energyっぽいけれど、なんとなく今までのフォーテットと少し音の雰囲気が違う。ひょっとしたら次のアルバムの方向性を探る鍵であったりするのか、しないのか、とりあえずこれが今のフォーテット、2018年最新の曲である。

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別名義3:△▃△▓ 

一個前のアレをグチャグチャ名義と仮称してしまったのでこちらにもニックネームをつけようと思う。カクカク名義でよろしいでしょうか?

カクカク名義の曲は、今のところ常にグチャグチャとセットで同時に公開されている。しかし一緒に出されてはいるものの雰囲気はかなり違う。どれもデモっぽい未完成な風があるというか。

 

░▓░▓░▓░▓░▓░▓░▓░▓░▓░▓░▓░▓░▓ (二千十七年九月十二日)

この作品は聴いていて単純に気持ちが良いミニマル風の作品で、一曲リピートでぼーっと聴くのが僕は好きだ。

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؞ৢ؞ؖ؞ৢ؞ؖ؞ৢ؞ؖ؞ৢ؞ؖ؞ৢ؞ؖ؞ৢ؞ؖ؞ৢ؞ؖ؞ৢ؞ؖ؞ৢ؞ؖ؞ৢ؞ؖ؞ৢ؞ؖ؞ৢ؞ؖ؞ৢ؞ؖ (二千十七年十一月一日)

やはりカクカク名義の曲はグチャグチャ名義の物に比べポップさに欠ける。スタジオアルバムと比べるとすれば、Beautiful Rewind、Ringerあたりに近いものがあると思う。アルバムに入れるとするとパーカッションもつけて、主張強めのボーカルも乗せての提供となるタイプの曲だろう。Aerielなんかがその類だ。

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ここまでが大まかな別名義曲のまとめです。でも、やはりフォーテットを聴いたことのない人もいるだろうし、アルバムは何から聴いても間違いはないと言い放つのはあれなので、オススメのアルバムを紹介する代わりと言ってはなんですが、最後に定番のライブ映像のリンクを貼っておきます。

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by Merah

プログレ伏魔殿、King Crimson~②「ジャズロックの進化」

とうとう来日が公式に発表されましたね。

「ダサい」が代名詞のプログレという界隈の大御所とは思えぬ洒脱な宣伝サイトもこしらえられ、TLでも普段聞いてない層も反応していて、病み上がりの体調ながらウキウキと小躍りしております。

価格は1,6000円からと、このブログを書いてる側にも読んでいる側にも優しくはない強気の設定ですが、2015年の来日を見た人間として、多少は無理してでも行く価値はあると声を大にして主張しておきます。

 

バンドそのものが素晴らしいからという、ファンとして当然の心理が働いているのは間違いないですが、

 

・レジェンドバンドが全盛期の状態で観れる残りわずかの機会であるということ

・「トリプルドラム」という単純に貴重な音体験が出来るということ

 

この2点を踏まえると、この来日は、ロックを愛する人全てに音楽というものの素晴らしさを再提示する福音である、と言っても過言ではないと思います。

 

ということで、布教を目的とした連載の前回からの続き、始まります。

 

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LINEUP 2

 

2ndアルバム「ポセイドンのめざめ」完成と同時に空中分解したバンドを建て直すために、残された二人、Robert Fripp(Gt, Key)とPeter Sinfield(Lyric, Vision)は新しくメンバーを呼び込み、間髪入れずに3rdアルバムを制作していくことになる(ちなみに2ndのレコーディングは1970年の1〜4月、3rdは同年8〜9月)。

そのときの新しいメンバーは、以下の通りである。

 

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左から右にFripp, Mel Collins, Andy McCulloch, Gordon Haskell, Sinfield.

 

Gordon Haskell(Bs, Vo)

Frippの旧友であり、前作においてもGreg Lakeが歌録りに間に合わなかった曲でゲスト参加をしている。品のない声が特徴。ツアー前のリハーサルで喧嘩になって脱退。あまりに短期間な在籍期間からか、レーベルからは正式メンバーとして認められなかったらしく、印税を巡ってバンドとの間に禍根が残り、後年のアンソロジー音源でもボーカルが差し替えられるなどの措置が取られている。ちなみに脱退後はソロで活動し、2001年にはヒットシングルを出している。ここ数年も活動している模様。

 

Mel Collins(Sax, Flute, Key, etc.)

前作から参加しているソロイストで、ソプラノからバリトンまでのSaxとFluteを主に担当し、4th まで在籍する(脱退の詳細は後述する)。フリージャズを好む一方、クリムゾン脱退後は、The Rolling StonesやTears For Fearsを始め、多くのバンドでセッションミュージシャンとしてメロウなプレイを披露している。「レッド」にIan McDonaldと同じくゲストという形で参加し、早くも関係修復を匂わせる。その後、LINEUP 8で40年ぶりにメンバー復帰、来日時にはFrippから仲直りを提示してきたことを読売新聞で明らかにしている(笑)。ちなみに、笑うと目が細い&サスペンダー愛好家という、僕の性癖ど真ん中の可愛いじいちゃん枠です。

 

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サスペンダー姿でちょうど良い感じなのがぱっと見つからなかったので、笑顔のお写真を。はあ、眼福。

 

Andy McCulloch(Dr)

歴代メンバーの中ではかなり影の薄い人物であるが、前任者同様音数は多く、さりとて騒々しくない、品のあるプレイに徹している素晴らしいミュージシャンであるのは間違いない。Greg Lakeを引っこ抜いていったKeith Emersonの斡旋で加入したが、ボーカルの脱退でツアーがおじゃんになったので同時に脱退。その後Frippに再就職先を紹介されたものの、あまりうまくいかず、最終的には音楽界から引退。

じゃあ今何してるの...とwikiを見たら、趣味のヨットに生活の基盤を置き、何と五輪選手の指導も行う大物になっていた模様。

 

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3rd「リザード」(1970年)

原題「Lizard」 

 

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まずジャケットが色彩豊かで、前2作の辛気臭い世界観からの脱却が見受けられる。

音楽性についても、ジャズロックという根本的なところは今までと同じでありながら、(ダークな)メルヘンワールドを前面に打ち出しており、2ndで感ぜられたFrippの作風の限界に関する疑惑は、ある程度払拭されたと言ってもいいだろう。ボーカルがピアノの旋律の上に漂い、ベールの向こうから囁きかけてくるような冒頭から、一変してメロトロンの野太い音が炸裂し、Frippのクラシックギターが縦横無尽に飛び回る1曲目「サーカス」を聞くだけでも、その変化は明白である。脱退後の前作でも依然存在感を示していたIan McDonaldの影は跡形もなく消え去っている。20分を越す大作「リザード」も、曲調豊かな組曲構成でありながら、ジャズとメルヘンの二本柱は一貫して基底にあり、今までの「ロックによるジャズの咀嚼」から一皮向けたアルバムとして、この作品は評価されていいだろう。

 

ただし、長所だけではないのが、このバンドの面倒なところで、どうにもリフや音が安っぽいし、ボーカルの声質がサウンドに合わない。

 

冒頭だと0:18〜0:22あたりを聞けば、ボーカルの品のなさがよく分かると思う。

 

チープさに関しては、このバンドの特性、ひいてはプログレの良さでもあるので、ファンの間ではむしろご褒美であったりするが(笑)、ボーカルの声に関しては、残念ながらごく真面目なバラードもこのアルバムには収録されているため、看過できないのだ。

 

Frippもその問題を分かっていたのか、組曲「リザード」冒頭の幻想的なパートでは、中性的な柔らかい声が特徴的なyesのボーカル、Jon Andersonを起用しており、B面では正式メンバーよりゲストが歌っている時間の方が長いという、とんでもない逆転現象が発生しているのである(ちなみにFrippが彼をクリムゾンのボーカルにスカウトしたところ、yes側が以前に彼に加入を打診した際に断られた話をまぜっかえされたとかいう話が残っている)。

 

長々と話したが、初心者に向けて総括すると、ボーカルという欠点もあるものの、デビュー時の模倣という悪癖を捨て去ることに成功した記念碑的作品であるのは間違いなく、初手としてこのアルバムを手に取ることは勧めにくいものの、クリムゾンにハマった人間が4枚目、5枚目辺りに聞くとしては悪くない選択肢であるように僕は思う。実際、このアルバムを最高傑作とするファンは、少数派であるものの、そこそこいるのもまた事実である。

 

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 LINEUP 3

 

またもやツアーが始まる前にボーカルとリズム隊が抜けてしまったため、バンドは後任を探して奔走することとなる。Frippは旧友であるJohn Wettonにオファーを出すが、自身の所属するバンドの優先を理由に断られる(その後LINEUP 4で加入)。最終的にはオーディションで以下のメンバーが新体制の一員として迎え入れられることとなった。

 

(なお、オーディション参加者であったBryan Ferryは、不採用ではあったものの、才能を認めたFrippがレーベルに紹介し、晴れてRoxy Musicのデビューにこぎつけている)

 

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左から右にBoz, Sinfield(笑), Ian Wallace, Fripp, Collins.

 

Boz(Bs, Vo)

度々名前の出てきているKeith Tippettのプロジェクトの関わりからバンドに加入。それまではベース経験が一切なかったが、ベーシストの選考が難航していたことから兼任することとなった(笑)。ベースに関しては特に言うことはないが、下品な声も澄み切った声も出せるボーカルスタイルは、前任者とは大きく異なる。

他の楽器隊メンバーともどもFrippと対立し、3人でブリティッシュブルースのドンであったAlexis Kornerのバンドに加入。その後脱退し、Bad Companyにベーシストとして参加。Greg Lakeよろしくクリムゾン以上の商業的成功を果たす。60歳で死去。Ian Wallaceと同じ享年で、2人して近年ボチボチ鬼籍に入りつつある歴代メンバーより10年ほど早くして亡くなっている。それに加えて、この時期のクリムゾンが歴代トップクラスの不和状態であったため、「Frippの祟り」が密かに囁かれている。死んだ当人としては堪ったもんじゃないが、不安定なバンドという環境が彼に与えた心労を慮ると、クリムゾンが彼の命を縮めたというのも案外眉唾な話ではないかもしれない。

 

Ian Wallace(Dr)

前任者のAndy McCullochと同様、Keith Emerson邸の居候をしていた関係から、メンバー加入を志願し、当初はボーカル志望であったがドラムとして加入。彼もまたジャジーな演奏スタイルだが、過去の2人よりワイルド。Alexis Kornerのバンドに加入するため脱退。更にそのバンドも辞し、Peter FramptonやBob Dylanなどのバックを務め、セッションミュージシャンとしてそこそこに活躍した。晩年には21st Century Schozoid BandのMichael Gilesの後任を務めたり、Crimson Jazz Trioを結成したりと、かつてのキャリアを総括する活動も盛んに行った。特に後者は安直なジャズアレンジではなく、全力勝負のジャズなので、クリムゾンの数ある派生作品の中では特にオススメしたい。

 

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4th「アイランズ」(1971年)

原題「Islands」

 

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本作は、前回のB級臭さを継承しつつも、Bozのボーカルとしての才能を活かし、歴代トップクラスのバラードナンバーを共存させることに成功した、過去3作の集大成的作品である。

 

厳かにウッドベースのボウイングから始まる「フォーメンテラ・レディ」は、終始穏やかにどこか遠い世界の原風景を描き出す。その後、どこか胡散臭いユニゾンフレーズとジャジーなドラムが印象的なインスト「船乗りの歌」を挟み、下品パート「レターズ」、「レディース・オブ・ザ・ロード」に突入する。天下のThe Beatlesを露骨にパロッタ後者はさほど下品な歌い方(歌詞は卑猥)ではないが、前者でのねちっこい叫びは、明らかに今までのクリムゾンからは逸脱した音楽性を伺わせる。  

 

そして一番大声で言わせてほしいのだが、最後に置かれた名曲「アイランズ」は、この世のものとは思えない美しさで、思わず溜息が出る。エフェクトがかかったBozの声は、風に舞う精霊が歌うかのようであり、Keith Tippettの弾くピアノも、ガラス玉のようにそれぞれの音が澄み切った光を湛えている。その奥から立ち上ってくるメロトロンの温もりある和音の調べ。全てが完璧である。

 

この曲はしっかりお金を払って聞いて欲しいので、あえてリンクは貼らない。その代わりではないのだが、(どちらかというと悪い意味で)とんでもない音源を紹介しよう。

 

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1971年春、デビュー時以来のツアーを敢行、同年秋に「アイランズ」を制作、そして間髪入れずに再びツアーに出ようとしていたバンドであったが、表面的な充実とは裏腹に、年末にはSinfieldはクビにされ、残りの3人も、翌年の初めには己の楽曲以外を受け付けないFrippと対立し、最早バンドの崩壊は不可避であった。しかし、契約によると、彼らはまだライブを消化する必要があったため、既に解散状態にあったバンドは「再結成」し、最後のツアーに乗り出した。その際に録音された音源(バンド初のライブ盤「アースバウンド」に収録)が次の通りである。

 

 

ニコニコからのリンクになっているが、ご容赦を。半世紀に渡って演奏されてきたバンドの代表曲だが、このテイクは、カセットテープで録音された極悪音質と、バンドの険悪なムードが浮き彫りとなった演奏とが、破壊的な連鎖反応を起こしているベスト(あるいはワースト)テイクとして名高い。

 

対立の要因としてはFrippの偏執的な所が大きいのだろうが、更には3人がブルースなどのブラックミュージックを好んでいたのに対して、Frippは現代音楽の前衛的なスタイルを取り入れていた(80sのLINEUP 5ではその傾向を更に強める)という図式が、ライブ音源を聞く限りはっきりと出てしまっている。ただ、この3人の路線、面白いかというと、ブルースとしてあんまり面白くない(リンクを貼った演奏は比較的マシだが)。そんな訳で、嫌がらせのようにつまらないブルースを曲中に突然始める3人に、ムッとしながらもあくまでも自我流のアドリブを弾くFrippという、客側もどう受け止めていいのか分からないツアーの後に、仲直りすることもなくあっけなくバンドは解散してしまう。

 

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1969年のデビューから3年の間に、4枚のアルバム、4人のベーシスト、3人のボーカル、ドラマー、2回のレコ発ツアー、2人のソロイスト、と列挙するだけでも目が回りそうな慌ただしい展開を追ってきたが、最終的にはFripp以外が彼に愛想を尽かして脱退してしまうという結末を迎えた。その反省もあったのか、以降はメンバーの喧嘩別れによるバンド脱退は見受けられなくなり、スタジオでのアルバム制作よりもライブを活動の主体とする、今までと真逆の活動形態がとられるようになる。また、音楽性も今までのジャズロックとは決別した、よりヘヴィーな演奏がバンドのトレードマークとなるのである。

 

2017年の新譜のお話

ドーモ、ミヨシです。

 

年度も変わるタイミングでようやくの昨年出た新譜のレビュー。遅いのは承知しております。ただ、雑誌やツイッターの年間ランキングで良く見かけたアルバムを、ぽいぽいストリーミングサイトで保存していったら膨大な量に膨れ上がり...

結局そういう後出しで聞いたアルバムでハマったものは少なかったので、来年はもう少し早くなるとは思います。はい。

 

そして、発表方法なんですが、ランキングではなく五段階評価という形になってます。

理由はいろいろありますが、根本には「芸術に単純な優劣をつけたくない」という気持ちが強く働いているので、相対評価のランキングには抵抗がある(他のレビュアーに喧嘩を売ってるわけではないですが、黙って誤魔化す、という選択もしないことにします)というのが一番にあり、その他に

 

・聞いたアルバムの母数が少なすぎる。

・1位と2位の判別ならなんとかなりそうだが、28位と29位の上下を決める自信がない。

・ジャンルの壁がますます薄くなっている今日、「こういうアルバム聞いてる人間はココまでの界隈をあらかた聞いてて、ココから先はノーマーク」という暗黙の了解がないため、「あのアルバムを聞いた上でこのアルバムをこう評価したのか」という無言のやり取りが通用しなく、書き手の価値観が読み手に歪んだ形で伝わることも...

 

くどい

 

というわけで、タイプじゃなかったもの以外全部五段階にぶちこんで、感想を特記したいものは短めですが、一通りちゃんと書きました。長いので覚悟してください。

 

太字はレビューあり、「初」は「そのミュージシャンのアルバムを初めて聞いた」の意。

 

 

 

★★☆☆☆

Alt-J/Relaxer 初

Arcade Fire/Everything Now

Hurts/Desire

St. Vincent/Masseducation

Viva Brother/II

The War on Drugs/A Deeper Understanding 初

 

 

Arcade Fire/Everything Now

 

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タイトル曲でABBAを次なるオマージュ先に認定した大所帯バンドの最新作は、ダンスミュージックに邂逅し、一見最高のポップミュージックを提示しているように思えた。ただし、アルバムを通して起伏がなく、消化不良のまま冒頭のリプライズで締め括られるという欠点を伴っての話だが。

  

Viva Brother/II

 

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なぜ此の期に及んで、と言ったら失礼だが、完全に「あの人は今?」枠からの再結成宣言から程なく発売された2ndは、「Bastardo」に見られるシンセの導入、「Silver Silk」でのシューゲ路線など、サウンド的に進歩した上に、衰え知らずの作曲センスが発揮されている、復活作として申し分ない出来ではあった。しかし、シンセはあまりバンドサウンドと噛み合ってない上に、曲順があんまり良くない。僕が勝手に組み換えたプレイリストで聞いたら★1つ分ぐらいクオリティーが上がった。そんなアルバム。再結成ライブを1回やったきり、公式アカウントも沈黙しているが、これで終わるには勿体ないバンド。。。

 

★★★☆☆

All That Remains/Madness

The Brithday/NOMAD 初

Black Stone Cherry/Black to Blues 初

Bjork/Utopia

Cairokee/Noaata Beida 初

Cinema Staff/熱源

Circa Survive/The Amulet

Converge/The Dusk in Us

Drake/More Life 初

Eminem/Revival

King Gizzard & The Lizard Wizard/アルバム5枚 初

Laurel Halo/Dust 初

Linkin Park/One More Light

Mark Guiliana Jazz Quartet/Jersey 初

minus(‐)/R 初

MUCC/脈拍 初

The National/Sleep Well Beast 初

Nine Inch Nails/Add Violence

Noel Gallagher's High Flying Birds/Who Built the Moon? 初

Passion Pit/Tremendous Sea of Love

Rise Against/Wolves 初

Ride/Weather Diaries 

Roger Waters/Is This The Life We Really Want

Royal Blood/How Did We Get So Dark?

Sleep Party People/Lingering

Tempalay/『5曲』 初

Tinariwen/Elwan

Yes/Topographic Drama

電気グルーヴ/TROPICAL LOVE

 

Circa Survive/The Amulet

 

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エモが苦手な自分が好きな数少ないバンドCirca Survive。Saosinでも活躍するボーカルAnthony Greenは、力強くもどこか柔和な声で、およそ男性には難しいはずの高音域をのびやかに歌い上げる。その歌声は間違いなく男性のものであるのだが、どれだけハイトーンでも耳に刺さることはなく、天上の世界まで聴き手の精神を導くような唯一無二の声質なのだ。また、特異なのは彼のボーカルだけでない。分かりやすい歌メロ→ブレイク→激情サビといった、エモのテンプレをなぞる曲展開はこのバンドにはあまりなく、The Mars Voltaを彷彿とさせるような先の見えない展開は、エモ嫌いの僕をも興奮させる。

 

Converge/The Dusk in Us

 

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凄まじい熱量を放つポストハードコアバンドの新譜。正直、疾走しない冒頭、急加速、急停止、再加速、というテンポ感についていけなかった。とはいえ、自分が評価している理由である、「ミドルテンポの曲の作曲能力の高さ」は相変わらずであり、彼らがただのスピード狂でないことを思い知らされる。いっそ一度スピードを封印してアルバムを作ってみてほしいのだが。

 

King Gizzard & The Lizard Wizard/アルバム5枚 初

 

(アルバムジャケットもタイトルも割愛。wikiでも読んでくれ)

 

「年にアルバムを5枚出す」という、「ヤクでもキメてんじゃねーのか」と思わざるを得ない試みをしただけでなく、その音楽性も負けず劣らずで、激ダサストーナーを基調に、ストーナー&サイケの1枚目、メタルの2枚目、フュージョンの3枚目、再びストーナー&サイケの4枚目、牧歌的プログレの5枚目、と微妙に路線を変えているところもまたガンギマり。2017年にもファッションではなく本当にガンギマっている残党が生き残っていることを伝えてくれる歴史史料。3枚目なんかFrank Zappaのジャケットぽくって、まさに年に5枚もアルバム出すやつらっぽさが見て取れる。

 

Linkin Park/One More Light

 

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振り返ってみると、彼らの作品において満場一致の傑作は3rd以降出ていない。新機軸では完成度に欠け、原点回帰ではかつての気迫に欠ける。このアルバムもご多分に漏れず前者の類であり、新しいことをしたからダメなのではなく、キラーチューンのなさ、尺の短さなど、どうにも食い足りない。その一方で、どれだけ売れても創作にがむしゃらな姿勢を崩すことはなかったのは、たとえ不器用でも良い音楽を作り続けようとしてきた証拠であり、そういうところが3rd以降もLinkin Parkが人々に愛され続けた所以でもあるとも思う。だから、これをChesterの遺作だからといって神格化させることはせず、音楽活動でもプライベートでもずっと戦ってきた彼の生き様を示すものとして、むしろその半端さを愛したいと思う。彼の代理を立ててLinkin Parkが存続することも、このまま解散してしまうことも、とても考えられないけれども、いつか、残された五人が何かの答えを見つけ出すことを一ファンとして待ち続けたい。

 

Roger Waters/Is This The Life We Really Want

 

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あまりにも露骨なタイトルである20年以上の年月を経てのロックアルバムとしての新作は、トランプ政権がアメリカを牛耳るようなポピュリズムの時代を憂いた爺の意見表明であり、サウンドはまんま70sフロイド、歌詞はもはや演説と化した散文詩。Nigel Godrichがプロデューサーなのでもっと実験的なサウンドになるかと思いきや、大してその音が変化することはなかった。取り立てて絶賛するところもなく、長年待ち続けたファンは落胆、もしくは彼らしいと受け流したことだろう。僕はというと、アルバム終盤の諦観の滲む数曲には、ここ数年の大御所の新譜の中で一番ゾクゾクしたかもしれない。といっても本人は執念深くトランプを批難し続けるつもりなんだろうけど。

 

Yes/Topographic Drama

 

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バンドの大黒柱のChris Squire亡き後に始まった、アルバム「ドラマ」の完全再現と「海洋地形学の物語」の抜粋を目玉としたツアーのライブをパッケージ化した最新音源。来日では「ドラマ」も抜粋の形式だったので、生で聞けなかった曲が収録されているのはありがたい。

亡くなる前にChrisに指名され、その後継者となったBilly Sherwoodがベーシストとして活躍する、初めての音源であるはずだが、自分が来日で聞いた記憶よりChrisに忠実なプレイに徹している印象を受ける。

見も蓋もないことをいうと、彼は「器用貧乏」という言葉がまさに当てはまるプレーヤーなので、下手に自分のセンスでアレンジするのではなく、前任者の再現を選んだことが吉と出ている。いや、本当に申し訳けど、Billyの演奏に惚れたこと、ない(泣)。

ドラムもAlan Whiteが本編の最後の「儀式」中盤からアンコール終わりまでの参加で、他は一回り下のサポートメンバーが叩くという割り振りがなされており、最早継ぎ接ぎだらけなのだが、それでもSteve Howeのギターが鳴れば、どれだけリズムがヘロヘロだろうと、それはもうYesなのだ。

 

★★★★☆

alvvays/Antisocialites 初

Beck/Colors 初

Blackfield/Blackfield V 初

Cannibal Corpes/Red Before Black 初

Carvin Harris/Funk Wav Bounces Vol.1 初

Chuck Berry/CHUCK

Cigarette After Sex/Cigarette After Sex 初

circle/Terminal 初

clark/Death Peak 初 

Cloud Nothings/Life Without Sound 初

coldplay/kalaidscope EP 初

The Cribs/24-7 Rock Star Shit 初

D.A.N./Tempest

Depeche Mode/Spirit 初

Endon/Through The Mirror 初

Eric Johnson/Collage 初

Forest Swords/Compassion 初

Four Tet/New Energy 初

Gizmodrome/Gizmodrome 初

Godspeed You! Black Emperor/Luciferian Towers

Gone is Gone/Echolocation 初

GOOD ON THE REEL/グアナコの足

Gorillaz/Humans

grapevine/Roadside Prophet 初

Hype Williams/Rainbow Edition 初

Foo Fighters/Concrete and Gold

Foster The People/Sacred Hearts Club

Johan Johanson/Arrival(original motion picture soundtrack) 初

KASABIAN/Crying Out Loud

Kendrick Lamar/DAMN.

LCD soundsystem/American Dream 初

LUNA SEA/LUV

Mastodon/Cold Dark Place

Mew/Visuals

Mogwai/Every Country's Sun

Nothing But Thieves/Broken Machine

OCS/Memory of a Cut off Head 初

Oh Sees/Orc 初

Phoenix/Ti Amo 初

Public Service Broadcasting/Every Valley 初

Rafael Anton Irisarri/The Shameless Year 初

Rancid/Trouble Maker

Rex Orange Country/Apricot Princess 初

Ringo Starr/Give More Love 初

Sawano Hiroyuki[nZk]/2V-ALK

Shobaleader One /Shobaleader One 初

Slowdive/Slowdive

Songhoy Blues/Résistance 初

Sparks/Hippopotamus

Stereophonics/Scream Above The Sounds

Steven Wilson/To The Bone 初

SUGIZO/ONENESS M 初

Thundercat/Drunk 初

Tigran Hamasyan/An Ancient Observer

Tyler, The Creator/Flower Boy 初

U2/Songs of Experience

Virgil & Steve Howe/Nexus 初

Wolf Alice/Visions Of A Life 初

赤い公園/熱唱サマー

アルカラ/KAGEKI

池田亮司/music for percussion

坂本龍一/async

女王蜂/Q

福間創×ナカムラトモヒロ/ambi-valance 4

細野晴臣/Vu Ja De 初

 

Carvin Harris/Funk Wav Bounces Vol.1 初

 

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「ドロップのあるEDMの人」で完全に認識がストップしていたので、他の人が絶賛していなかったら、そして、思わせぶりで飾りっ気のないジャケットとタイトルが目に留まらなかったら、絶対聞くことはなかった。Frank Oceanがフィーチャーされていることから分かるように、以前までのパリピサウンドから打って変わり、シックなR&Bに、ヒップホップ、ファンクなどがないまぜになった作風に鞍替えしている。世界を代表するDJがこうもあっさり今までの手法を捨ててしまうのは、一つの時代の終わりを象徴する事件だろう。出来ることならVol. 2を作って欲しいが、その頃にはまた音楽シーンが変化していて頓挫するのも、また一興。

 

Chuck Berry/CHUCK

 

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90歳を記念して約40年ぶりに出されるはずが、発売を待たずして本人が死去したことより遺作となってしまった、新作にして、ロックンロール最終章。収録曲は新曲がほとんどで、王道ロックンロールの「Big Boy」からカリブサウンドの「 Jamaica Moon」、Lou Reedよろしくモノローグで物語を語る「Dutchman」など曲調はバラエティに溢れている。ギタープレイはそもそも21世紀の尺度から語るのが見当違いにしても、ご愛嬌といったものだが、声にはハリがあり、曲の完成度といい、とても90歳を迎えて放たれたとは思えない充実した作品である。

ロックンロールよ永遠に。

 

 

Cloud Nothings/Life Without Sound 初

 

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一曲目のイントロからいきなり泣きメロ大洪水。どこまでも切なく、激しい37分は、オタクが宅録から火がつき、ガレージバンドを結成させるというサクセスストーリーのその先にある希望の瞬間である。

 

D.A.N./Tempest

 

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邦ロックが行ってきた「洋楽の二番煎じを出来る限り本物に近づける」という不毛なイタチゴッコはもはやここにはなく、彼らは「このバンドにしか鳴らせない音」という明確なアイデンティティーを持った上で、自分たちのルーツを咀嚼して、再構築する(この点に関しては本人たちも強く意識しているようだhttps://ototoy.jp/feature/20170419)。

クールに決めたミニマムなフレーズと無限に続くグルーヴに洋邦の卑賤はなく、たゆたう音の波にただ身を委ねるのみ。時には「パクリ」と叩く材料となっていた欧米崇拝も、2010年代に来て1つの転換点を迎えたのだろうか。

 

Endon/Through The Mirror 初

 

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ブラックメタル、ハードコア、ノイズetcと、とにかく獰猛極まる音を混在させて排泄するEndonの最新作は、本来他のバンドのミキシングは手がけないConvergeのメンバーが曲を聞いてその慣例を破ったという話も頷ける、圧巻の暴力、暴力、暴力である。ここまで邪悪な音が日本から生み出されるというのも、日本がメルツバウ、borisなどを生み出した国であることを考えると納得できるのだが、一番狂気じみているのはギターがクリーン、クランチ程度の歪みで悠然とアルペジオを弾いているところだったりする。

 

Eric Johnson/Collage 初

 

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従来は寡作な彼がアコーステックギターとピアノで制作した異色作からわずか1年のスパンで新作を出すという、異例続きの事態にある。ネタばらしをすると、本作は今までのアルバムからの「没曲集」なのだが、本人としても愛着があったのか、この発売のために再レコーディングが敢行されている。おそらくアルバムのバランスのために外されたというだけで、曲自体はオリジナルアルバムとして申し分のない出来であるし、テケテケせずにエリック節のギターソロを弾き倒す原曲クラッシャーのThe Venturesのカバーや還暦を越しても20代にしか聞こえないイケボなど通常営業の彼を確認するためにも、聞こう。

 

Forest Swords/Compassion 初

 

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焦燥しきったような不穏な響き、どことなく民族的なコーラスの断片。あまり文章化出来る音楽ではないが、それでも筆を取らせてしまうのはその素晴らしさからであろう。

しかし、人様が口を揃えて褒め称えるアルバムを聴くより、自分のライブラリーから関連ミュージシャンを辿って行き着いた本作のようなアルバムの方が気に入ってしまうという、SNS社会ではさして楽しくない事実に内心複雑である。

 

Gizmodrome/Gizmodrome 初

 

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元ポリスのStewart Copelandが「美味いイタリアンを食う口実に」、仲の良かったイタリア人のキーボード奏者Vittorio Cosmaと例年イタリアでライブを行っていたのだが、どうせならとLevel 42の神業ベーシストMark Kingと元King Crimsonの変態ギタリストAdrian Belewをかき集めてレコーディングをしてしまった、いきあたりばったりなスーパーバンドのデビューアルバム。音楽性もてんでバラバラなため、「プログレッシブパンク」という全力で矛盾したジャンル名が爆誕した。

残念なことにMark Kingのスラップはほとんど抑えられ、スチュの上手くもなく下手でもないボーカルがアルバム全体を占めているため、それぞれのファンが聞きたいものは綺麗に引っこ抜かれている。正直スチュによる「俺様の最強の友達を連れてきたソロアルバム」と思って聞いたほうがいいだろう。

ファンの期待を裏切る一方で、当の本人たちはレコーディングで想像以上に意気投合してしまい、日本を含む世界ツアーが決まったものの、スチュはDave Grohlに憧れてギターボーカルに専念するなどとのたまっているので、客側が見たいものが一つも見れない可能性は非常に高い(すでに公開されてるライブ映像見る限り、そうだった)。だが、なんやかんやで曲そのものは悪くなく、駄作と言い切れないのが悩みどころだ。

 

Gone is Gone/Echolocation 初

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静と動、プログレやストーナー、サウンドスケープ、唸り。Mastodon、QOTSA、At the Drive-Inのバンドメンバーが集まったスーパーバンドであり、それぞれの音楽性がフィードバックされてはいるものの、ボーカルを務めるMastodonの要素が必然的に一番強い。しかし、それぞれの所属するバンドがどれも一つの音楽スタイルにとらわれないバンドであるだけに、ジャンルの不明瞭性がバンドとしての統一感を生むという逆説的現象が生じている。スーパーバンドは概してそれぞれの主張が強すぎてバンドとしては機能不全になったりするが、このバンドに関してはそのようなこともなかった。

 

Kendrick Lamar/DAMN.

 

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ここ数年、今までになくHip-Hop文化とRock文化が邂逅してきたが、ロックを扱う雑誌の2017年アルバムランキングの首位をこのアルバムが総なめしたという事件は、この文化現象の一つの到達点ではないかと思う。ただ、歌詞も分からないままに聞くという姿勢の人が多いロックファンが(この記事の筆者もそうだが)、ライムの内容をチェックすることなく本作を聞くだけでは、おそらく英語圏内での熱狂的な反響を理解するのは難しいだろう。

前作が「黒人だろうがスターになれるんだ」と人々に呼びかける演説であった一方で、今作はスターになった人間の外部からの誘惑、内部での葛藤などを、聖書のモチーフを引用しつつ赤裸々に語る内省的な作品で、サウンドも前作のファンク、ジャズ、R&Bを融合させたバンドスタイルから一変し、オーソドックスなトラップホップに転換している。そういうわけで、歌詞(そしてキリスト教の基本的な知識、発売日などリリースに関わる様々な仕掛け)を読み込まない限り、この作品はステレオタイプのヒップホップのアルバムになってしまうのだ。

自分の貧相なヒップホップ遍歴でも自らを神格化するラッパーはそこそこ見かけられたが、過大妄想として己を神と照らし合わすのではなく、「人類を先導し、その罪を背負ったキリストに、スターダムを登りつめたが多くを一身に引き受けることになった自己を投影する」という図式の斬新さ。これは間違いなく「文学」だ。

 

LCD soundsystem/American Dream 初

 

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The Talking HeadsとP.I.L.の露骨な模倣とJames Murphyの独特なボーカルスタイルによって導かれる再構築。オマージュと独自性とを内包する、非常に王道的な芸術作品であるこの一枚は、ある一点を除いて申し分のない出来である。そう、素人がパワーポイントで5分で作ったようなアルバムジャケットを除いて。

 

LUNA SEA/ LUV

 

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ファンの間では「明るすぎる」、「耽美性と疾走感が弱い」と、かなり「否」に寄った賛否両論の再結成後2枚目となるアルバムだが、ずっと彼らをおいかけてきたわけでもない新参者としては、快哉を叫びたくなる出来の名盤である。

決して曲がダメになった訳ではなく、1曲目こそEDMを生バンドに置き換えた2010年代の最新型のLUNA SEAサウンドを掲げたナンバーだが、それ以降は時代錯誤とも言える昔ながらの彼らならではの歌謡Vロックが続く。それらは過去の名曲群と並べて再生しても違和感がなく、このアルバムで彼らはしれっと今後のアンセムナンバーを量産したように、僕には思える。

 

Mogwai/Every Country's Sun

 

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もしかしたら最高傑作ではないだろうか?

今までのアルバムでは記憶に残らない20分ほどの「空白時間」が存在していたが、今回は一曲一曲がしっかりと自己主張をしており、なおかつアルバム単位でも一つの流れが明確に存在するため、個々としても全体としても非常に親しみやすい。例えるならばアニメのサントラ(あくまでも映像ありの抽象的な曲構成を取りながらも、実写の劇伴よりも曲が明快)のようなアルバムといったところだろうか。Mogwaiならずとも、ポストロックに疎い人間が最初に手を出すのにこのアルバムはお勧めできる。

 

Rex Orange Country/Apricot Princess 初

 

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Jake BuggやKelly Jonesを彷彿とさせる歌声が印象的な、19歳のシンガーソングライターの2ndアルバム。古き良きR&Bやネオアコなどを基調に、ギターをかき鳴らして疾走したり、はたまたラップを披露したり、瞬発的なアイデアを用いて作られたような楽曲が並ぶが、全体を通して余裕溢れる風格があって決して散漫には聞こえない。こういう煽り方はあまり良くないとは思うが、Father John Mistyの新譜を気に入った人なら聞かないという選択肢はない。

 

Ringo Starr/Give More Love 初

 

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実は彼のソロアルバムを聞くのは初めてなのだが、彼の暖かい人間性が伝わってくる作風は、今までずっと彼の音楽を聞いてきたかのような錯覚を与えてくれる。

決して強い印象や感極まる何かを感じる作品ではないのだが、「ビートルズのメンバー」という、世界で最高レベルの肩書きを持ちながらも、ここまで気さくな作風のアルバムを二、三年間隔で出しているというのは、それ自体が一つの奇跡だと思う。

 

Sawano Hiroyuki[nZk]/2V-ALK

 

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今や押しも押されぬアニメ、ドラマ音楽の重要人物となった澤野弘之のこの名義での作品は、荘厳なサントラとはまた一味違い、デジロックとボーカルの化学反応が堪能できる。正直彼はとっくに音楽性を大成させてしまっている感もあり、年を経るごとに作曲家として進化しているかというと、否である。それでも愛聴してしまうのは、その類い稀な作曲能力にある。USロックへの憧れを隠しすらしないその態度は、一周回って潔い。

 

Songhoy Blues/Résistance 初

 

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マリはトンブクトゥ出身のバンド、Songhoy Bluesの2nd。アフリカのバンドであるということだけをアイデンティティーにするわけもなく、ハードロックやファンクなど様々な音楽を吸収して、自らの個性として消化しているのはお見事。Iggy Popが参加。

 

Sparks/Hippopotamus

 

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FFSでのフランツとの共演の記憶も冷めやらぬうちに出された新作は、いつも通りのSparksで、安心する一枚である。結成から半世紀ほど経っても、「正常位は素晴らしい」だとか「僕には何もないけど北欧デザインの家具がある」だとか、考えたら負けな歌と大仰でチープな曲の数々。いつも通りにしているからセンスが衰えないのか、センスが衰えないからいつも通りなのか。鶏が先か卵が先かみたいな話にはなってしまうが、このアルバムを聴いている限り、二人が未来永劫アルバムを発表し続ける姿が容易に出来てしまう。

 

Steven Wilson/To The Bone 初

 

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モダンプログレの代名詞である彼の新作ソロは、プログレ要素が減退し、ポップス路線が増加している。今まで金太郎飴のように同じような曲ばかり作ってきたため、質の高さから賞賛される裏で揶揄も絶えることはなかったが、50歳になってのこの試みは嬉しい誤算である。決してアルバム全体のクオリティーは高くないのだが、むしろ果敢に挑む姿勢を評価したい。 今作でホステスと契約した時は疑問に思ったが、いざ聞けば納得。来日を期待したい。

 

Thundercat/Drunk 初

 

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ずっと話題になっているため、改めて初めて聞いた自分が感想を書くまでもないと思うが、まだ聞いてない人へのアピールをするとしたら、やはり歌詞にあるのではないだろうか。PVともども日本を全力で満喫している「Tokyo」はそこまで意外性はないが、シリアスなR&Bに乗せて「猫でいるのはクールだぜ、ミャーミャーミャー」と泣き真似までしてしまう「A Fan's Mail」から、闇の先の光を見せたいと歌う「Show You The Way」まで、そのふり幅は広い。まさにインターネット、SNSの世代らしいごった煮状態(来日中には自身のルーツとするゲーム音楽のレジェンド、下村陽子との対談を行っている)だが、不思議と統一感があり、しっかり聴けてしまう。サウンドは言うまでもなくサイコー。酔いどれ万歳。

 

U2/Songs of Experience

 

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良い。どれだけBonoが世界に呼びかけようと平和は依然訪れず、それどころかますます悪化の一途をたどり、一方で敬愛していたスター達は次々とこの世を去っていったこの二、三年。その中で彼が見出したのはやはり「愛」であった。といっても今までの啓蒙君主然としていたBonoの与えてきた「愛」とは少し違う。ラブレター、または遺書として書かれた歌詞は個人から個人へ「愛」を語る。

その中でも「道に愛を阻むものは何もない」と力強いタイトルを冠した「Love Is Bigger Than Anything In Its Way」で、かつての自分に「自らの曲の歌詞にするには若すぎた」と語りかける様には思わず涙腺が緩んだ。今まで全てがうまくいったわけでもないし、スタジアムで世界平和を叫び、「偽善者」とBonoを叩く人は多くいる。昔やったことが完璧でなかったを認めた上で、 それでも「お互いが一緒にある(We Can Belong To Each Other)世界を書け」と自分の生き方を肯定する姿は、今までになく一人の人間としてのPaul Hewsonを感じさせ、同時に、スターとしての「Bono」も伺える。

丸くなっても諦めたわけじゃない。彼らの音楽はまだまだ続く。

 

Virgil & Steve Howe/Nexus 初

 

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発売直前に息子のVirgilが急逝したため、追悼盤という体裁になってしまった親子初の共同作品は、父のHoweの味わい深いギターに息子のVirgilがシンセやピアノなどのシンプルな装飾を施すというもので、デモのようなラフなアレンジではあるものの、家族で作品を作る和気藹々とした様子が伝わってくる、温もりのある作品となっている。悲劇の1枚になってしまったが、どのような形であれ、音楽は悲しみを癒すものだということを忘れてはいけない。

 

赤い公園/熱唱サマー

 

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このアルバムの発売前にボーカル佐藤の脱退が発表された。ギターの津野の飛び抜けた才能がこのバンドの核であっただけに、フロントマンでありながら津野の後ろに付いていくという立ち位置はさぞ大変だったと思う。内容は相変わらずで、中盤の印象の弱さもいつも通り(笑)。レコーディング時点では脱退はまだ確定していないのだが、最後の3曲の怒涛の大円団っぽさは、まるで脱退する佐藤を全力で応援しているように聞こえる。まだまだこのバンドは旅の途中だし、バンドを脱退しても人生は続く。赤い公園よ、永遠たれ。

 

アルカラ/KAGEKI

 

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バンド史上初のフルレングスのアルバムなのだが、ミニアルバムを出し続けてきた今までよりも体感時間が短いという、中堅バンドとしての底力を見せつける一枚。轟音鳴り響く中、曲はアウトロに至るものの間髪入れずに次の曲が始まる様は、さながらハードコアのライブを聞いているかのようで、よくぞ胃もたれさせずに最後まで作り上げたとただただ感動するばかり。ギタリストの失踪からの脱退でこのサウンドの立役者が突如抜けてしまい、まさかのバンド最大の危機にあるが、ぐっと持ちこたえてくれ。ボーナストラックの30周年ライブのコントも必聴。

 

池田亮司/music for percussion

 

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突然だが、トライアングルだけで9分の曲を作れと言われたらあなたはどうするだろうか?おそらくは多くの人は困惑し、所在なさげにチリンチリンと鳴らすだけであろう。もしその正答を知りたくば、このアルバムを聞くことである。

 

坂本龍一/async

 

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元々アンビエントにも手を出していたので、今回の音楽性自体に驚きはないが、癌を克服し、映画音楽でも再び国の内外問わず活躍し出した状態で作られたアルバムが、ここまで重苦しいというのは、かなり意外であった。

「タルコフスキーの架空の映画のサントラ」というコンセプトがあるので、そこまでプライベートな作品ではないが、3.11やBowieを始めとする相次ぐスターの死が悲観的な作風に至らしめたと想像するのはそこまで的外れでもないだろう。

ArcaがRemixを担当しているが、それも納得の、かなり前衛的な作品である。Pitchforkが高得点をつけたのもさもありなん、といったところか。

 

細野晴臣/Vu Ja De 初

 

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実はストリーミングサービスだとNeko Boogieが聞けません。のでそれ抜きでレビューします。「自作曲を聞くのが恥ずかしい」ということで収録曲はカバー半分(それもここ数年様々なスタジオで機会をうかがって録音してきたもののコンピレーション)、残りのオリジナル曲はここ数年の寄せ集めと、有り合わせのマテリアルで構成されたアルバム。だが、戦前音楽への強い憧れというコンセプトで一枚目はしっかり統一されているし、二枚目は「エッセイみたいな感じ」という本人の表現も言い得て妙な、「最近久々に大掃除したら良い感じの雑貨とか古着とか見つかったからちょっと並べてみるね」とでもいった感じの、気合は入ってないが、リスナーを唸らせるものがいっぱい収録されている。

昔の録音サウンドの再現など、細かいところに非常に苦心したことが複数のインタビューで語られているが、専門的知識のない人間にも、「デジタルな質感ではないどこか温もりのある音」としてその試みは還元されている。「シンプルにすることほど難しい」とはよく言うが、このアルバムを聞くとその意味がよく分かる。

 

★★★★★

Arca/Arca

Ariel Pink/Dedicated To Bobby Jameson 初

Elder/Reflection of a Floating World 初

Gary Numan/Savage(Songs from a Broken World) 初

Hans Jimmer, Benjamin Wallfisch/Bladerunnner 2049(original motion picture soundtrack)

Kamasi Washington/Harmony of Difference 初

King Crimson/Live in Chicago

Lawrence English/Cruel Optimism 初

Mastodon/Emperor of Sand

Omar Souleyman/To Syria, With Love 初

糸奇はな/四角い世界

神聖かまってちゃん/幼さを入院させて

ハルカトミユキ/溜息の断面図 初

 

Arca/Arca

 

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「エキセントリックなエレクトロサウンドと激キモデザインが特徴的なベネズエラのゲイの鬼才ニューカマー」というイメージでここまで聞いていたが、このアルバムで解禁されたボーカリストとしての彼の才能に戦慄した。触れただけで壊れそうなどこまでも繊細で美しい歌声。James Blakeを思わせるその囁きは、どんな叫び声よりも痛切に心に突き刺さる。歌詞を読むと、「皮を剥いで内側から愛して」みたいな内容で、いわゆる「ヤンデレ」なのだが、ロンドンに移住したことを「ベネズエラでゲイとして生きていくのは難しい」と説明した経緯や、「親が喧嘩していた時の言語=感情表現に適切な言語」という考えからスペイン語で歌っていることなどから察せられるように、彼が背負ってきたものは生半可な苦しみではなく、こういう歌詞になったのは当然の帰結なのだろう。ファッションメンヘラではなく、本当に触れたら壊れてしまうガラスの心を剥き出しにして、我々に真剣に心と心で触れ合うことを求めている。インスタントに作られ、消費されていく現在の音楽シーンでは倒錯した姿勢だが、聞いてる人はちゃんといると、彼には伝えたくなる。

 

Ariel Pink/Dedicated To Bobby Jameson 初

 

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素晴らしい。冒頭の2秒で引き込まれ、それから最後の曲の最後の1秒まで強力なフックとチープなガレージサウンドがぎっしりである。短い尺の中にこれでもかと詰め込まれた親しみやすい旋律と、曖昧模糊として垢抜けない音像は、レコード全盛期に録音されたかのような錯覚を与える。突然の「ラジオスターの悲劇」の引用によって、我々はこれが2017年のアルバムだという事実を思い出すが、それ以外はまるで後世に語り継がれている50年前の名盤を聞いているような心地になる。

実のところ、21世紀以降頻繁に起きているリバイバルブームというものが自分はどうにも好きになれないのだが、それは「ダサさも含めて好きなのにカッコよさだけを抽出されてしまっていて骨抜きになっている」点と「正直昔の本物聞いた方が楽しい」点の2点に集約されるのだが、このアルバムはどこまでもダサく、あまりにも曲として出来が良すぎるので、「じゃあ元ネタ聞きゃいいじゃん」なんて夢にも思わないのだ。完敗である。

 

Elder/Reflections of a Floating World 初

 

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Mastodonがプログレとキャッチーな歌ものとを融合させた集大成的作品を発表した一方で、もし彼らがプログレ路線の「Crack The Sky」を更に突き進めたような作品を作ったら、というwhat ifを実現させたのがこの作品である。

ストーナーのリフとメロトロンなどを多用した浮遊感あるサウンドの融合、6曲60分超というボリューム、かといって飽きることのない構成。泥臭いのに整合が取れている、不気味な作品である。

 

Gary Numan/Savage(Songs from a Broken World) 初

 

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ジャケットやフォントを見れば分かるように、コンセプトは中東風のメロディー+インダストリアルサウンド。脱力気味の彼の歌声は、NINやMinistryのようなマッチョなインダストリアルサウンドにはミスマッチだが、このように変則的な要素を絡めることで違和感なく聞かせている。「捨て曲なし」という称号を久々に使いたくなる、非常に丁寧に作られている印象を受けるアルバムである。

調べたところ、セールスの落ち込み、不妊などで家族ともども沈み込んでいたところからの愛娘の誕生、メディアからの再注目と朗報続きの中で作られた復活作とのことだ。その愛娘をコーラスに参加させているのも微笑ましいが、案外身内のノリ以上の声の持ち主で、将来が楽しみ。

 

Hans Jimmer, Benjamin Wallfisch/Bladerunnner 2049(original motion picture soundtrack)

 

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平沢進をして「曲として体をなしていない」と言わしめた、ドローンミュージックが面目躍如である本サントラは、前作のカラーを決定付けたVangelisという亡霊(死んでません)との戦いの結末であり、勝利と敗北が入り混じる苦心の快作だと思う。

「Mesa」の温もりのあるメインテーマは、結局彼らが前作以上に斬新なものを提示できなかったことを示す敗北宣言でもあるが、その一方で爆音が吹き荒れる「Flight to LAPD」に代表されるノイズ/ドローン系統の楽曲は、温かみを徹底的に排除し、2019年より更に悪化した2049年の地球世界の終末観と退廃感を音として表現することで、全くVangelisに追従するだけでないということを示唆している。

「前作と違う正統な続編」という一見矛盾しているかのようなコンセプトは、映画だけでなく音楽でも貫徹された。

 

Kamasi Washington/Harmony of Difference 初

 

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静かに、力強く、ゆっくりと立ち上る「Desire」、一転して生きる喜びを全身で表現する「Humility」、穏やかに、それでも歩み続けることをやめない「Knowledge」、シックにファンクをキメる「Perspective」、南国の陽気さを表現する「Integrity」。そして、全てを総括する「The Truth」。

生きていることを30分で表現するこのエネルギーはどこから来ているのだろう。思わず泣きそうになるほどのポジティブなパワー。もし逃げ場がなくなってしまったら、ここに帰ろう。

 

King Crimson/Live in Chicago

 

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間違いなく2017年、果ては21世紀を代表する傑作ライブ盤。例えると「シン・ゴジラ」の熱戦ビームによる東京破壊シーンのカタルシスが延々と続くんです。やばいでしょ。

公式海賊版と言いながら、ハードカバーの本に似た豪華な装丁で、そのブックレットにはRobert Frippの興奮冷めやらぬといったライナーノーツが掲載されている。去年もライブ盤出したばっかりだったが、今のクリムゾンは最強だから出す意義があるという弁明をしており、それもこの音源を聴いたら納得である。

前回の公式海賊版のトロント公演とは演目が半分近く入れ替わり、メンバーもトロントの翌年に一時離脱したBill Rieflinが復帰後ドラムからキーボードに変わり、その間代理を務めたJeremy Staceyがドラムとして続投し、過去最大の8人の大所帯バンドとなっているのだが、そのことによってキーボードがある「Islands」のような曲ができ...ってこの曲のピアノ弾いてるのJeremyじゃんww

とまあ、ボケはおいといて、8人になったことで「Circus」や「Fallen Angel」など、今までよりメロディアスな曲が多く演奏できるようになり、一方で「The Lizard Suite」のドラム隊による暴力的な音の嵐など、トロント公演の音源でようやく全貌が明らかになったトリプルドラムの破壊力も健在であり、このライブ盤は、彼らが他のオールタイムベストを演奏する老人バンドとは全く違う次元にいること、そして、他にまたとない「プログレッシブ」なバンドであることを示してくれる実況記録なのである。

 

Lawrence English/Cruel Optimism 初

 

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冒頭一秒で恋に落ちた。

いきなり広がる荒涼とした幾層ものノイズは、砂漠とも海ともつかない、この世界の果ての更にその向こう側にリスナーを放り込む。

もはや持続不能である「良き生活」への幻想を人々は抱き続けるという理論を提唱した書名から取ったアルバム名、「音楽は政治的である」という本人の弁などから、非常にシニカルな作品であることが伺えるが、言葉を介さずにメッセージを表現しているのは、彼が芸術に真摯な姿勢を持っていることの証左だろう。

 

Mastodon/Emperor of Sand

 

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間違いなく2017年のアルバムで一番聞いたものの一つ。リードトラック「Show Yourself」のあまりにもキャッチーなサウンドにファンの間では動揺が広がったが、蓋を開けると何のその、今までのMastodonの集大成と言うべき最高傑作が出来上がっていた。

プログレに振り切れた「Crack The Sky」のプロデューサーを再起用し、再びコンセプトアルバムを作り出したのだが、前回のように4人編成が崩れるほどに鍵盤は使われておらず、また、長尺な曲が並んでリスナーを怯ませることはない。

毎度のように新譜が絶賛されるバンドではあるが、ここまで極められてしまうと、先がどうなるのか、正直全然見えてこない。ただ、「Gone Is Gone」や「Legend of the Seagullmen」など、他のプロジェクトバンドでも積極的に創作活動を行っているのを見る限り、スランプとは無縁の状態であり、このバンドがいかにタフかがうかがい知れよう。

 

Omar Souleyman/To Syria, With Love 初

 

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Four Tetによって西洋世界に紹介されたシリアンテクノの重鎮の最新作は、Major Laserなどを擁するレーベルMad Decentからのリリースで、これまでよりも更にパーティーサウンドに特化した内容になっている。

今まで欧米では、「周辺世界」の音楽家の演奏を西洋人が「発掘」して、西洋の音楽理論に基づいたシンセの伴奏をオーヴァーダビングして売り込む、という手法で、本来の形とは似ても似つかぬグロテスクな民族音楽が作られてきたが、このパリピアルバムに関しては全く趣が違う。無論、作ってる側が主体的にこの音作りにしているという要因が一番大きいのだが、更には元々彼のスタイルが「ダブケ」という結婚式で披露するパーティーミュージックであるということと、その音楽の特徴として長尺なフレーズがあり、それがEDMサウンドと融合するとトランス状態に導く起爆剤となるということ、の2つの点が、民族音楽の西洋アレンジに肯定的な意味合いを生んでいる。

タイトルは内戦で国土が焦土と化した祖国を思う彼の悲痛な思いを表明しているが、中身はアゲアゲのEDMなので、みんな踊ろう、ハイになろう。

 

糸奇はな/四角い世界

 

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昨年、同人即売会M3で発売後、公式の通販限定で発売したこのミニEP(公式では両A面シングル扱い)には、表題曲と「忘却舞踏」の歌もの2曲に、「メロトロンサウンド」と題された4曲の計6曲が収録されており、「あのストリングスの音」こそ鳴らないものの、メロトロンフェチにはご褒美でしかない至福の作品である。シングルでこの充実っぷりなら、アルバムが出た日には帰ってこれない気がして仕方がない。

 

神聖かまってちゃん/幼さを入院させて

 

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21世紀のネットメンヘラバンドだったバンド神聖かまってちゃんだが、当初はいじめられっ子であったことやその言動が取り上げられ、音楽性に関して語られるのは二の次のようなバンドだったが、間違いなくの子は天才であり、その証拠に10年経ってもこんな傑作を届けてくれているのだ。

今となってはの子の代名詞である、ボイスチェンジャーのチープさにも、独特の中毒性があり、バッドトリップした状態で賛美歌を聞かされるような、ドリームポップとはまた違うタイプの白昼夢を見せてくれるバンドは、神聖かまってちゃん以外には存在しない。

 

ハルカトミユキ/溜息の断面図 初

 

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2015年には毎月新曲を発表し、2016年のアルバムから1年と経たずに発表された今作に向けては50曲を用意するという多作家の2人だが、その曲のクオリティーは非常に高く、剃刀のような鋭い感性は昔よりは少し丸くはなっているが、最高の楽曲とこの上ない毒の利いた歌詞がズバズバとリスナーの心を切り裂くのは、快感ですらある。

アルバムの最後を希望で締めくくっているように、毒を吐くのは世界を信じたいからであり、そのひたむきな姿勢は、リスナーにも真摯に彼女たちの音楽に向き合うことを迫ってくる。こんなにストイックな人の音楽を同じ時代に聞くことが出来る幸せを噛みしめたい。

 

 

 

 

 

以上で、アルバムに関するレビューはひとまず終わりである。

今後、2017年リリースのアルバムにどハマりしてもこの記事に追加することはないし、それはまた場所を改めて筆をとることになると思う。

 

さて、アルバムに関してグダを巻く時間は終わったが、シングルに関しては1つだけ。

 

銀杏BOYZの三部作が本当に良かった。

峯田を残して全員脱退した後再びバンドを建て直し、彼が昨年3ヶ月連続でリリースしたシングルは、どれもキラキラと輝いていて、これからが正念場であるとは思えないぐらいに肩から力が抜けている、素晴らしい楽曲揃いであった。

無論、それはかつてのように情念をそのまま音に閉じ込めたようなバンドスタイルを取らないということを意味しているが、今までのように命を削って鳴らしている40歳を過ぎた彼らを見るというのは、正直なところ、こちらの心が持たない。そういう意味では、この垢抜けたサウンドは、福音である。

 

 

 

 

 

今度こそ、終わりです。最後に気に入った楽曲で組んだプレイリストでも載せておきます。